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くれげの世界  作者: ぐろ
第三章 プロライセンス編
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第98話 裏ルール

一次試験会場に、

再び受験者たちが集められた。


さっきまで鳴っていたクレーンの音は、

もうどこにもない。


代わりにあるのは、

妙に乾いた静けさだった。



《一次試験の結果を発表します》


司会の声が、会場に響く。


裏ルールの開示

《本試験は、獲得した景品数ではなく、

 ポイント制で評価されます》


スクリーンが切り替わる。


そこに映し出されたのは、

簡潔な一覧だった。

•橋渡し景品:1ポイント

•ペラ輪景品:5ポイント

•巨大ぬいぐるみ:10ポイント

•高難易度・長箱・確率機後半個体:10ポイント


会場が、ざわつく。


「え……」

「数じゃないのかよ……」


誰かが、呟いた。



《評価基準は、

 プロとして“何を選んだか”です》


司会は、淡々と続ける。


《簡単に取れる景品を

 いくら積み上げても、

 評価は伸びません》


《難易度と、

 それに見合った判断を、

 重視します》


ざわめきが、

一段、重くなる。



すきは、

スクリーンを見つめていた。


(……なるほど)


数を取った。

でも、

全部が高得点じゃない。


売田が、隣で小さく笑う。


「想定内だ。」


「乱獲は、

 “前提条件”だ」



《それでは》


《一次試験通過者を発表します》


《通過基準は――

 ポイント上位50%》


数字が、スクリーンに流れ始める。


名前。

ポイント。

順位。


歓声は、ない。


あるのは、

息を呑む音だけだ。



「……あ」


すきの視界に、

ある名前が映った。


九條全 / 10ポイント


ギリギリの位置。


周囲から、

小さな失笑が漏れる。


「え、10?」

「巨大ぬいぐるみ一個だけかよ」


「効率悪すぎだろ」


九條は、

唇を噛みしめている。


拳が、震えていた。


それでも――

名前の横には、

“通過”の文字。



「……通ったな」


売田が、低く言う。


「奇跡みたいなもんだ」


すきは、

九條を見る。


あの時。

最後の百円。

初めて取れた景品。


(……10ポイント)


それは、

高得点だった。


効率は最悪。

判断も甘い。


でも――

取るべきものを取った。




スクリーンが、

さらに切り替わる。


上位者一覧。


雪平杏。

高ポイントが、並んでいる。


派手さはない。

でも、無駄がない。


羽澄京子も、

しっかりと通過していた。


数と話題性、

どちらも成立させている。


(……強い)


すきは、

素直にそう思った。



自分の名前も、

そこにあった。


ポイントは、

高すぎず、低すぎず。


でも、

すべてに理由がある数字。


売田が、頷く。


「悪くねぇ」


「一次は、

 ちゃんと“プロ向き”だ」



《一次試験通過者は、

 次の二次試験へ進んでください》




会場の空気が、

さらに引き締まる。



九條は、

通過の表示を見つめたまま、

動かなかった。


喜んでいいのか、

分からない表情。


すきは、

その横顔を見て、思う。


(……ここからだ)


一次試験は、

選んだ理由を突きつける試験だった。


でも、

次は違う。


――選び続けられるかどうか。


それが、

試される。


すきは、

静かに息を吸った。


二次試験が、

もう始まっている気がした。

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