第五話. 光の剣
影の腕がしなり、鞭のように勇馬を襲った。
かわす間もなく、体は地面に叩きつけられる。
肺から息が抜け、視界が白く弾けた。
「がっ……!」
土の冷たさと、背骨に走る鈍痛。
その上からさらに影が絡みつき、胸と首を締め上げてくる。
まるで生きた蛇に全身を捕らえられたようだ。
指先が痺れ、銃を握る力すら奪われていく。
「勇馬っ!」
サニーの叫びが聞こえるが、声は遠い。
このままでは――殺される。
必死に右腕を動かし、勇馬は銃口を影に突きつけて引き金を引いた。
銃声が林に轟き、弾丸が黒い肉体を貫く。
だが、影は呻き声をあげることもなく、瞬く間に穴を塞いでいった。
「効かねえ……!」
喉に食い込む締め付け。呼吸が途切れる。
目の前が暗転しかけたその時――。
「待って……あーっ、そうだ! 思い出した!」
サニーはポシェットを漁り、手のひら大の光を取り出すと光を勇馬に向かって投擲した。
勇馬がキャッチすると光は淡く輝く片手剣に変化した。
古代文字が刻まれた刃は朝日のような光を帯びている。
同時に金色の魔法陣が彼を包み、体の奥底に熱が満ちていく。
「私の世界で勇者が愛用していた伝説の剣“ライトブリンガー”よ!」
「その剣なら、この程度の相手は敵じゃないから! ・・・たぶん!」
勇馬は最後の力を振り絞り、剣を影に突き立てた。
光が爆ぜ、黒い靄が悲鳴のような音を立てて吹き飛ぶ。
締め付けが解け、呼吸が戻る。
「はぁ……っ、はぁ……!」
勇馬は立ち上がり、ライトブリンガーを構える。
さっきまで圧倒されていた影が、今は怯えるように後ずさっていた。
「……行ける。これなら――」
「ふっふーん、そうでしょー!」
サニーが得意げに羽をぱたつかせて笑う。
ズバッ!勇馬は水晶から次々に召喚される影の魔獣をライトブリンガーで切り伏せていた。
だがその時。
台座に置かれた黒い水晶が、ひときわ強い光を放った。
いままでの影とは比べ物にならないほど濃く、重たい気配が溢れ出す。
「グオオオオー」
光の渦の中から現れたのは、獣のような脚、硬い鱗に覆われた腕、そしてぎらつく八つの眼。
異形の巨人の放つ地鳴りのような唸り声が林を震わせた。
「ちょ、ちょっと……何よあれ!今のより何倍も強そうなんだけど!」
「……嘘だろ」
巨人が動くたびに地響きが勇馬に伝わる。
勇馬は汗ばむ手でライトブリンガーを握り直した。
新たな脅威が、ゆっくりとこちらに顔を向ける。
次の瞬間、咆哮と共に巨人が襲いかかる。
勇馬は剣を構え、歯を食いしばった。




