第六話. 命を懸けた決断
轟音と共に大地が揺れる。
黒い巨人の拳が勇馬を直撃し、彼の体は地面に叩きつけられた。
「ぐあっ……!」
左腕から鈍い音が響き、激痛が走る。
骨が折れたのは明らかだった。
勇馬は血を吐きながら必死に起き上がるが、巨人の影が覆いかぶさる。
「勇馬!」
サニーの叫びは届かない。
彼女の小さな身体は巨人から認識されることすらなく、ただ必死にスマホを構えるしかなかった。
サニーは震える指でスマホを操作した。
「鑑定!」
サニーは小さく唱えながらスマホのカメラを起動し、黒い巨人にかざす。
瞬間、画面に無慈悲な文字が浮かび上がった。
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【鑑定結果】闇の王 ヴァルグ=ザール
レベル:78
脅威度:S
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「……だめだ。このままじゃ勇馬は……!」
サニーの心臓が早鐘を打つ。
唯一の可能性――【レベルブースト】。
だがそれを使えば、スマホは確実に壊れる。
イイネも、写真も、これまで積み上げた全ての“証”が消える。
サニーは唇を噛んだ。
「でも、そんなこと……」
黒い巨人が再び勇馬を蹴り飛ばし、血が舞う。
勇馬の体は石畳に叩きつけられ、もう立ち上がれそうになかった。
呼吸は乱れ、意識は朦朧とし、命が砂のように零れ落ちていく。
「うーん、うーん……」
サニーの瞳に涙が浮かぶ。
「あー!、もう、しょうがないわねー!」
スマホを両手で抱きしめ、サニーは決断した。
「――【レベルブースト】ッ!」
閃光が走り、画面に浮かぶ数字が急上昇していく。
【Lv.5 → Lv.45 → Lv.123 → Lv.347 → Lv.512……】
上がるたびに勇馬の体が光に包まれ、折れた左腕が修復されていく。
筋肉が締まり、血が止まり、呼吸が安定していく。
【Lv.731 → Lv.890 → Lv.999!】
最後の表示が点滅すると同時に、スマホの画面が火花を散らして砕け散った。
サニーの宝物は炎に包まれ、光が勇馬の体に吸い込まれていく。
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強い光が収まると白銀の輝きに包まれた勇馬が、立ち上がった。
その姿はまるで神話から抜け出した“勇者”の再来だった。
ライトブリンガーは烈々と輝き、勇馬の瞳に揺るぎない光が宿る。
「……これが……俺……?」
彼は自らの拳を握りしめ、体の奥底から湧き上がる力に驚愕する。
遠くから儀式を見守っていた黒衣の男が、声を漏らした。
「な……なんだ、あの光……!?
ただの人間が……どうして……?」
謎の人物は突如として現れた光の戦士によって押し返されつつある事実に戦慄した。
「馬鹿な……計算が狂った……! いったい何者だ……あいつは……!」
男の額に冷や汗が伝う。だが彼の目にはサニーの姿は映らない。
勇馬を変貌させた存在など知る由もなく、ただ恐怖だけが募っていく。
サニーは砕けたスマホの欠片を抱きしめ、泣き笑いを浮かべた。
「やっちゃえ勇馬!……あんたはいま――勇者なんだよ!」
勇馬は剣を構え、黒い巨人を睨み据える。
「行くぞ……! ここで終わらせる!」




