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第七話. 光の勇者

 黒い巨人は、地を割るような咆哮を響かせた。

「グオオオオオオオッ!!」


 巨腕が振り下ろされる。一振りで大木もなぎ倒す威力を持つ拳だ。

 勇馬は一歩も退かず――折れたはずの左腕だけでそれを受け止めた。


 衝撃で大地が沈み、土ぼこりを舞い上げる。

 しかし勇馬の表情は歯を食いしばる程度で、光に包まれた体は一歩も退かない。


「グ……オ……?」


 巨人の濁った眼が驚愕に揺れる。

 勇馬は低く呟いた。


「もう……お前の拳は、効かないみたいだぜ」


 苛立つように巨人は反対の拳を叩きつける。

 だがそれすら勇馬は軽くいなして弾き返した。


「グアアアアアッ!!」


 勇馬から距離をとった巨人が咆哮を上げると、濃厚な魔力が渦巻き始める。

 周囲の瓦礫が浮き上がり、大地がひび割れていく。

 両腕に凝縮された黒炎は、まさに災厄そのものだ。


 サニーの顔から血の気が引いた。


「だめっ! この辺一帯が消し飛んじゃう……!」


 巨人は全身を震わせ、絶叫と共に放つ。


「グオオオオオオォォォ――ッ!!!」


 ――《終末黒炎砲》。

 闇の奔流が大地を抉り、触れた建物を一瞬で蒸発させていく。


 勇馬はライトブリンガーを構え、全身に光を宿す。


「フンッ!」


 剣を振り抜いた瞬間、刃から奔る輝きが黒炎を真っ二つに裂いた。

 爆風が背後の木々を吹き飛ばすが、勇馬は無傷で立ち尽くしている。


「グ、グオオオオ……!?」


 巨人は信じられぬとばかりに後退りする。


 怒り狂った巨人は影の中に腕を突っ込み、そこから巨大な黒鉄の斧を引きずり出した。


「グオオオオアアアッ!!!」


 大地を割る勢いで振り下ろされる巨斧。

 勇馬は迎え撃つ。

 光の刃と闇の斧がぶつかり合い、天地を震わせる轟音が響き渡る。


「うおおおおおッ!!」


 渾身の力で振り抜かれたライトブリンガーは、巨斧を握る腕を容赦なく切り裂いた。


「グアアアアアアアアアアアッ!!!」


 黒い巨人は断末魔のような咆哮を上げ、片腕を失ってよろめいた。

 勇馬は深く息を吸い、最後の一撃を放つ。


「これで……終わりだッ!!」


 光の奔流が巨人の身体を貫いた。

 巨体は震え、やがて光に呑まれるように崩壊し、黒い霧となって夜風に散っていった。


 静寂が戻る。

 息を切らす勇馬の耳に、低い呻きが聞こえた。

 振り返ると、闇の中で見ていた黒衣の男が呆然と立ち尽くしていた。


「な、なんだ……あの力は……! 人間が……勇者など……!」


 男は言葉を最後まで吐けぬまま、闇に身を溶かすように姿を消した。


 勇馬は肩で息をしながら、力なく呟いた。


「……終わった……のか……?」


 いつしか勇馬を包んでいた光は消え、その姿は元に戻っていた。

 サニーはその背を見て、翼を震わせながら叫ぶ。


「すごい! すごいよ勇馬! ……ああ、スマホさえ残ってたら、今の決定的瞬間をぜーんぶ撮れたのに!

 絶対バズって、わたし超話題になれたのに……!」


 笑顔で軽口をたたくサニーの瞳には涙が光っていた。




「――すごい戦い方だったわね」


 背後から冷たい声が響いた。

 振り返ると、月明かりに照らされた長身の女性が立っていた。

 黒髪をひとつに束ね、クールな表情を浮かべた美しい顔立ち。

 漆黒のタクティカルジャケットを纏い、肩には魔力を帯びたライフルを担いでいる。


 女性は一歩前に出て、名を名乗った。


「政府の対異形特務班、神崎瞳。

 ……ライフルの照準は、さっきの巨人じゃなくて、あんたたちに合わせることもできたのよ」

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