第175話 エンターテイナー
電光掲示板に、次の対戦カードが表示される。
ざわめきが、一瞬止まり——
次の瞬間、爆発した。
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第四ラウンド 対戦カード
Aランク 売田 転
対
Sランク 一条 零
Aランク 昏華すき
対
Bランク 吉永 燈
Sランク 雪平 杏
対
Bランク 志水 陽斗
Sランク 神代 統
対
Bランク 田中 真奈
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会場が揺れる。
「うおおおおお!!」
「きた!!」
「零 vs 売田!?」
「番狂わせあるぞ!!」
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九条サイド
「……あっ、転売のおっさん死んだな」
全が真顔で言う。
ジョーは両手を広げる。
「オー、マイ、ゴッド……」
バズ子は頬に手を当てて笑う。
「CからB、BからA、AからS。
もう、売田さんわかってるぅ〜♡」
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当の本人
売田は顔面蒼白だった。
そして——
雪平ににじり寄る。
「……バフ子」
「バフ子……」
「バフ子ぉ……」
ゾンビのように迫る。
雪平の眉がぴくりと動く。
「……誰がバフ子ですか」
「無理ですよ?」
「私もここから先、余裕ありません」
「そんなぁぁぁぁぁ!!」
売田、膝から崩れ落ちる。
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すきは冷たい視線を向けた。
まるでゴミを見る目だった。
売田が顔を上げる。
「相棒!
そんな目で見るな!!」
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沈黙。
そして突然、売田が立ち上がる。
拳を握る。
「……やってやる」
「やってやるよ!!」
会場の視線が集まる。
「客が見たいのはな!!」
「本命が勝つ試合じゃねぇんだよ!!」
「大穴が勝ってこその
エンターテインメントだろうが!!」
観客席を指差す。
「そうだろ!!
みんな!!」
一瞬の静寂。
次の瞬間——
敗退したプロたちが拳を突き上げた。
「……て」
「て〜んばいっ!」
「て〜んばいっ!!」
「て〜んばいっ!!」
会場全体に広がるコール。
今日一番の盛り上がり。
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零は静かにそれを見ていた。
そして、呆れたように息を吐く。
「……くだらん」
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ジョーが売田の肩を叩く。
「おれと孫の仇、取れ」
全も拳を軽くぶつける。
「派手にやれよ」
羽澄が笑う。
「映える試合、期待してる♡」
すきは小さく言った。
「……負けるな」
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実況の声が響く。
「漢・売田転!!」
「一世一代の大勝負です!!」
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熱狂の渦の中、
売田は静かに零を見据えた。
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第四ラウンド
最大の注目カードが、始まろうとしていた。




