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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
174/205

第172話 扉無き者


アナウンスが会場に響く。


「第三ラウンド、続いての試合——」


一拍の静寂。


「Dランク

 九条 全」


ざわ…


「対するは——」


「Sランク

 一条 零」


どよめきが走った。


「おい、あいつだろ」

「S倒すって言ってたやつ」

「相手一条かよ…」

「終わったな」

「死んだろ…」


会場の空気は、圧倒的に零優勢。


それでも——


全は、逃げなかった。



全の応援席


すきが腕を組み、軽く笑う。


「いいとこ見せてよ」


羽澄が指先でハートを作る。


「全くん、ちょっとスマイル足りないかなぁ♡」


ジョーは何も言わない。

ただ静かに手を組み、祈る仕草。


花形は身を乗り出した。


「先輩、負けないでください!

 Dランク全員、先輩の味方ですから!」


売田が前のめりになる。


「お前よぉ、Sに勝ったら年収2000万で——

 おい、お?

 ウハウハだぞ? お?」


「今それ言う!?」

羽澄が吹き出す。


笑いが起きる。


その声に、全の肩の力が少し抜けた。


深く息を吐く。


(……大丈夫だ)



零の応援席


下衆田が拳を握る。


「零様!

 格の違いを見せつけてくださいでげす!」


神代統は腕を組み、穏やかに笑う。


「番狂わせは……ないですかね?

 ふふ」


零は応えない。


ただ一言。


「……ふん」


そして、静かに台へ向かって歩き出す。


その背中に、無駄は一切ない。



対峙


片や——

扉無きDランク。


片や——

境地に至りしSランク。


静寂。


張り詰めた空気。


誰もが理解していた。


これは——


圧倒的格差の試合。


だが同時に、


歴史的な下克上の可能性。



アナウンスが響く。


「それでは——」


「試合、開始」

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