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くれげの世界  作者: ぐろ
第三章 プロライセンス編
109/205

第107話 面接


面接室は、

驚くほど質素だった。


机。

椅子。

それだけ。


正面に座る男は、

眼鏡の奥からじっとこちらを見る。


「副会長、知見 ちけん・すぐるです」


声は低く、感情がない。


「これから行う四次試験――面接の合格基準は」


一拍。


「私の、独断と偏見です」


誰かが、息を呑む。


「安心してください」


知見は淡々と言った。


「プロに必要なのは、

 正解ではありません」


「理由です」



「なお」


「20名の中から、

 最終試験に進める人数は――」


少しだけ、間を置く。


「未定です」


会場の空気が、

ぴんと張りつめた。



羽澄京子


椅子に座ると同時に、

羽澄は自然に笑った。


「なぜ、プロになりたい?」


「映えるから、です」


即答。


知見の眉が、

わずかに動く。


「プロで、何をしたい?」


「自分が表紙の雑誌を作りたいです」


「あなたにとって、クレーンゲームとは?」


羽澄は、少し考えてから言った。


「……武器の一つ、ですかね」


嘘はない。

飾りもない。


知見は、

何も書き込まず、次を呼んだ。



九條 全


椅子に座る姿勢が、

やや硬い。


「なぜ、プロになりたい?」


「……認めさせたい人がいます」


知見は、視線を上げる。


「プロで、何をしたい?」


「大会で勝って、

 有名になりたいです」


「あなたにとって、クレーンゲームとは?」


九條は、

一瞬、言葉に詰まってから吐き出した。


「……呪縛。」


知見は、

ペンを止めた。



売田 転


椅子に座るなり、

足を組む。


「なぜ、プロになりたい?」


「年棒500万。

 プレイ料金半額」


「条件が揃いすぎてる」


知見は、眼鏡を押し上げる。


「……やらない奴は、

 転売に向いてない」


「転売するつもりですか?」


「しないさ」


売田は、笑って肩をすくめた。


「まぁでも」


「億とか言われたら……なぁ?」


「わかるだろ?」


へへ、と軽く笑う。


知見は、

その笑いを、じっと見ていた。



雪平 杏


背筋が、

自然と伸びている。


「なぜ、プロになりたい?」


「個として、

 自分に自信を持つためです」


「プロになって、何がしたい?」


「まずは」


雪平は、

少しだけ口元を緩めた。


「きっかけをくれた

 変わり者の後輩に、

 ケーキでもご馳走します」


「あなたにとって、クレーンゲームとは?」


「……自分と、向き合える場所です」


知見は、

静かにペンを走らせた。



昏華すき


椅子に座った瞬間、

すきは一度だけ深呼吸した。


「なぜ、プロになりたい?」


「……堕落した自分を、

 変えたいです」



知見は、

遮らない。


「プロになって、何がしたい?」


「……もっとクレーンゲームが知りたい」


一瞬、

室内の空気が揺れた。


「あなたにとって、クレーンゲームとは?」


すきは、

答えかけて――

止まった。


少しだけ、

視線を伏せる。


「……その答えは」


顔を上げる。


「最終試験の後に、

 答えさせてください」


沈黙。


知見は、

すきを見つめたまま、

数秒動かなかった。


やがて。


「……結構です」


それだけ言って、

次の書類に手を伸ばした。



面接は、

淡々と進んでいく。


誰が正しくて、

誰が間違っているのか。


そんなものは、

どこにも書かれていない。


ただ一つ。


それぞれが、

 違う理由で、

 同じ場所を目指している。


その事実だけが、

静かに積み上がっていった。


最終試験に進めるのは、

誰なのか。


それを決めるのは――

独断と、偏見

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