第108話 会長選抜
最終試験へ進めた受験生は、十八名。
会場に張り出された名簿を見上げながら、誰も声を出さなかった。
多いのか、少ないのか。
そんな判断は、もう意味を持たない段階に来ている。
司会の合図で、照明が一段落ちる。
「――これより、最終試験の試験内容を説明する」
空気が張り詰める。
ここから先は、落ちたら終わりだ。
最終試験は五対五のチーム戦。
全五試合中、三勝以上で合格。
そして――
対戦相手として紹介されたのが、会長選抜の五名だった。
「一人目。
晴谷 蓮二」
ざわめきが走る。
トレ高クレーンゲーム部顧問。
元“ゲーセン荒らし”。
境地到達者。
すきの胸が、わずかに軋んだ。
「二人目。
梅田 芭蕉」
茶道界の神童。
静かな所作の中に、研ぎ澄まされた圧がある。
「三人目。
プリンセス葉子」
世界一のマジシャン。
布で覆われたクレーンゲーム筐体を前にしても、微笑みを崩さない。
「四人目。
龍宮寺 玉」
将棋八冠。
盤を読む眼差しのまま、クレーンゲームを見据えている。
「五人目。
ジョー」
短く名だけが告げられた。
年齢は十六。
会長が海外視察で拾った孤児。
――それだけ。
だが、その場に立つだけで、異質さが伝わってくる。
雪平杏は、会長選抜の五人を一瞥して、確信した。
(……全員、ジャンルは違えど、境地に至ってる)
強い、という言葉では足りない。
“立っている場所”が違う。
「昏華さん」
小声で呼びかけられ、すきは顔を向けた。
「扉持ちの認識方法、知ってる?」
「……うん」
すきは頷く。
知っているというより、見えてしまう。
「相手の肩のあたりに意識を移して、集中するとね。
扉が、後ろに見えるの、あの5人とも境地に至ってる。」
すきは少し驚いた。
それを言葉として説明できる人がいることに。
(でも……)
すきは、ふと疑問を抱く。
(雪平は、どうして“境地”だって分かったんだろう)
「扉持ちと、境地到達者は同じには見えない」
雪平は淡々と続ける。
「扉を覆うオーラの量が、桁違い。
……向こうは、もう別の場所に立ってる」
すきは五人を見つめた。
確かに、重い。
近づくだけで、息が詰まるような感覚。
自分は、ただ見えてしまうだけ。
理解しているわけじゃない。
同じ境地に立っていても、
見ている景色は違う。
その五人の中に、すきは再び視線を留めた。
晴谷蓮二。
逃げ場はない。
避けては通れない相手が、そこにいる。
「――ここからは、各自チームを組んでもらう」
司会の声で、現実に引き戻される。
誰と組むか。
誰と戦うか。
すきは周囲を見渡した。
選択そのものが、試験だと告げられているようだった。




