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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
169/205

第167話 極転売回し

売田の操作


アームが降りる。


右アームが箱の側面を撫でるように

立ち上がる


箱は一瞬、

静止したように見えた。


“ 極転売回し”


回転。


滑り。



重力に導かれるように、


落ちる。


ゴトン。


静かな音。


だが、

次の瞬間——


「落ちたあああああ!!」


実況の絶叫が会場を揺らした。


「売田選手!!

 極転売回し成功ォ!!」


「Aランク金剛良樹を相手に、

 完璧な一手!!」


観客席が爆発する。


「うおおおお!!」

「マジかよ!!」

「今の見たか!?」


金剛は静かに盤面を見つめていた。


そしてゆっくり息を吐く。


「……見事だ」


その一言に、

悔しさも、言い訳もなかった。


ただ、

認めていた。



売田は——


動かなかった。


ボタンから手を離したまま、

立ち尽くしている。


歓声も、

実況も、

遠くに聞こえる。


(……)


(……あれ?)


(終わった?)


(……勝ったのか?)



「売田ぁあああ!!!」


全が飛び込んでくる。


「やったじゃねぇか!!」


バズ子が笑う。


「ちょっとアンタ!

 かっこよすぎでしょ♡」


すきが息を弾ませる。


「売田さん……

 本当にすごいです」


雪平が柔らかく微笑む。


「努力が、

 実りましたね」


売田はまだ現実感がなかった。


「……え?」


「……おれ?」



少し離れた場所。


ジョーが立っていた。


何も言わない。


ただ、


静かに、


微笑んでいた。



実況が続く。


「これにより——」


「売田転、

 Aランク昇格が確定しました!!」


会場が再びどよめく。


「マジかよ!!」

「Cからここまで……」

「下克上だ……」



売田の視界が揺れる。


仲間の顔。


歓声。


照明。


盤面。



(……おれが)


(……勝った?)



胸の奥が、

じんわりと熱くなる。


だが涙は出ない。


ただ——


ふわふわしていた。



全が肩を叩く。


「おいAランク」


バズ子がニヤリ。


「年収アップね♡」


すきが笑う。


「おめでとうございます」


ジョーが小さく頷く。


雪平が言う。


「ここからですよ」



売田は、

ようやく笑った。


少し照れくさそうに。


「……まいったな」


「ほんとに、

 上がっちまった」



会場のモニターに、

新しい表示が映し出される。


【売田 転】


C → B → A


昇格確定。


年収1200万円



その瞬間。


歓声が、

祝福のように降り注いだ。



売田転

Aランク昇格。


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