第191話 魂の同期
宇宙の闇の奥。
閉ざされていた巨大な門。
九条全の手が添えられる。
昏華すきの指が触れる。
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カチ……
錆びついた鍵が回る。
鼓動が止まる。
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ギィ……
扉がわずかに開く。
闇ではない。
光でもない。
理解不能の“深さ”。
その奥から、
低く、重い鼓動が響く。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
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全が隣に立つ。
何も言わない。
ただ、共に立つ。
現実
会長が椅子から立ち上がる。
目を見開く。
呼吸が止まる。
「……門が……」
横で晴谷が静かに微笑む。
「ついに来ましたね」
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雪平の手が震える。
「……嘘でしょ……」
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統が息を呑む。
白黒の世界の奥で、
確かに何かが動いた。
「……開いた」
声が震える。
だが目は輝いている。
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零の指が止まる。
景品ではない。
すきと全を見る。
(到達ではない)
(だが……)
(門が開いた)
胸の奥がわずかに高鳴る。
恐怖にも似た未知。
そして、
抗えない興奮。
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観客席
何が起きたか分からない。
だが、
違う。
空気が違う。
「……なんか、今」
「寒気しなかったか?」
「音、したよな?」
ざわめきが広がる。
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すきと全。
二人は理解していない。
だが、
互いの存在が近すぎる。
境界が曖昧になる。
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(そこ、強く押せ)
全の意志。
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(右アーム、投げる)
すきの感覚。
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声ではない。
思考でもない。
境界の消失。
“ 魂の同期”
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零が低く呟く。
「……会話をしていない」
統が小さく笑う。
「でも、通じてる」
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操作
大胆。
正確。
迷いゼロ。
補完。
同調。
一つの意思。
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アームが降りる。
触れる。
滑る。
跳ねる。
傾く。
落ちる。
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ゴトン。
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誰も歓声を上げない。
誰も動かない。
ただ、
理解できない静寂が支配する。
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境地の内側
門の隙間が、
ゆっくり広がる。
奥は見えない。
深さだけが存在する。
ドクン。
ドクン。
鼓動が強くなる。
すきの足が前へ出る。
自分の意思ではない。
引かれている。
導かれている。
抗えない。
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「……昏華」
全の声が遠く聞こえる。
止める声ではない。
見送る声でもない。
ただ、そこにある声。
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すきは振り返らない。
一歩。
境界を越える。
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光でも闇でもない空間が広がる。
音が消える。
重力が消える。
時間がほどける。
世界の構造が変わる。
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その瞬間。
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会長の瞳が震える。
「……入った」
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晴谷が静かに目を閉じる。
「行ってこい」
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統の胸が高鳴る。
「うわ……」
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零の鼓動が強く打つ。
(神域……)
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門の前
九条全は、
その場に立ち尽くす。
ただ、
信じられないほど静かな顔で、
門の向こうを見つめていた。




