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くれげの世界  作者: ぐろ
第三章 プロライセンス編
125/205

第123話 ラリー


開始の合図と同時に、

すきは動いた。


迷いがない。

視線が、

すでに次の一手を捉えている。


アームが下りる。

掴む。

持ち上げる。


——早い。


「……ほう」


晴谷は、

表情を変えない。


すきの一手目で、

台は一気に形を持った。


(いける)


そう思った瞬間。


晴谷の台が、

同じ速度で応える。


無駄のない横移動。

寸分狂わぬ奥行。


箱は、

すきの台と

ほぼ同じ位置まで進んだ。


「……っ」


すきは、

わずかに息を呑む。


(追いつかれた)


二手目。


すきは、

ほんの少しだけ角度を変えた。


攻める。


箱が、

跳ねる。


——いい。


だが。


次の瞬間、

晴谷のアームが下りる。


押す。

整える。

“戻す”。


派手さはない。

なのに、

形は崩れない。


卓球だ。


強く打ち返した球を、

吸い付くように受け止めて、

静かに返してくる。


三手目。


すきは、

速度を上げた。


重心を読む。

未来を拾う。


箱が、

明らかに前へ出る。


会場が、

ざわつく。


「……いい」


晴谷が、

小さく呟く。


だが、

顔色は変わらない。


返球。


アームが、

すきの攻めを“利用する”。


箱は、

倒れない。

崩れない。


ただ、

“次に進む”。


(……止まらない)


すきは、

歯を食いしばる。


キャッチボールじゃない。


投げて、受けて、

終わりじゃない。


打って、返して、

 打ち返される。


境地に至った者同士、

神速のラリー。


四手目。


すきは、

深く息を吸った。


(まだ……)


(まだ、いける)


だが、

その瞬間。


晴谷が、

初めて視線を上げた。


すきを、

まっすぐ見る。


「焦るな」


低い声。


それだけ。


次の一手。


晴谷のアームが下りる。


静かに。

確実に。


台が、

“完成形”へ近づいた。


すきの胸が、

どくん、と鳴る。


(……強い)


でも。


(楽しい)


ラリーは、

まだ続く

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