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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
170/205

第168話 光栄

歓声の余韻が、

まだ会場に残っている。


売田の勝利。

Aランク昇格。


下克上の熱気は、

観客の体温を上げたままだった。


だが——


モニターに次の対戦が映し出された瞬間、


空気が変わる。



【次試合】


Bランク

羽澄 京子


VS


Sランク

神代 統



ざわめきが広がる。


「統だ……」

「マジか」

「Sランクの中でも一番人気だろ」


「対するは……」

「バズ子!」


「これは盛り上がるぞ……」



観客席の空気は、

一条零の試合とは違っていた。


張り詰めた静けさではない。


期待。


高揚。


楽しみ。


そんな熱。



「おー、来た来た」


神代統は、

軽く肩を回しながら笑っていた。


まるで緊張感がない。


周囲のプロたちにも、

スタッフにも、

観客にも、


同じ笑顔を向ける。


「いいねぇ、この空気」


「試合って感じする」


通りすがりのDランク選手にまで声をかける。


「昨日のプレイよかったよ」


その選手は目を丸くした。


「え…覚えてるんですか?」


「そりゃ覚えてるよ」


統は笑う。


「みんな、同じ舞台に立ってる仲間だろ?」




控え席。


羽澄は、

鏡の前で髪を整えていた。


指先が止まる。


遠くから聞こえる声。


「統ー!」

「頑張れー!」


歓声の量が、

違う。


その瞬間。


昔の声がよぎる。


——地味子。


——目立たない。


——いてもいなくても同じ。


羽澄は、

小さく笑った。


「……あの頃の私が見たら」


口元が上がる。


「腰抜かすわね♡」



すきが近づく。


「……緊張、してますか?」


「してるわよ♡」


即答。


「だって相手、

 統くんだもの」


一拍。


「でもね」


バズ子は振り返る。


「こういう舞台のために、

 ここまで来たのよ」



少し離れた場所。


統が軽く手を振る。


「羽澄さん!」


「今日、

 めちゃ楽しみにしてたんだ」


羽澄は目を細める。


「光栄ね♡」


統は笑う。


「全力で来てよ」


「俺も全力で行くから」



観客席の熱が高まる。


期待と歓声が渦巻く。


実況が声を張り上げる。


「さあ次は!!」


「魅せるプレイの羽澄京子!」


「そして!!」


「楽しむ天才、神代統!!」



羽澄は、

台の前に立つ。


統も、

向かいに立つ。


統は笑っている。


羽澄も、

笑っていた。



歓声の質が違う。


恐れではなく、


期待。


緊張ではなく、


祝祭。



試合開始のブザーが鳴る。


次に会場を沸かせるのは——


どちらだ

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