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くれげの世界  作者: ぐろ
第三章 プロライセンス編
113/205

第111話 順番

控室は、静かだった。


五人分の椅子。

壁に貼られた簡易な進行表。

まだ、相手の順番も顔ぶれも表示されていない。


分かっているのは一つだけ。

次に出るのは、自分たちだ。


「……なぁ」


沈黙を破ったのは、売田だった。


「順番、決めとくぞ」


「だれからいく?」


羽澄が目を瞬かせる。


「相手の順も分かんないのに?」


「だからだよ」


売田は即答した。


「分かってから考えるのは遅ぇ。

 おれらがどう出るかを、先に決める」


雪平が小さく頷く。


「確かに。

 主導権は、こちらの配置で決まります」


すきは二人の会話を聞きながら、正直な気持ちを抱いていた。


(……むずかしい)


勝つ順番、負ける順番。

そんなこと、考えたこともない。


九條は腕を組み、不機嫌そうに言った。


「誰が最初でも同じだろ。

 出たらやる。それだけだ」


「それで勝てりゃ苦労しねぇ」


売田が鼻で笑う。


「いいか、初戦は大事だ。

 勝っても負けても、流れが決まる」


「じゃあ」


売田は九條を見た。


「お前、行くか?」


「……」


九條は一瞬だけ目を伏せ、すぐに顔を上げた。


「行く」


「理由は?」


「ない」


九條は短く言った。


「一番最初に出て、

 全部引き受ける」


売田はしばらく九條を見つめ、

やがて小さく頷いた。


「悪くねぇ」


「第一は、九條で行こう」


羽澄が軽く手を挙げる。


「じゃあ次、私でいいですよね?」


「お前は二番だな」


売田が即決する。


「空気変えられる。

 流れが悪くなっても、誤魔化せる」


「ひどーい♡」


羽澄は笑っていたが、否定はしなかった。


「……三番目」


売田の視線が、すきに向く。


「相棒」


胸が少し、強く打つ。


「真ん中だ。

 一番、場が荒れる」


「……うん」


すきは、ゆっくり頷いた。


理由は分からない。

でも、逃げる気はなかった。


「四番目は、私が行きます」


雪平が静かに言う。


「全体を見てから、立て直せる位置です」


「頼もしいな」


売田が言う。


「で」


最後に、自分を指差した。


「おれが大将だ」


「相手、分かってないですよ?」


「だからだよ」


売田は、肩をすくめた。


「最後に出て、

 相手が誰でも、腹くくる」


順番は、決まった。


第一 九條

第二 羽澄

第三 すき

第四 雪平

第五 売田


誰と当たるかは、分からない。


「……ねぇ」


すきは、声を落として雪平に聞いた。


「さっきの話なんだけど。

 雪平さんって、チームに力を分けられるんだよね?」


雪平は一瞬だけ考え、頷いた。


「ええ。

 できなくはありません」


「どれくらい?」


「それは……」


雪平は、言葉を濁した。


売田が口を挟む。


「そんなもん、使えるなら使えばいい。

 数字の話は、今しなくていい」


九條が不満そうに言う。


「いらねぇよ。

 そんな都合のいい力」


「……分かりました」


雪平は、それ以上何も言わなかった。


配分も、割合も。

誰に使うかも。


そのすべてを、胸の内にしまったまま。


やがて、会場アナウンスが響く。


「――まもなく、最終試験・第一試合を開始します」


五人は、立ち上がった。


相手の名前も、順番も、まだ分からない。


それでも――

出る順番だけは、決めた。


最終試験は、

もう始まっている。

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