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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
188/205

第186話 出し切った


歓声が、ゆっくりと引いていく。


さっきまで会場を震わせていた熱が、

嘘のように静まり返っていた。


台の前。


雪平とすきが向かい合う。


しばらく言葉はなかった。


先に口を開いたのは雪平だった。


「……すごかった」


すきは小さく首を振る。


「雪平さんこそ」


一瞬、視線が交差する。


友達。

仲間。

そして——


よきライバル。


二人は自然に手を差し出した。


握手。


強くもなく、弱くもなく。


ただ、確かめるように。


「楽しかった」


雪平が微笑む。


すきも頷いた。


「はい」



すきの内側


鼓動はまだ速い。


ドクン。


ドクン。


宇宙の奥で見たもの。


巨大な存在。


触れることすら許さない闇。


——門。


(あれは……)


(境地の先)


そしてもう一つ。


雪平の動き。


理屈ではない。


生命そのものの動き。


熊の速さ。

蛇の支配。

鳥の精度。


(あれが……雪平さんの才能)


すきは小さく息を吐く。


(“野生”……)



雪平の内側


胸の奥が静かだった。


負けた。


だが——


悔しさとは違う。


体の奥まで使い切った感覚。


初めて、自分に100%使った。


(これが……私の全部)


唇がわずかに緩む。


満足していた。



「おつかれさま!」


全が真っ先に駆け寄る。


「いい試合だった!」


売田も続く。


「おいおいおい、どっちも人間じゃねぇだろ今の!」


ジョーは静かに頷く。


「……誇らしい」


羽澄が両手を広げる。


「二人とも最高に映えてたよ♡」


雪平が笑う。


すきも、少しだけ笑った。



会長室


会長は腕を組んだまま動かない。


「……見たか」


隣の晴谷が穏やかに頷く。


「ええ」


「門に気付き始めている」


一拍。


晴谷は静かに言う。


「おそらく——」


「一人じゃない」


会長の視線がわずかに揺れる。


「……どういう意味だ」


「門は、一人では開かない」


会場を見下ろす。


仲間。

応援。

支え合う存在。


晴谷は続ける。


「境地は個の到達点」


「でも、その先は

共有する場所なのかもしれません」


会長は沈黙した。


その可能性は、

何度も思考したことがあった。


だが、認めれば——


自分の歩んできた道の定義が変わる。


長い沈黙のあと、


会長は静かに口を開いた。


「……よかろう」


晴谷が目を細める。


「決勝戦の形式を変更する」



会場アナウンス


「決勝戦の形式変更を発表します」


ざわめき。


「最終戦は——」


一拍。


「2対2のタッグマッチとする」


どよめきが広がる。


「決勝進出者」


「一条零」


「昏華すき」


会場の視線が二人へ集まる。


「両名は、他のプロライセンス保持者の中から」


「任意のパートナーを一名選出すること」


静寂。


空気が張り詰める。



零は無言で立つ。


すきは静かに息を吸う。


新しい戦いの形。


個ではなく、

共に開く扉。


遠くで、

まだ微かに鼓動が響いている。


ドクン。


ドクン。


門は、


待っている。


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