第177話 光と闇
競技エリア上方。
ガラス張りの会長席。
マイクを手にした
月刊クレーンゲーム記者 聞見描が
会長へ向き直る。
「会長、いよいよ準決勝です」
「今回残った四名、
まさに現代プロシーンの象徴とも言える顔ぶれですが――」
「特に第一試合、
一条零選手と神代統選手について、
お話を伺えますか?」
会長は静かに盤面を見下ろす。
「一条零――二期生の頂点」
少し間を置く。
「技術、精度、再現性。
そのすべてを極限まで研ぎ澄ました男だ」
「彼は勝つために無駄を排除する。
勝利以外の価値を、必要としない」
「ゆえに、強い」
聞見が頷く。
「実力主義の象徴、ということですね」
会長は小さく肯いた。
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「対して、神代統――三期生の頂点」
会長の目がわずかに柔らぐ。
「彼は勝利のために戦っているのではない」
「楽しむために戦っている」
「そしてその楽しさが、
周囲の人間を巻き込み、
場そのものを変える」
聞見が静かに言う。
「競技空間そのものを変える存在……」
「そうだ」
「彼は、光のような男だ」
会長は続ける。
「零が“孤高の完成”なら、
統は“共有される才能”」
「対照的でありながら、
どちらも頂点に立つにふさわしい」
聞見は息をついた。
「まさに現代プロの二極ですね」
⸻
準決勝特別ルール
聞見がモニターを見上げる。
「そして本準決勝から、
使用される台が変更されると伺いました」
会長が頷く。
「準決勝は特別仕様台――
難易度レベル5」
観客席がざわめく。
モニターに仕様が映し出される。
アーム出力:不安定制御
橋幅:極狭設定
景品箱:内部重心可変構造
振動反応:ランダム増幅
「プレイヤーの再現性を崩し、
判断力と適応力を試す設定だ」
聞見が続ける。
「決勝ではさらに?」
「難易度レベル10」
会場にどよめきが広がる。
「競技者の限界を試す領域だ」
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試合開始直前
競技台の前。
神代統が軽く肩を回しながら笑う。
「いやぁ、一条さん」
「お手柔らかにお願いしますね」
零は視線を盤面から離さない。
「お前相手に手を抜くほど、
自惚れてはいない」
統は嬉しそうに笑う。
「はは、さすが」
静寂。
観客のざわめきが遠のく。
難易度レベル5の台が、
静かに起動音を響かせる。
カチ、カチ、と内部機構が調整される。
景品箱の中で、
重心がわずかに移動する。
誰もが理解する。
ここから先は――
別の領域。
⸻
アナウンスが響く。
「準決勝 第一試合――」
「一条零」
「対」
「神代統」




