第99話 二人三脚
ステージに立ったのは、
無機質なスーツを着た男だった。
表情が読めない。
声も、感情を感じさせない。
「二次試験、試験官を務めます。
威信電子です」
会場が、静まる。
⸻
「二次試験は――
二人三脚」
スクリーンに、
簡潔なルールが映し出される。
⸻
《二次試験》
《二人一組で行う》
《一人は、横移動操作のみ》
《もう一人は、奥行移動操作のみ》
《台選び、攻め方、修正を含め、
試験開始から終了まで発言禁止》
ざわめき。
「話せないって……」
「無理だろ」
威信は、淡々と続ける。
「プロとして必要なのは、
自分が上手いことではありません」
「相手の思考を読むこと」
「意思を、言葉なしで共有できること」
「それができなければ、
チーム戦では――
足手まといです」
冷たい言葉。
だが、
誰も反論できなかった。
⸻
「……昏華」
呼ばれて、すきは振り向いた。
九條全が、
少し距離を取って立っている。
視線が、泳いでいる。
「……あのさ」
一拍。
「一次試験の時」
言葉に詰まりながら、
九條は続けた。
「……ありがとな」
すきは、
しばらく黙ってから答えた。
「通過してよかったですね」
それは、本音だった。
でも――
視線は、柔らかくない。
「ただし」
すきは、はっきり言う。
「ババアって呼ばれたのは、
許してません」
九條が、ぎくっとする。
「……っ」
「だから」
すきは、
真っ直ぐに九條を見る。
「二次試験で、
借りは返してください」
九條は、
一瞬だけ驚いた顔をして――
それから、強く頷いた。
「あ、当たり前だろ」
不器用な返事。
でも、
逃げなかった。
⸻
《ペアを決めてください》
威信の声が、
会場に響く。
人が、動き出す。
すきの隣に、
九條が立った。
「……よろしく」
「こちらこそ」
短い言葉。
それで、十分だった。
⸻
「おい」
背後から、
大きな声。
「俺を捨てるのか!?」
売田が、
大げさに頭を抱えている。
「せっかくの相棒だろ!」
すきは、
困ったように視線を逸らす。
「試験ですから」
「冷てぇ……」
そう言いながらも、
売田はすでに別の男と並んでいた。
顔なじみの、
年季の入ったクレーンゲーマー。
「まあ、いい」
売田は、肩を回す。
「情報戦は、
誰とでもできる」
⸻
少し離れた場所。
雪平杏の前に、
一人の青年が立っていた。
「金剛良樹です」
落ち着いた声。
「個人大会、
ベスト3に入った」
雪平は、
一瞬だけ考えてから頷く。
「……お願いします」
互いに、余計な言葉はない。
最初から、
呼吸が合っていた。
⸻
さらに向こう。
羽澄京子は、
満面の笑みだった。
「え、ほんとに!?」
「初期からのフォロワーです!」
興奮気味の相手に、
羽澄はウインクする。
「じゃあ、
信じてついてきて」
派手だけど、
軽くはない。
そこにも、
確かな関係があった。
⸻
全員のペアが、
揃う。
威信が、
一歩前に出た。
「二次試験は、
失敗を修正できません」
「ずれたまま進むか」
「信じて任せるか」
「選びなさい」
照明が、落ちる。
《二次試験、開始》
⸻
すきは、
九條の横顔を見る。
緊張している。
でも、逃げていない。
(……やれる)
声は、出せない。
だからこそ――
伝えるしかない。
すきは、
ゆっくりと台に向き直った。
ここからは、
二人で一つ。
言葉のない、
二人三脚が始まる。
キャラ紹介 羽澄京子
通称:バズ子
・年齢:24歳
・活動:配信者/インフルエンサー型プレイヤー
・特徴:映えるプレイ・発信力
・口癖:「映えてますね♡」
⸻
◆キャラクター概要
“見られること”を武器にする現代型プレイヤー。
プレイは魅せるためのもの。
勝利だけではなく、
人の心を動かす瞬間を作り出す。
軽やかな振る舞いの裏で、
評価と数字の世界を生き抜いてきた覚悟を持つ。




