表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くれげの世界  作者: ぐろ
第三章 プロライセンス編
120/205

第118話 インフルエンサーとマジシャン

第二試合の台は、

不自然なほど静かだった。


「第二試合、開始」


その合図と同時に、

会場の視線が一斉に集まる。


受験生チーム――

羽澄 京子。


「はーい♡」


明るい声。

軽やかな足取り。


カメラの位置を一瞬で把握し、

自然に一番“映える角度”へ立つ。


(……もう出来上がってる)


すきは思った。


一方。


会長選抜側に立つのは、

プリンセス葉子。


長い髪を揺らし、

余裕の笑みを浮かべる。


「……マジック、見せてあげるわ」


誰に言うでもなく、

そう呟いた。


葉子は、

クレーンゲーム台の前で、

白い布を取り出した。


「え?」


「布?」


会場がざわつく。


葉子は、

ためらいなくその布を

クレーンゲーム本体にふわりとかけた。


アームも、箱も、

すべてが隠れる。


「なにやってんだ?」


「見えないじゃん」


葉子は、

観客のざわめきを楽しむように、

ゆっくりと手を広げる。


「マジックの基本、知ってる?」


「予告しないこと。

 繰り返さないこと。

 タネ明かしをしないこと。」


そのまま、

ボタンに手を置いた。


——見えないまま。


「嘘だろ……」


アームが動く音だけが響く。


ガコン。

ギギ……。


布の向こうで、

何かが動いている。


数秒後。


布が、

すっと外された。


次の瞬間。


「え……?」


箱は、

初期位置から、ほぼ完成形に近い場所へ移動していた。


「なにそれ……」


「今、見てたやついる?」


誰も答えられない。


葉子は、

にこりと笑った。


「ミスディレクション。

 視線を奪えば、

 人は“見てるつもり”になる」


観客がどよめく。


その様子を、

羽澄京子は、黙って見ていた。


(……なるほど)


(これは、“取る”試合じゃない)


(“魅せる”試合だ)


羽澄は、

深呼吸してから、

一歩前に出る。


「じゃあ、次は私の番ですね?」


カメラに、

視線を向ける。


「みなさーん♡

 クレーンゲームって、

 下手な人が見ると、

 魔法みたいに見えるんですよ」


そう言って、

ウインク。


コメントが一気に流れ出す。


《かわいい》

《映える》

《この人好き》


羽澄は、

箱を“あえて”少しだけズラした。


失敗に見える一手。


「あ、ミスった?」


そう言って、

小さく笑う。


——その瞬間。


次の一手で、

一気に形が進む。


「おおお!」


「今の分かりやすい!」


羽澄は、

箱だけじゃない。


感情を動かしている。


葉子は、

その様子を見て、

わずかに目を細めた。


(……観客を、

 “仲間”にしてる)


第二試合は、

まだ始まったばかり。


だがもう、

二人の戦い方は、

はっきりと違っていた。


——これは、


“見せる者”と

“見破られる者”の試合。


そして、

その勝敗がひっくり返る瞬間は、

まだ、先だ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ