第127話 龍王
第四試合
受験生チーム 雪平 杏
会長選抜 龍宮寺 玉
第四試合開始の合図。
龍宮寺 玉は、
一切迷わなかった。
初手から、
矢倉を組むような構え。
無理に攻めない。
盤面を固め、
逃げ道を消し、
勝ち筋だけを残す。
(……硬い)
雪平杏は、
内心でそう評する。
だが、それは甘かった。
龍宮寺は
“守っている”のではない。
攻めるために整えている。
二手目。
雪平は
箱を一度、動かす。
安全な一手。
だが——
龍宮寺は
その一手を見て、
すぐに次を打った。
角換わり。
互いの選択肢を
あえて削り合う。
リスクを承知で、
自分の読みだけを信じる。
(……誘ってる)
雪平は気付く。
この人、
こちらの最善を
最初から織り込んでいる。
三手目。
龍宮寺のアームは
まるで棒銀。
一直線。
逃げ場を与えない。
箱は
“ここに来るしかない”
位置へと追い込まれる。
観客席が
ざわめく。
「早くない?」
「もう形できてない?」
だが、
まだ誰も言葉にできない。
——詰み筋が見えていることを。
四手目。
雪平は
一瞬だけ、
冒険を考える。
だが、
やめた。
(今じゃない)
龍宮寺は
その迷いすら読んだように
次を置く。
横歩取り。
一見、
無駄に見える一手。
だがそれは、
相手の“逃げ”を
すべて潰すための布石。
(……終局が近い)
売田が、
唇を噛む。
「これ……
あと二手で終わるぞ」
五手目。
雪平の台は、
まだ“生きている”。
だが、
龍宮寺の台は——
龍に、“ 成った”
箱が
逆向きに倒れ、
完全に
獲得口へ向かう形。
将棋で言えば、
詰将棋の最終局面。
逃げ場なし。
逆転なし。
龍宮寺は、
初めて視線を上げた。
対戦相手を見る。
——雪平 杏。
「……悪くない」
淡々と。
それは、
評価だった。
六手目を
待つまでもない。
この試合、
誰の目にも
龍宮寺優勢。
雪平は
まだ立っている。
だが、
盤面は完全に
支配されていた




