第174話 応援するよ
会場のざわめきは、すぐには収まらなかった。
圧倒ではない。
だが——
完全に支配された試合だった。
零は台から視線を外さず、静かに立ち去ろうとする。
その横に並んだのは神代統だった。
「……またやりましたね。」
零は答えない。
統は軽く肩をすくめる。
「相手の心を折りたい時にやるやつ」
「同じ手をなぞって、逃げ道を消していく」
一拍。
「性格、悪いすねぇ」
零は足を止めない。
「勝負だ」
短く、それだけ。
統は小さく笑った。
「うん、知ってます」
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九条サイド
すきの目には、怒りが宿っていた。
「……見下したプレイ」
「許せない」
羽澄が全の肩に手を置く。
「全くん、お疲れ♡
よかったよ」
ジョーは静かに言った。
「孫、頑張った」
売田が腕を組む。
「Dランク最後の星が散ったか……」
花形は、堪えきれず涙を流していた。
「先輩ぃ……」
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全は、軽く肩を回した。
「……悪い。力不足だ」
少し笑う。
「でけぇこと言って、結局負けちまった」
視線を上げる。
「おっさんと、昏華。
雪平のねぇちゃん」
「残ってるやつ、応援するよ」
言葉は軽い。
だが。
唇を強く噛みしめていた。
悔しさを、
必死に押し殺していた。
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第三ラウンド 第三試合
Sランク 雪平 杏
対
Bランク 愛川 望
——結果。
勝者 雪平 杏
揺るがない強さ。
格の違いを示すには、十分だった。
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その後も試合は進み、
勝者と敗者が静かに分かれていく。
歓声。
ため息。
静かな拍手。
そして——
電光掲示板に、
残存人数が表示された。
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■第三ラウンド終了時点
残り8名
Sランク 3名
Aランク 2名
Bランク 3名
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空気が変わる。
ここから先は、
実力だけでは届かない領域。
神域へと続く戦いは、
次の段階へ進もうとしていた。




