第102話 ありがとな
二次試験会場は、
さっきまでより静かだった。
クレーンの音が消え、
残っているのは、人の気配だけ。
重い。
――結果待ちの空気だ。
すきは、
九條の横に立っていた。
さっきまで並んでいたはずなのに、
今は少し距離がある。
(……殴るのは、あと)
そんなことを考えて、
小さく息を吐いた。
⸻
威信電子が、前に出る。
相変わらず無表情。
声も、淡々としている。
「二次試験の評価は、
獲得数ではありません」
一瞬、ざわつく。
「連携」
「判断」
「修正」
「その全てを含めて、
一つのプレイとして評価しました」
端末が操作される。
スクリーンに、
名前が映り始めた。
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《二次試験 通過者》
最初の数名。
――呼ばれた瞬間、
安堵する者。
――呼ばれず、
肩を落とす者。
言葉を失い、
立ち尽くす者。
(……落ちるときは、一瞬)
すきは、
一次試験を思い出す。
数字で落とされた人たち。
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「……雪平杏」
名前が呼ばれる。
当然のように、
雪平は一歩前に出た。
隣の金剛も、
小さく頷く。
完成度。
安定感。
(……やっぱり、強い)
⸻
「……羽澄京子」
少し間を置いてから、
名前が響く。
京子は、
一瞬だけ目を見開き――
すぐに笑顔を作った。
隣のペアに、
軽く拳を合わせる。
(……“見せる”役割も、
ちゃんと評価された)
⸻
何人か呼ばれたあと。
間。
すきは、
無意識に九條を見る。
九條は、
前だけを見ている。
唇が、
かすかに動く。
(……頼む)
そう言っているように見えた。
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「……昏華すき」
名前が呼ばれる。
すきは、
一歩前に出る。
胸が、
少しだけ軽くなる。
すぐには、
横を見ない。
⸻
「……九條全」
その名前が続いた。
一瞬、
時間が止まった。
九條の肩が、
わずかに揺れる。
それから――
ぎこちなく、一歩前へ。
(……通った)
安堵と、
驚きと、
まだ整理できない感情。
全部が、
顔に出ている。
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威信は、
二人を見て、短く言った。
「同じ盤面を見ていました」
それだけ。
褒め言葉でも、
慰めでもない。
事実の確認。
でも――
それで十分だった。
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通過者が、
整列する。
後ろでは、
静かに会場を去る人たち。
声を荒げる者はいない。
ただ、
飲み込めない顔だけが残る。
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九條が、
ぽつりと呟いた。
「……なぁ」
すきは、
ちらりと横を見る。
「……ありがとな」
一次試験の時と、
同じ言葉。
でも、
今度は少しだけ違う。
すきは、
小さく息を吐いて答えた。
「……まだですよ」
「二次、通っただけです」
九條は、
一瞬きょとんとして――
それから、悔しそうに笑った。
「……だな」
⸻
二次試験は、
終わった。
残ったのは、
上手いからじゃない。
合わせられたから。
すきは、
前を見る。
三次試験。
今度は――
プレイじゃない。
見られるのは、
“中身”




