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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
185/205

第183話 恨みっこなし

会場に残るざわめきは、

まだ静まりきっていなかった。


観客の興奮は収まらず、

誰もが今の試合の余韻に包まれている。


競技場の上空

会長室。


会長がゆっくりと口を開いた。


「一条零、神代統。」


一拍。


「勝利を分けたのは――

 勝ちへの執念……だな。」



その傍らで、

晴谷蓮二は穏やかな表情で視線を送っていた。


敗れた統のもとへ駆け寄る仲間たち。


笑い声。

励まし。

肩を叩く音。


会長が小さく言う。


「……会ってやらないのか?」


晴谷は軽く笑った。


「いやぁ」


視線を統へ向けたまま答える。


「もう、統には仲間がたくさんいますから」


その声は、どこか誇らしげだった。



一方。


一条零は、静かに立っていた。


歓声も、ざわめきも、

遠くの音のように聞こえる。


胸の奥で――


ドクン。


ドクン。


鼓動が強く鳴っていた。


(……あと少し)


(あと少しで)


(届きそうだ)


境地の奥。


あの巨大な門。


その先へ。


「零様!素晴らしい勝利でげす!」


駆け寄る下衆田の声すら、

今の零には届いていなかった。


視線はただ、

見えない何かの先を見据えている。



アナウンスが響く。


「――準決勝第二試合を行います」


会場の空気が、再び張り詰めた。


「雪平杏 対 昏華すき」


観客席から歓声が上がる。


両者が台の前へ歩み出た。



観客席。


「どっち応援する?」


羽澄が振り返る。


全、売田、ジョーを見る。


ジョーは少し考えてから言った。


「……どちらも、仲間だから」


売田は腕を組む。


「相棒には色々助けられたしなぁ」


一拍。


「雪平のねぇちゃんにはバフで世話になってるし……」


全は小さく笑う。


「いい試合になるよう、両方応援しよう」


「恨みっこなしだ」


「……だな」


売田も頷く。


羽澄は微笑んだ。


「うん、そうだね」


「私も、どっちも好きだし♡」


そして、ちらりと振り返る。


前の試合で敗れた統。


仲間たちに囲まれている。


(……駆け寄れなかったな)


少しだけ寂しそうな表情。


けれど、


すぐに柔らかな笑みに戻った。



台の前。


雪平が微笑む。


「すき、初対戦だね」


「よろしくね」


すきは静かに頷いた。


「全力でお願いします」


互いに一礼。


静寂。


アームの待機音が小さく響く。


アナウンスが告げる。


「――試合開始」


空気が、張り詰めた。

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