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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
165/205

第163話 意思の継承


アナウンスが静かに響く。


「第三試合

 九條 全 対 大門 帝」


会場の空気は、

一条零の試合ほど張り詰めてはいない。


だが。


静かな期待があった。



観客席。


花形鈴は、

手を握りしめていた。


憧れの九條先輩。

そして――同期の大門。


応援したい相手が、二人いる。


胸の奥が、苦しい。



ステージ。


大門帝は静かに息を吐いた。


視線の先には、九條全。


同じDランク。


だが。


同じ場所に立っている気がしない。


(統はSランク)


(俺はDランク)


(でも――)


(九條先輩は)


(同じDランクなのに)


(上を見ている)



過去


練習台の前。


統のプレイ。


迷いのない操作。

無駄のない軌道。

静かに落ちる景品。


ゴトン。


周囲がどよめく。


大門は、自分の番で同じことを試した。


届かない。

ズレる。

崩れる。


統は笑った。


「帝くん、惜しいね!

 もう少しだよ!」


眩しい笑顔。


(くそ……)


(悔しいのに)


(嫌いになれない)


圧倒的な差。


それでも、

統は一度も見下さなかった。



現実へ。


試合開始の合図。



大門のプレイは丁寧だった。

九條の操作は無駄がない。


派手さはない。


だが――


確実に上手い。


観客が小さく呟く。


「堅実だな」

「いい勝負だ」



花形は、祈るように見ていた。


(どっちも……負けてほしくない)



中盤。


箱がリーチに近づく。


大門は静かに口を開いた。


「九條先輩」


「ん?」


「Sランク倒して

 この制度壊すって言ってましたけど」


一瞬、静寂。


「本気ですか?」



九條は迷わなかった。


視線は盤面のまま。


「おれは」


一拍。


「嘘はつかない」



その瞬間。


大門の胸の奥で、何かが落ちた。


(ああ……)


(同じDランクでも)


(こんなに違うのか)



終盤。


九條の一手。


アームが下りる。


掴む。

持ち上げる。


そして――


ゴトン。


静かな決着。



大門は目を閉じた。


負けた。


だが。


胸の中にあった重さは、消えていた。


(統)


(俺はまだ遠い)


(でも――)


(道は見えた)



試合後。


大門は軽く笑った。


「Dランクの望みは」


一歩下がる。


「託しました」


少し照れたように続ける。


「できれば――」


「倒すSランクは」


小さく笑う。


「統以外でお願いします」


「一応、同期なんで」



九條は苦笑した。


「知らねぇよ」


一拍。


「でも、任せとけ」



観客席。


花形の目から、涙がこぼれていた。


悔しい。

でも。


胸が温かい。




統は腕を組み、静かに頷いた。


「帝くんらしいなぁ」


少し笑う。


「ちゃんと前に進んでる」


視線を全へ向ける。


「九条先輩――」


「楽しみですね」



その近くで。


一条零は無言のまま立っていた。


興味なさそうに視線を逸らす。


だが、


ほんの一瞬だけ。


全の背中を見ていた。



静かな拍手が広がる。


大歓声ではない。


だが確かな、


敬意の拍手だった。



Dランクの意思は、確かに託された。


そして――


その重みを背負った男が、

次の戦いへ向かう

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