第185話 野生
二手
雪平の目が開く。
空気が変わる。
すきがわずかに眉を動かす。
零が目を細める。
神代が小さく笑う。
「……わお、ジャングルが見えましたね」
観客席がざわめく。
雪平のアームが動く。
速い。
鋭い。
熊が川で魚を掬い上げるような動き。
景品が弾かれ、
大きく動いた。
「なっ!?」
「今の動き…!」
会長が思わず身を乗り出す。
「設定以上に動いている…?」
⸻
三手
雪平は迷わない。
アームが斜めに降りる。
ゆっくり。
絡みつくように。
アナコンダが獲物を包むように、
箱の角度が変わる。
観客が息を呑む。
⸻
すき四手
ドクン。
心臓の音が響いた。
ドクン。
宇宙が揺れる。
ドクン。
星が震える。
ドクン。
空間そのものが鼓動している。
すきは振り返る。
宇宙の彼方。
闇の奥。
そこにあった。
あまりにも巨大な存在。
終わりが見えない輪郭。
光を拒む闇。
触れることすら許さない圧倒的質量。
——門。
ドクン。
鼓動はそこから響いていた。
すきの未来選択が走る。
幾多の未来が重なり混ざり合う
すると、1つの道となった。
すきが1歩進むたび未来が確定する。
“ 確定未来”
(……何?)
ドクン。
鼓動が速くなる。
雪平も4手目のアームが降りる。
かもめが水面から餌をさらうように、
静かに。
正確に。
景品をつまみ上げる。
同時。
すきも最適解の手を放つ。
二つの景品が
同時に落ちる。
ゴトン。
ゴトン。
会場が静まり返る。
「同時獲得!!」
実況が叫ぶ。
「手数が同じ場合、
先に獲得口へ到達した方の勝利となります!」
モニターにスロー映像。
落下。
接触。
到達。
わずか――
ほんのわずか。
先に到達したのは。
「……勝者」
一拍。
「昏華すき!!」
会場が爆発した。
⸻
雪平は小さく息を吐く。
すきは静かに目を閉じる。
零が低く呟く。
「……バフを分けるだけの者かと思っていたが」
神代が楽しそうに笑う。
「いやぁ、最高でしたね」
すきの心臓が速く打つ。
ドクン。
ドクン。




