第103話 心を掴め
ステージの空気が、
はっきりと変わった。
試合台は、同じ。
クレーンゲームも、同じ。
――でも。
「三次試験、試験官を務めます」
前に立ったのは、
派手な色のジャケットを着た男だった。
「目立 番です」
軽い口調。
だが、その笑顔はどこか計算高い。
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「三次試験は、シンプル」
目立は、指を鳴らす。
「再生数を稼げ」
ざわり、と空気が揺れる。
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《三次試験》
《クレーンゲームch 生配信》
《各プレイヤーにLIVEカメラを設置》
《視聴者が、
リアルタイムで観戦》
《視聴数を稼いだ
上位50%が通過》
スクリーンに、
無機質な文字が並ぶ。
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「勘違いしないでほしいんだけど」
目立は、肩をすくめる。
「取れるかどうかは、
前提条件」
「プロはさ」
「見られて、選ばれて、
心を掴む仕事なんだよ」
すきは、
小さく息を吸った。
(……完全に、個人戦)
二次試験までの
“二人三脚”は、ここで終わる。
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照明が落ちる。
一人一人の前に、
小型のLIVEカメラが設置されていく。
レンズ。
マイク。
カウントダウン。
スクリーンには、
それぞれの配信画面。
チャット欄が、
流れ始めた。
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「お、始まった!」
「誰から見る?」
「この子かわいい」
文字が、止まらない。
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その瞬間。
一気に視線を集めたのは――
羽澄京子。
(……バズ子)
すきは、
思わずそう呼びそうになって、
飲み込む。
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羽澄は、
カメラを見て、にっこり笑った。
まるで、
最初からそこに“観客”がいるかのように。
手を振る。
軽く、自己紹介。
台選びも、
わざと人の多い場所。
「え、ここ行く?」
「強気だな」
チャットが、
一気に加速する。
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羽澄のプレイは、
派手じゃない。
でも――
止まらない。
失敗しても、
表情が崩れない。
むしろ、
「見せ場」に変える。
コメント数が、
跳ね上がる。
(……これは)
(……完全に、独壇場)
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一方で。
無言でプレイする者。
俯いたままの者。
台としか向き合っていない者。
取れても、
反応が薄い。
チャットは、
すぐ別の配信へ流れていく。
(……残酷だ)
すきは、
自分の画面を見る。
視聴者数は、
多くない。
コメントも、
まばら。
(……どうする)
取るだけじゃ、
足りない。
上手いだけじゃ、
見られない。
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目立は、
その様子を楽しそうに眺めている。
「いいねぇ」
「ここで、
はっきり分かれる」
「向いてる人と、向いてない人」
その言葉に、
誰も反論できなかった。
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配信は、続く。
数字が、
全てを可視化していく。
人気。
注目。
無関心。
すきは、
画面の向こう側を、初めて意識した。
(……これが)
(……プロの世界)
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三次試験の裏側で、
静かに数字が積み上がっていく。
誰にも、
まだ知らされていない評価基準。
それが――
この試験を、
さらに残酷にすることも。
すきは、
知らない。
この時点では、まだ。
キャラ紹介
羽澄京子
・年齢22歳
・通称バズ子
・配信者/インフルエンサー系プレイヤー
・明るく人懐っこいムードメーカー
・場の空気を一瞬で軽くできる天性のトーク力




