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くれげの世界  作者: ぐろ
第三章 プロライセンス編
104/205

第102話 ありがとな

二次試験会場は、

さっきまでより静かだった。


クレーンの音が消え、

残っているのは、人の気配だけ。


重い。


――結果待ちの空気だ。


すきは、

九條の横に立っていた。


さっきまで並んでいたはずなのに、

今は少し距離がある。


(……殴るのは、あと)


そんなことを考えて、

小さく息を吐いた。



威信電子が、前に出る。


相変わらず無表情。

声も、淡々としている。


「二次試験の評価は、

 獲得数ではありません」


一瞬、ざわつく。


「連携」

「判断」

「修正」


「その全てを含めて、

 一つのプレイとして評価しました」


端末が操作される。


スクリーンに、

名前が映り始めた。



《二次試験 通過者》


最初の数名。


――呼ばれた瞬間、

安堵する者。


――呼ばれず、

肩を落とす者。


言葉を失い、

立ち尽くす者。


(……落ちるときは、一瞬)


すきは、

一次試験を思い出す。


数字で落とされた人たち。




「……雪平杏」


名前が呼ばれる。


当然のように、

雪平は一歩前に出た。


隣の金剛も、

小さく頷く。


完成度。

安定感。


(……やっぱり、強い)



「……羽澄京子」


少し間を置いてから、

名前が響く。


京子は、

一瞬だけ目を見開き――

すぐに笑顔を作った。


隣のペアに、

軽く拳を合わせる。


(……“見せる”役割も、

 ちゃんと評価された)



何人か呼ばれたあと。


間。


すきは、

無意識に九條を見る。


九條は、

前だけを見ている。


唇が、

かすかに動く。


(……頼む)


そう言っているように見えた。



「……昏華すき」


名前が呼ばれる。


すきは、

一歩前に出る。


胸が、

少しだけ軽くなる。


すぐには、

横を見ない。



「……九條全」


その名前が続いた。


一瞬、

時間が止まった。


九條の肩が、

わずかに揺れる。


それから――

ぎこちなく、一歩前へ。


(……通った)


安堵と、

驚きと、

まだ整理できない感情。


全部が、

顔に出ている。



威信は、

二人を見て、短く言った。


「同じ盤面を見ていました」


それだけ。


褒め言葉でも、

慰めでもない。


事実の確認。


でも――

それで十分だった。



通過者が、

整列する。


後ろでは、

静かに会場を去る人たち。


声を荒げる者はいない。


ただ、

飲み込めない顔だけが残る。



九條が、

ぽつりと呟いた。


「……なぁ」


すきは、

ちらりと横を見る。


「……ありがとな」


一次試験の時と、

同じ言葉。


でも、

今度は少しだけ違う。


すきは、

小さく息を吐いて答えた。


「……まだですよ」


「二次、通っただけです」


九條は、

一瞬きょとんとして――

それから、悔しそうに笑った。


「……だな」



二次試験は、

終わった。


残ったのは、

上手いからじゃない。


合わせられたから。


すきは、

前を見る。


三次試験。


今度は――

プレイじゃない。


見られるのは、

“中身”

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