第106話 複雑
会場の照明が落ち、
スクリーンだけが白く浮かび上がった。
「三次試験の結果を発表します」
目立 番の声は、
相変わらず軽い。
「まず、説明しておくね」
一拍。
「三次試験には、裏ルールがあります」
ざわり、と空気が揺れる。
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《評価対象》
《・視聴数》
《・高評価(GOOD)》
《・低評価(BAD)》
《・コメント数》
《すべてを合算し、
“反応を生んだ量”として評価》
《通過者は、上位20名》
数字が、
無慈悲に整理されていく。
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「つまり」
目立は、笑った。
「好かれても、嫌われても勝ち」
「無風が、一番ダメ」
誰かが、
息を呑む音がした。
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ランキングが、
下位から表示されていく。
20位。
昏華すき
一瞬、
会場が静まった。
(……20番目)
ギリギリ。
すきは、
スクリーンを見つめたまま、
何も動けなかった。
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続いて――
8位。
雪平 杏
納得の順位。
派手さはない。
でも、確実に支持されている。
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5位。
売田 転
「……え?」
小さな声が漏れる。
売田本人が、
一番驚いた顔をしていた。
(……あれ、俺こんな上?)
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2位。
名前が映った瞬間、
会場がざわつく。
九條 全
コメント数。
BADボタン。
炎上。
すべてが、
“反応”として評価された結果。
九條は、
唇を噛みしめていた。
喜んでいいのか、
分からない表情。
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そして。
1位。
羽澄 京子
圧巻だった。
視聴数。
GOOD。
コメント。
どれも、
他を寄せ付けない。
「……まあ、そうなるよね」
誰かが、
苦笑混じりに呟いた。
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「以上」
目立は、手を叩く。
「本日の試験は、終了!」
「明日から、
四次試験(面接)に進みます」
軽い声。
でも、
会場の空気は重かった。
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帰り道。
夕方の空。
人の流れ。
すきは、
少し後ろを歩いていた。
(……20番目)
通った。
でも――
胸を張れる数字じゃない。
「ちょっと」
明るい声。
振り向くと、
羽澄京子――バズ子がいた。
「落ち込んでる?」
すきは、
小さく笑って誤魔化す。
「……まあ」
「気にしなくていいよ」
羽澄は、
あっけらかんと言った。
「三次は、
向いてる人が強いだけ」
「向いてないからって、
価値がないわけじゃない」
それは、
優しさでもあり、
現実でもあった。
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少し遅れて、
売田が合流する。
「……相棒」
すきを見て、
鼻で笑った。
「不甲斐ない顔してんな」
「……すみません」
「謝るな」
売田は、
歩きながら言う。
「三次はな、
技術試験じゃねぇ」
「俺だって、
正直向いてるとは思ってねぇ」
一拍。
「でもよ」
「向いてねぇって分かった上で
どうするかが、
プロの分かれ目だ」
すきは、
その言葉を噛みしめる。
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前を歩く九條の背中。
2位。
でも、
どこか悔しそうだ。
(……みんな、
それぞれ違う戦い方してる)
すきは、
空を見上げた。
(……明日)
(四次試験)
今度は、
プレイじゃない。
自分自身を、
どう語るか。
それが、
問われる。
すきは、
歩幅を少しだけ速めた。
まだ、
終わっていない。




