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くれげの世界  作者: ぐろ
最終章“ 神域編”
148/205

第146話 宣戦布告

拍手は、ゆっくりと収まっていった。


だが、

空気はまだ揺れている。


九條全の背中を、

多くの視線が追っていた。


ただのDランク同士の試合。


そのはずだった。


なのに。


誰もが、何かを感じ取っていた。



全は、振り返らない。


そのまま協会席の方へ歩く。


一歩。


また一歩。


足音だけが響く。


そして――


立ち止まった。


ゆっくり顔を上げる。


ガラス越しの協会席。


会長。


幹部。


Sランク。


Aランク。


全員の視線が集まっている。



全は言った。


静かに。


だが、はっきりと。


「おい」


会場が凍る。


「このランク制度考えたやつ」


一拍。


「よく聞け」


ざわめきが広がる。


「おれがSランクに勝って」


拳を握る。


「この制度、ぶっ壊すからな」



一瞬。


沈黙。


次の瞬間――


どよめきが爆発した。


「うおおおお!?」

「言いやがった!」

「Dランクが!?」


観客席が揺れる。



協会席。


副会長・知見優が静かに目を細める。


「……面白い」


会長は無言。


だが、その目は九條を捉えたまま動かない。



控え席。


「……はは」


誰かが笑う。


「やるじゃねぇか」



「おいコラァァ!!」


場違いな大声。


振り向くと、


売田転が立ち上がっていた。


満面の笑み。


「全!!」


拳を突き上げる。


「でかいこと言いやがって!」


観客がざわつく。


「だがな!」


胸を叩く。


「その前に!!」


「おれの昇給はどうなる?」


周囲が一瞬固まる。


「そこかよ!!」

「空気読め!!」


売田は構わず続ける。


「一回戦勝てば年収600万だぞ!!」


観客席から笑いが起こる。


「現実的すぎる!」

「夢が生活費!!」


売田は腕を組む。


「プロはなぁ!」


ドヤ顔。


「生活も大事なんだよ!」



九條が額に手を当てる。


「……うるせぇ」


だが。


口元は、少しだけ緩んでいた。



羽澄京子がスマホを構える。


「わぁ〜♡」


「今の絶対バズります♡」



会場の空気は、変わっていた。


さっきまでの入れ替え戦ではない。


誰もが気づいている。


これは――


何かが壊れる音の前触れだ。



花形は、控え席から九條を見ていた。


涙はもう止まっている。


胸の奥で、静かに思う。


(やっぱり……)


(私が憧れた背中だ)



ガラス越しに。


会長は、ゆっくりと椅子に深く座った。


「……嵐になるな」


知見が答える。


「ええ」


「ですが」


小さく微笑む。


「停滞よりは、はるかに良い」



全は再び歩き出す。


次の戦いへ。


制度を壊すために。




ランク入れ替え戦。


火は、確かに灯った。

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