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くれげの世界  作者: ぐろ
第三章 プロライセンス編
103/205

第101話 ドックン

盤面は、静かだった。


横移動。

奥行。

下降。


三つの動作が、

一つの流れになる。


すきが横を作る。

九條が、待つ。


九條が奥を寄せる。

すきは、触らない。


譲るでも、従うでもない。

同じ盤面を見て、

同じ結論に辿り着くだけ。


ドックン


アームが下りる。


噛む。

沈む。


落下。


ゴトン。



二台目。


すきは、横を入れない。


九條が、奥を入れない。


互いに、

“やらない選択”をする。


(……待ち)


(……今じゃない)


同時に、

一歩下がる。


周囲の受験者が、

不思議そうに見る。


だが――

次の瞬間。


すきが横を一ミリ。

九條が奥を一段。


アームが下りる。


掴む。


落下。


ゴトン。



視線が、変わる。


「……今の、

 どっちが指示した?」


誰かが、呟いた。


答えは、ない。



少し離れた場所。


雪平杏と、金剛良樹。


二人は、

ほとんど動かない。


必要な時だけ、

同時に動く。


失敗しない。

やり直さない。


完成度が高い。


(……さすが)


すきは、

一瞬だけ視線を向けて、

すぐ盤面に戻す。



さらに向こう。


羽澄京子のペア。


派手さは抑えられている。


だが、

“見せる”判断が、

ちゃんと残っている。


人が集まる台を、

避けていない。


(……役割、分かってる)



一方で。


操作が噛み合わないペアが、

一つ、また一つ。


横が走る。

奥が遅れる。


下降。


――空振り。


苛立ち。


視線の衝突。


修正が、できない。


言葉が、使えない。


崩れる時は、一瞬だった。



「……残り、五分」


威信電子の声が、

会場に響く。


感情はない。


だが、

目だけが、

すきと九條を追っていた。



最後の台。


箱は、

微妙な位置。


一手で行くか。

二手で整えるか。


すきは、

横に触れない。


九條が、

奥を触れない。


一拍。


同時に、動く。


横。

奥。


下降。


噛む。


沈む。


落下。


ゴトン。



ブザー。


《二次試験、終了》


音が、

やけに近く聞こえた。



すきは、

深く息を吐いた。


九條は、

拳を握ったまま、

前を見ている。


(……殴るのは)


(……あとでいい)


そう思って、

すきは口角を、

ほんの少しだけ上げた。



威信電子が、

記録端末を閉じる。


視線が、

二人に向く。


「……以上です」


それだけ。


だが――

それで十分だった。



二次試験は、

“上手いかどうか”を

測る試験じゃない。


同じ盤面を、

 同じ答えで見られるか。


それを、

確かめる試験だった。


すきは、

次を見据える。


九條は、

初めて、隣を見た。


短い、

目線。


言葉は、

まだ要らない。


二人三脚は、

転ばずに、走り切った。



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