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くれげの世界  作者: ぐろ
第三章 プロライセンス編
124/205

第122話 師弟対決

「……おい」


控え席に戻るなり、

売田が羽澄の前に立った。


「なんで初期位置戻し使わねぇ」


低い声。

怒っているというより、

納得していない顔だ。


「勝てたんだぞ?

 もっと楽に」


羽澄京子は、

少しだけ首を傾げてから笑った。


「でも、

 それじゃ面白くなかったでしょ?」


売田が言葉に詰まる。


「……チッ」


舌打ちして、

視線を逸らした。


「数字、落ちるぞ」


「大丈夫です♡

 ああいうの、

 あとから伸びるんで」


自信満々。

でも、どこか穏やかだった。


その様子を見ていた雪平杏が、

静かに声をかける。


「ありがとう」


羽澄が振り向く。


「あなたの勝ち方、

 すごく綺麗だった」


「え?」


「相手も、

 自分も、

 ちゃんと残した」


羽澄は、

一瞬だけ照れたように笑った。


「……それ、

 いちばん嬉しいです」


少し離れたところで、

すきがその様子を見ていた。


胸の奥が、

じんわり温かい。


(輝いてた……)


気づいたら、

声が出ていた。


「羽澄さん、

 すごく輝いてました」


羽澄が、

くるっと振り返る。


「……あら?」


一歩近づいて、

にっと笑う。


「もう、

 バズ子でいいわよ♡」


すきは、

一瞬きょとんとしてから、

小さく笑った。


「……はい、バズ子さん」


「よろしい♡」


その空気を、

場内アナウンスが切り替える。


「続いて、第三試合を開始します」


ざわめきが、

再び会場を満たす。


会長選抜側。


ゆっくりと歩み出る男。


晴谷蓮二。


落ち着いた表情。

どこか懐かしい気配。


すきも、

前に出た。


二人は、

台の前で向かい合う。


晴谷が、

小さく笑う。


「久しぶりだな」


「……はい」


「成長したか?」


すきは、

一瞬考えてから答えた。


「……わかりません」


晴谷は、

それを聞いて、

満足そうに頷いた。


「なら、

 まだ伸びる」


第三試合。


それは、

勝敗を決める戦いではない。


——導くための試合。

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