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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
167/205

第165話 ガンギマリ

試合開始の合図。


売田は、

肩をぐるぐる回していた。


「よぉし……来てる来てる来てる……」


目が、

ガンギマっている。


「これだよこれぇ……

 バフの姉ちゃん最高だぜぇ……!」


後ろで、

すきが小声で言う。


「……ちょっと怖い」


全が腕を組む。


「完全に中毒者だな」


バズ子は腹を抱えて笑っている。


「やば♡目がイッちゃってる♡」


ジョーは無言で頷いた。



対する金剛良樹は、

静かだった。


呼吸一つ、

乱れない。


台を見つめる目は、

湖面のように揺れない。



「第一手、売田選手!」


実況が響く。


売田の手が、

素早く横移動を決める。


迷いがない。


奥行。


寸分のズレもない位置。


「行くぞぉ!!」


アームが降りる。


掴む。


持ち上がる。


そして――


売田の十八番。


転売回し。


箱が回転しながら

姿勢を整え、

橋の中央へ滑り込む。


観客席がどよめく。


「おおっ!」

「いきなり形作った!」

「早い!」


実況が叫ぶ。


「売田選手、得意の転売回し!

 一手で盤面を整えました!」


売田はニヤリと笑う。


「調子いいじゃねぇか……!」



二手目。


再び回す。


箱が回転し、

橋の外側へ寄る。


落ちる寸前。


止まる。


観客が身を乗り出す。


「うまい!」

「リーチ近いぞ!」


売田は舌を鳴らす。


「見えてきたぜ……!」



「対する金剛選手、第一手!」


金剛が、

静かにボタンに触れる。


ゆっくり。


極めてゆっくり。


横移動。


奥行。


無駄がない。


アームが降りる。


強く入ったように見えた。


だが――違う。


角に触れた瞬間、

力を逃がすように角度を変える。


滑る。


流れる。


箱が、

自ら動いたかのように

姿勢を変えた。


会場がざわめく。


「今の何だ?」

「押してないぞ…」

「触れただけだ!」


実況の声が震える。


「金剛選手、重心を崩しました!

 最小の接触で大きく動かしています!」



二手目。


再び静かに触れる。


押さない。


ぶつけない。


流す。


箱が回転し、

理想的な角度へ。


「まるで……」


観客が呟く。


「箱の方が動きたい方向に動いてるみたいだ」


実況:


「これは合気道の“崩し”に近い動き!

 力で動かすのではなく、

 流れを利用している!」



売田の笑みが、

わずかに引きつる。


(……なんだこいつ)


(力使ってねぇ)


(触ってるだけで動かしてやがる)



金剛の動きは、

まるで呼吸だった。


押さない。


抗わない。


導くだけ。


扉解放者の操作。


無駄が、

一切ない。



実況


「さすがAランク!

 金剛良樹選手、

 完成度の高いプレイを見せています!」


観客席


「伊達じゃない…」

「動きが違う…」



売田は、

深く息を吐く。


だが次の瞬間。


口元が吊り上がる。


「……いいじゃねぇか」


「面白くなってきた」


背後で、

統が楽しそうに笑う。


「いいねぇ〜!

 ぶつかってきたねぇ〜!」


零は、

冷たい目で見下ろしていた。


「……Bランクの限界だ」



盤面は整い、

両者ともリーチ圏内。


静寂。


張り詰める空気。


実況が息を呑む。


「次の一手で――

 試合が動く可能性があります!」


売田が、

ボタンに手を置いた。


金剛が、

静かに構える。


力で動かす者と、

流れで導く者。


交差する視線。


次の瞬間、

何かが起きる。


——勝負は、

ここからだった。

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