第142話 入れ替え
翌朝。
テレビのニュース番組が、
普段とは違う話題を伝えていた。
『クレーンゲーム協会は本日、
プロライセンス制度の新たな改革を発表しました』
画面に表示された文字。
《ランク入れ替え戦 開催》
街のざわめきの中で、
その言葉だけが静かに浮かび上がる。
⸻
ナレーションが続く。
『現在のプロクレーンゲーマーは50名。
2年前、第一期生の誕生以降——』
画面に数字が並ぶ。
■第1期生 15名
■第2期生 15名
■第3期生 20名
『競技人口の増加と実力差の可視化を目的として、
新たにランク制度が導入されています。』
画面が切り替わる。
⸻
Sランク 3名
Aランク 5名
Bランク 10名
Cランク 15名
Dランク 17名
⸻
『ランクは平均獲得率、成功難度、
競技実績などのデータに基づき決定』
『ICプレイシステムの導入により、
すべてのプレイは数値化されます』
そして——
『ランク入れ替え戦の開催が決定しました』
⸻
■Bランク以下は一回戦から出場
■格上に勝利した場合、ランク入れ替え
■一回戦負けの場合、契約解除の可能性
⸻
「序列の固定化を防ぎ、
プロ全体の競技力向上を目的とします」
キャスターが言葉を締めくくる。
「クレーンゲーム界は、
新たな時代を迎えようとしています」
⸻
・転売ズのアジト
昼間だというのに薄暗い古民家。
テレビの前で、売田とジョーが座っていた。
「……入れ替え戦ねぇ」
売田が鼻を鳴らす。
「給料、変わるらしいな」
ジョーが最近覚えた日本語で聞く。
「オマエ、上がりたいか?」
売田は少し考え、
「……上がるに決まってんだろ」
ニヤッと笑った。
「金は正義だ」
一拍。
画面のランク表を見つめながら、静かに続ける。
「でもな……
下を切り捨てるなら、つまらねぇ世界になる」
ジョーは何も言わず、画面を見つめていた。
⸻
・ファンイベント会場(羽澄京子)
ステージ裏。
「えぇぇぇ!?」
羽澄がスマホを見て声を上げる。
「ランク入れ替え戦!?」
ファンがざわつく。
「ねぇバズ子、何ランクなの!?」
羽澄は振り返り、満面の笑み。
「それは本番のお楽しみ♡」
だが。
スマホを見つめる目だけが、わずかに真剣だった。
⸻
・ゲームセンター裏スペース(九條全)
Dランクの若手プロたちが集まっている。
「俺たち、切られるのかな……」
「下位は価値ないって噂だし」
重たい空気。
全は壁にもたれたまま聞いていた。
そして静かに言う。
「関係ねぇだろ」
全員が顔を上げる。
「上だろうが下だろうが、
取れるやつが残る」
一拍。
「それだけだ」
テレビの速報が流れる。
《ランク入れ替え戦 開催決定》
全の目が、わずかに細くなった。
⸻
・月刊クレーンゲーム 編集部
聞見描は資料の山に囲まれていた。
「これは……時代が動きますね」
向かいに座るのは協会会長。
録音機が回っている。
「会長、今回の改革の狙いは?」
会長は短く答えた。
「停滞の打破だ」
「強者を強者のままにしないため、ですか?」
「それもある」
一拍。
「だが、本当の目的は——
まだ誰も知らない」
聞見のペンが止まる。
⸻
・協会本部
夜。
モニターに表示されたランク表。
晴谷が静かに見つめている。
背後から、会長の声。
「始まったな」
「ええ」
晴谷は振り返らない。
「この戦いで——」
会長は言葉を切った。
窓の外、夜の闇。
「“ 神域”へ辿り着く者が―」
静寂。
遠くで雷が鳴る。
⸻
新しい序列。
新しい時代。
そして——
まだ誰も知らない領域が、
静かに待っている。
【クレーンゲーム協会公認】
プロクレーンゲーマー年収一覧
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Bランク 年収700万円
Cランク 年収600万円
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