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くれげの世界  作者: ぐろ
第一章 中学編
13/122

第13話 数を取れ


 照明が落ち、台のランプだけが浮かび上がる。


「第一回戦、開始!」


※1回戦ルール

チーム使用金額3000円

終了時により多くの景品を取っていたチームの勝利

 アナウンスと同時に、会場が沸いた。


 すきは、音を聞いていた。

 アームの戻り、橋に触れた箱の乾いた反響。

 新品なのに、癖がある。


(……数を取る台)


「確認しよ」


 沙希が言う。


「3000円で何個取れるか。

 一景品ごとに順番交代。

 一手目から五手目まで固定」


「一手目、沙希」

「二手目、凛」

「三手目、金」

「四手目、詠」

「五手目、すき」


 全員、頷いた。


「焦らない。一個を最短で取る」


「はーい」


 詠だけが楽しそうだ。


「最短って、最高に脳汁出るやつ?」


「お前は緊張しないなぁ〜」


 金が即ツッコむ。



第一景品・一手目(沙希)


 沙希は迷わない。


「ワンパン狙いじゃない」


 移動、下降。

 角に軽く触れ、箱が“正しい向き”になる。


「整えた。

 二手目、行ける」


「助かる」


 凛がすぐ前に出る。


 向こう側、仁のチームは力押し。

 一気に前へ出すが、配置が荒れる。


「数勝負で荒らすのは、後がきつい」


 沙希は視線を外さなかった。



第一景品・二手目(凛)


 橋幅、摩擦、戻り速度。

 凛は計算を詰める。


「……想定より重い」


 下降。


 箱が前へ、必要な分だけ動いた。


「角、完成」


「三手目、金。

 触れるだけ」


「一番怖いやつ!」


 叫びつつ、金が前へ。



第一景品・三手目(金)


(数を取る。

 失敗しない。

 それだけ)


 移動。

 下降。


 アームが箱を撫でる。

 一瞬、滑りかけて――


 止まる。


「……よし」


 金はすぐ離した。


「止めた。

 これ以上は、もったいない」


「正解」


 沙希が頷く。


 一手=100円”が、全員の頭にある。



第一景品・四手目(詠)


 詠が前に出た瞬間、空気が変わる。


「数勝負ね」


 にやり。


「じゃ、最短いこっか」


 狙いは――橋じゃない。

 展示フィギュアの台座。


「は?」


 下降。


 アームが台座の縁を押す。


 ――ゴトン。


 展示フィギュアが傾き、

 その衝撃で箱が一気に“落ち位置”へ。


「ルール上問題なし!」


 審判が即断。


 会場がどよめく。


 詠は――


「っ、は……っ」


 一拍。


「はは……っ!!

 やっば……数、増える音した……」


 肩が震える。

 目が潤む。


「脳、焼ける……!」


「焼くな!」


 金が叫ぶ。



第一景品・五手目すき


 すきが前に出る。


(……うるさい)


 でも、落ちる音が聞こえる。


 移動。

 下降。


 アームが触れた瞬間、

 箱は迷わず――


 落ちた。


「獲得!」


 歓声。


「一個!」


 沙希が指を立てる。


「500円で一個。

 理想的」


 仁が舌打ちした。


「派手にやるな」


 詠が振り返って、にやり。


「派手じゃないよ」


 指で数える。


「脳汁♡」



次の景品へ


 コインが入る。


「このペースなら、数で勝てる」


 凛が言う。


 だが、仁のチームもすぐ一個を取った。

 荒いが、速い。


「……削り合いだ」


 沙希が息を整える。


 詠は、楽しそうに笑った。


「いいね。

 勝ってるのに、金が減る」


 金が苦笑する。


「それ、褒めてないよな?」


「最高の状況だよ」


 詠はすきを見た。


「数を取るってことはさ」


 小さく、囁く。


「最後、誰かが重いの背負うってこと」


 すきは、台を見つめていた。


(……うん)


 音が、少しずつ変わっていく。


 この先、

 3000円が尽きる瞬間が来る。


 そしてその時――

 誰に、回るのか

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