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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
166/205

第164話 バフ中毒者

試合前の控えスペース。


売田は、雪平の前で

両手を合わせていた。


「なぁ、いいだろ?」


雪平は無言。


「頼むよ」


まだ無言。


「な?」


さらに身を乗り出す。


「なぁ姉ちゃん」


「いいだろ?な?」


「おれぁあれがねぇとダメなんだよ」


必死だった。



すきが近づく。


「……何してるんですか?」


全も覗き込む。


ジョーも静かに立つ。


バズ子はスマホを構えた。


売田は振り返り、真顔で言う。


「バフを、お願いしてる」



沈黙。



「……え?」


すきが引いた。


「……バフ中毒?」


バズ子、爆笑。


「やば♡ 禁断症状出てるじゃん♡」


全はため息をついた。


「ちょっと見直してたのに」


「人は変わらねぇな」


ジョーは無言で頷いた。



売田は気にしない。


「頼むよ姉ちゃん」


「残ってんだろ?」


「おれ、相手Aランクなんだよ」


「な?わかるだろ?」


へへ、と卑屈に笑う。



雪平は静かに言った。


「太刀川さんとの試合は無難でしたから」


「多少の余力はあります」


売田の目が輝く。


「だろ!?」


「だろ!?姉ちゃん!」


「おれはよォ!」


「相手Aランクなんだよ!」


「な?必要だろ?」



すき、ドン引き。


全、呆れ。


ジョー、静観。


バズ子、腹を抱えている。



「……わかりました」


雪平がため息をついた。


「少しだけです」


指先が、わずかに光る。


境地の力が分配される。



売田の肩が震えた。


「おぉ……」


「きた……」


「きたきたきた……」


目が、ガンギマる。


「これだよ、これ!!」


拳を握る。


「よし!!」


「Aランク?」


「どっからでもかかってこいやァ!!」



遠くから、

神代統がけらけら笑っている。


「ははは!最高だなぁ売田さん!」



その横で。


一条零は、冷たく言い放つ。


「……醜いな」


「他者の力に依存する弱者」


視線を雪平へ向ける。


「それを与える者も同罪だ」



雪平は何も言わない。


ただ静かに立っている。



対戦台の前。


金剛良樹は売田を見ていた。


そして、


雪平を見る。


そしてまた売田を見る。


「……こいつマジか」


小さく呟いた。



アナウンスが響く。


「次の試合――」


「Bランク 売田転」


「対」


「Aランク 金剛良樹」


会場がざわつく。



売田は肩を回しながら前へ出た。


「よぉAランク」


にやりと笑う。


「狩られる準備はできてるか?」



金剛は無言で構えた。



アナウンス。


「——試合、開始」

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