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第十一話. 這い寄るもの

 廊下の奥から、ぞわりとした気配が迫ってくる。

 湿った床を這うような音が近づき、かすかなうめき声が響いた。


「――あぁぁ……」


 明美は瞳にしがみつき、震える声を漏らす。


「な、なにか来る……!」


 やがて闇から姿を現したのは――髪を振り乱し、四肢を折り曲げながら床を這う女性のような異形。

 白目を失った穴のような瞳、引き裂かれた口から滴る黒い液体。

 爪を床に立て、ぎぃぃ、と軋ませながら這い寄ってくる。


挿絵(By みてみん)


「ひぃっ……!」


 明美が青ざめる。

 サニーは興奮しながらスマホを構えた。


「はい撮れ高きました! これ映ってるかなー!? やっぱりもってるわー!」


「なに撮ってんのよ!」

 瞳が怒鳴り、ライフルを構える。


 異形が咆哮し、四つん這いで突進してくる。

 瞳は反射的に魔力弾を放ち、青白い光の筋が異形を貫通する。


 黒い肉がどろりと再生し、異形は呻き声をあげて這い進む。

 速度が増し、ザザザッと床を滑るように迫ってくる。


「な、なんで効かないのよ……!」

 瞳の顔色がみるみる蒼白になる。


 震える手でライフルを握りしめるが、再び引き金を引く勇気が出ない。

 サニーが目を細め、にやりと笑う。


「ふふん、気づいちゃった! 神崎さん、実は“お化け”苦手でしょ?」


「ち、違うっ……ただ、こういうのは……見た目がダメなのよ!」


 普段冷徹な彼女のギャップに、サニーは思わず笑い転げる。


「サニー! 撮ってないで助け――」


 言いかけた瞳は明美の手を引き、踵を返した。


「逃げるわよっ!」


 瞳は明美の手を強引に引き、廊下をダッシュした。


「えっ!? ちょ、ちょっと!」


 明美は引きずられるようにして廊下を駆け出す。


 異形が速度を上げ、背後から床を擦る音が迫る。

 瞳の耳元でうめくような声がまとわりつき、背筋を凍らせる。


 ドンッ!

 ズザザザー!


 瞳の足が瓦礫に引っ掛かり、派手に転んだ。


「きゃっ!」


 明美も巻き込まれて床に倒れ込む。

 這う影が両手を広げ、二人にのしかかろうとした――。


「ひぃー…!」


 サニーが宙を飛び、影の頭上からスマホを掲げる。


「あーもうっ、しょうがないなー」

「夢の力で悪霊 た・い・さ・ん! ひっさーつ!《シャイニング・フラッシュ》!」


 Vtuber夢見サニーになりきったサニーのスマホが輝き、

 ライトから魔力の篭った強烈な閃光が走った。

 闇を切り裂く白銀の光に、影の女は絶叫を上げて後退し

 呻き声を残して闇の奥へと退散した。


「はぁ……助かった……」


 瞳は息を荒らげ、ライフルを抱き締めるように震えていた。

 その横でサニーはスマホを掲げ、にんまり笑う。


「じゃじゃーん! 見て見て! 心霊写真バッチリ撮れた! これサムネにしたら絶対バズる!」


 画面には、今の閃光に映し出された異形の姿がくっきり残っていた。

 それを覗き込んだ明美の表情が固まる。


 その影の衣服に――見覚えのある形があった。


「これ……うちの学校の制服だ……!」

「……もしかして」


「待ちなさい! 一人で行くのは危険よ!」


 瞳が手を伸ばすが、明美は振り切って走り出した。


「私は行く! 友達を……助けなきゃ!」


「もうっ……!」

 瞳は渋々後を追う。


 明美は廊下の奥へ駆け抜け、ふと立ち止まる。

 古びた棚が壁に打ち付けられていたが、その隙間に妙な切れ目がある。


 力いっぱい押しのけると、隠された扉が現れた。


 ぎぃ……。


 扉を開くと、地下へと続く石の階段が姿を現す。


 冷たい風が吹き上がり、底知れぬ闇が待ち構えていた。


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