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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
192/205

第190話 理を解する者

第一ラウンド敗北。


後がない。


会場の空気が重い。


次を落とせば――終わる。



零の一手。


迷いがない。


爪が触れた瞬間、

箱の内部振動が音となって脳内に広がる。


配置。

重心。

滑り。


すべてが旋律として流れる。


まるで色を聴くように。


「……右、浅く」


神代が頷く。


境地が展開される。


白と黒の濃淡の中、

摩擦の弱い面が浮かび上がる。


内部構造が透ける。


まるで音を見るように。


アームが降りる。


滑らせる。


支点を作る。


箱が大きく前進する。


観客席がどよめく。


「また動いたぞ…」

「完璧すぎる…」

「Sランクの連携えぐい…」



全の表情が強張る。


(やべぇ……)


(差が開いてる)



すきの未来選択が走る。


分岐。


可能性。


最短手。


勝利のルート。


だが――


零と統の動きが、


未来そのものを塗り潰していく。


(見えない……)


未来が霞む。


ぼやける。


消えていく。


焦りが胸を締め付ける。



(見なきゃ)


(もっと先を)


(未来を)


(もっと――)


意識が奥へ引き込まれる。



境地の奥


闇。


宇宙の静寂。


星の瞬き。


その奥。


巨大な存在。


終わりの見えない輪郭。


圧倒的な質量。


——門。


ドクン。


ドクン。


鼓動が響く。


(ここを開ければ)


(何か変えられる)


(きっと――)


すきは両手で門を押す。


動かない。


押す。


動かない。


押す。


動かない。


「開いて……!」


押す。


押す。


押す。


開かない。


開かない。


開かない。


未来は見えない。


手も打てない。


零と統が迫る。


意識が揺らぐ。


境地の中で、

すきはただ漂っていた。



声が聞こえる。


遠く。


かすかに。


「おい……」


「き…て……のか……」


途切れる。


「おい……昏華……」


さらに近づく。


「おいババア!!!」



その瞬間、

意識が現実へ引き戻された。



「……ババア?」


すきの額に青筋が浮かぶ。


久しぶりの、

本気でキレた顔。


全が息を荒くする。


「扉とか境地とか未来とかよ!」


観客席が静まり返る。


「わかんねぇけどさ!」


歯を食いしばる。


「今を必死になれねぇやつが」


拳を握る。


「未来ばっか見ようとしてんじゃねぇよ!!」


すきの胸が、


真正面から殴られたように揺れた。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


全は手を差し出す。


「一緒に考えろ」


「パートナーだろ?」



すきの目が揺れる。


涙が滲む。


「……ごめん」


「……ありがとう」


その手に、


自分の手を重ねた。


巨大な門の前。

宇宙の静寂。

すら飲み込む闇。


終わりの見えない輪郭。

触れることすら拒む圧倒的質量。



ドクン。


ドクン。


ドクン。


鼓動が響く。



そのとき。


門の中心。


闇の奥で――


小さな光が灯った。



金属が擦れる音。


カチ……


錆びついた歯車が、


何百年も動いていなかったかのように


軋みながら回り始める。



カチ……


カチ……



張り詰めていた封印が、

静かにほどけていく。


鎖が震える。


空間そのものが息を吐く。



ドクン。


鼓動が強くなる。



すきは気づく。


これは門の音じゃない。


自分の鼓動。


全の鼓動。


世界の鼓動。



そして――


ガコン。


鍵が外れる音。



その瞬間、

宇宙が息を吸った。



ぎぃぃぃぃ……


巨大な門が、


ゆっくりと動き始める。



閉ざされていた闇の奥から、


光が滲む。



境界が、

開く。



すきの瞳に光が戻る。


ドクン。


鼓動が世界と重なる。



全の手の温もり。


確かな重み。



未来は見えない。


でも――


今が、

はっきり見える。


すきの瞳に光が戻る。


ドクン。


鼓動が重く響く。


第二ラウンド、


まだ終わっていない。

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