第144話 組み合わせ
協会ホールの照明が、ゆっくりと落ちた。
ざわめきが止む。
巨大モニターが、静かに点灯する。
白い画面。
まだ何も表示されていない。
だが——
誰もが分かっていた。
ここから始まる。
⸻
会長の声が響く。
「ランク入れ替え戦」
一拍。
「第一回戦の組み合わせを発表する」
空気が張り詰める。
⸻
画面に文字が浮かび上がる。
《第一試合》
九條 全 Dランク
花形 鈴 Dランク
ざわめき。
「同ランク対決か…」
「三期生の花形って…」
後方。
花形鈴は、唇を噛みしめていた。
視線の先には、九條全。
憧れ。
目標。
追いつきたかった背中。
⸻
全は、静かに画面を見つめている。
逃げない。
逸らさない。
ただ、受け止めていた。
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画面が切り替わる。
《第二試合》
売田 転 Cランク
下衆田 下僕 Bランク
会場の空気が変わる。
「うわ、あいつか」
「零の信者だろ」
後方で、下衆田が薄く笑った。
「楽勝でげす」
その視線は売田を射抜いている。
売田は鼻で笑う。
「うるせぇな」
だが指先は、わずかに震えていた。
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次の表示。
《第三試合》
羽澄 京子 Bランク
阿達 豪Bランク
小さなどよめき。
「阿達か…強敵だぞ」
「僅差になりそうだな」
羽澄は、静かにモニターを見つめる。
その瞳に揺らぎはない。
ただ、静かな炎だけが灯っていた。
⸻
モニターが暗転する。
そして——
巨大なトーナメント表が映し出される。
B・C・Dランク 42名。
勝者のみ、生存。
格上撃破で、ランク入れ替え。
⸻
会場の空気が重く沈む。
ここにいる全員が理解した。
これは大会ではない。
選別だ。
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前列。
一条零は腕を組んだまま言う。
「弱者は必要ない」
誰に向けた言葉でもない。
「淘汰は必然だ」
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神代統は、小さく息を吐く。
「怖い顔しすぎっすよ」
零は視線を向けない。
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雪平は、静かにトーナメント表を見つめていた。
「……始まるのね」
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すきは、自分の手を見る。
震えていない。
だが胸の奥が、静かに熱を帯びている。
(みんな、ここにいる)
(それぞれの場所から)
(ここまで来た)
⸻
会長の声が響く。
「試合は明日より開始」
「以上だ」
短い宣言。
だが——
逃げ場は、どこにもない。
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人々が動き始める。
重い足取り。
固い表情。
その中で。
九條全は、花形鈴の方へ歩いた。
花形は、思わず背筋を伸ばす。
言葉が出ない。
全は少し困ったように笑った。
「よろしくな」
その一言に、
花形の目が揺れた。
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遠くで、売田がぼそっと言う。
「おい全」
振り返る。
「負けんなよ」
一瞬。
にやっと笑う。
「俺がSまで上がる前に消えんな」
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会場の外。
夜の空気は、静かだった。
だが。
この夜が明ければ——
誰かの夢が終わる。
誰かの序列が崩れる。
そして。
誰かの運命が、変わる。




