公女の執着
誤字脱字日本語がおかしいなど気にしないでいただけると嬉しいです。
男爵は中世ヨーロッパの貴族の階級です。
ご注意ください。
今回は結構長いです。
私は、実家に帰ってきた。
そして、母に聞いた。
「私とファニーの婚約が破棄されたとはどういうこと
ですか!?」
「シルヴァン…。私の愛しい息子。
ごめんなさい。私達では、無理なのよ…」
「どういうことですか?説明してください!!」
「あなたは、公女様に見初められたのよ。」
「えっ…」
信じられないような事実に思わず目を見開いた。
「私達のような男爵家では公爵家の意向にはさかられ
ない。それは貴方にもわかっているでしょう!?」
「ですが、私のファニーを愛する気持ちはどうしろ
というのですか!?」
「ステファニーちゃんよりアリス公女様の方が
可愛らしいじゃない。」
「はぁ?」
「それに、アリス公女様は働きにも出ていないから
家の事に集中してくれるわ!!」
「私は、婚約破棄に同意した覚えはありません!!」
「そこらへんは公女様がやってくれたわ。
ステファニーちゃんも同意した。」
「そんな…。」
ステファニーは私を見捨てたのか…?
「貴方はもう少しで北の地に行かなければならない。
そして、結婚式を挙げるのよ!!
もし、ステファニーちゃんに別れを告げたいなら
今度王宮で行われる舞踏会でしてきなさい。」
「…はい。」
私は、悔しさで指を握りしめた。
私はあれから父と母に軟禁される日々を過ごしていた。
そのせいか、ストレスがたまり日に日に食事も喉を通らなくなった。
そして、ファニーとの思い出に縋るようになった。
だが、ある日父と母に呼び出された。
客間に行くとそこにはアリス公女がいた。
「あら、お久しぶりです。ヴァン」
「お久しぶりです。」
私は、愛想笑みを絞り出した。
「少し痩せられましたか?
北の地は騎士が多いのでたくさん食べて体を作って
くださいね。」
「えぇ、もちろん」
私の代わりに母が愛想よく答えた。
「それより公女様。結婚式はどうしますか?」
「公女様だなんて別にアリスで良いですよお義父さん そうですね…私の地元に教会があって、
そこで行いたいのですがよろしいですか?」
「もちろんいいですよ。息子もそこでいいと言ってい
るので」
「ありがとうございます。お義母さん」
「では、また書類を送っておきますわね」
「えぇ、ありがとうございます。」
「それより、ヴァンと2人きりにしてくれませんか?
久しぶりに話したくて…」
「あぁ。もちろんです。空気が読めず申し訳ない」
父と母と使用人が出ていき2人きりとなった。
「ヴァン、私あなたのこと愛しております。
伝えずにごめんなさい」
「…」
すぐにでもこの女のことなんて捨ててファニーの元へ行きたい。けれど、この女には逆らえない。
逆らえば、我が家はどうなるかわからない。
「ヴァン…。ごめんなさい。急にステファニー様と婚 約破棄をさせてしまって。戸惑っていますよね」
「…」
「でも、ステファニー様より私の方が上ですよ。
容姿も家柄も。それに、私は仕事なんてせずあなた
を支え続けるつもりですから」
その時私は思わず本音を溢してしまった。
「ファニーより上なんていない。
ファニーのあの可愛らしい笑顔がみたい。
一目でいいから会いたい。」
すると、公女様の雰囲気が変わった。
「そうですか。貴方は私より彼女を愛しているんです
ね…」
「ちっ違…」
「大丈夫です。これからは私がどんどん塗り替えてい
ってあげます。
お揃いの茶器もピンクの薔薇も結婚の約束も
全部全部。」
「何でそれを…」
「もっと言って欲しいですか?
貴方とステファニー様の思い出。
貴方にとっては大切なんですよね?」
「っ…」
「私にとってはこの貧乏くさいカップも貴方にとって
は大切なんでしょう?
ステファニー様からの贈り物だものね」
そう言って公女様はカップを手に取り床に叩きつけた。その衝撃でカップは粉々に砕け散った。
「あら、貴方どうしてカップを眺めているの?
愛する私が怪我をしていないか確認するのが
先じゃなくて?」
「ファニー…」
「そんなに好きなんですね。ステファニー様のこと。
もし、もしも貴方の愛が私に向かないのなら
ステファニー様には不慮の事故に遭ってもらわない
といけないかもしれません。」
「不慮の事故…?」
「えぇ。魔棟ではよくあるらしいですよ。
血筋だけで選ばれた職員が間違った実験をして
周りの何人かが死ぬとかね」
「まっ待ってくれ!ファニーだけは…」
「じゃあ、私を愛してください。私だけを。
そうすればステファニー様には手を出しません」
「…わかった」
彼女への愛などなかった。
けれど、これでファニーが守られるのなら…。
「ものわかりが良くて助かります!
早くお座りになって。スコーンでも食べましょう」
そう言って彼女は聖母のように笑った。
その微笑みは美しく狂気を孕んだリンドウのようだった。
「えぇ。」
これから私の地獄が始まった。
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