第131話 可能性
勝敗が、確定した瞬間。
会場が、
一拍遅れて爆発した。
「うおおおおおっ!!」
受験者チームが、
一斉に雪平のもとへ集まる。
「すげぇ……!」
「やった……!」
「勝った……!」
雪平は、
少し照れたように笑った。
いつもの余裕の笑顔。
——けれど。
それを見て、
何人かは気付いていた。
(……違う)
(今の笑顔、
どこか柔らかい)
観客席。
元かもめ高校の面々が、
立ち上がっていた。
「杏!!」
「さすが主将!!」
誰かが、
そう呟く。
そして。
ガラス張りの会長席。
会長は、
静かに頷いていた。
「……気付いたな」
隣に立つ晴谷が、
視線を盤面から離さずに答える。
「ええ」
「境地の先——
“ 神域”の可能性を」
雪平の活躍に、
すきの肩が、わずかに震えた。
思わず、
晴谷を見る。
晴谷も、
こちらを見ていた。
ほんの一瞬。
だが、確かに。
——あの時と同じ目。
すきとの対戦中。
晴谷が、
同じ“可能性”を見せたときの目。
会長が、
ゆっくりと告げる。
「これで、2勝2敗だ」
会場が、
ざわめく。
「受験者チームは、
この一戦で——」
「繋いだ」
その一言で、
空気が変わった。
控え席。
売田転が、
ガチガチに固まっていた。
肩が、
小刻みに揺れている。
「……え?」
すきが、
顔を覗き込む。
「大将?」
「……」
返事がない。
次の瞬間。
「ははっ!」
誰かが、
吹き出した。
「なにその顔!」
「緊張しすぎでしょ!」
受験者チームに、
笑いが広がる。
「しっかりしてよ、大将」
雪平が、
冗談めかして言う。
売田は、
唇を噛みながらも
苦笑した。
「……うるせぇ」
羽澄が、
楽しそうに言う。
「いい場面ですね♡」
九條が、
腕を組む。
「頼むぞ、転売のおっさん」
すきが、
一歩前に出て、
売田の真似をする。
「……ビビってんのか?相棒?」
一瞬。
売田が、
目を見開いた。
次の瞬間。
「……ちっ」
「真似すんな」
でも。
その口元は、
少しだけ上がっていた。
アナウンスが、
会場に響く。
「——最終戦、
第五試合を開始します」
勝てば、合格。
負ければ、不合格。
すべてが、
この一戦に懸かっている。
売田転が、
一歩、前に出た。
——最終戦、開始。




