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Episode1-1 追放聖女

「ヘレン、魔族幇助の罪で貴方を追放とする。もう二度とこの街の敷居を跨ぐな」


「待って下さい!それは間違いです!彼女は魔族ではっ!」


「既に判決は出ている。さっさと出ていけ」



 この日、ヘレンは無実の罪でアルファニア(この街)を追放された。


 冤罪の理由は魔族の幇助。つまり魔族をこの街に引き入れようとしたということだ。


 ヘレンは断じてそんなことはやっていない。

 世界的に差別されている人種、ダリア人の女の子を助けただけだ。ただこの人達が、魔族に似ているから。それだけの理由で差別され、恐れられている。


 恐らく…いや十中八九誤解という訳では無いだろう。


 ヘレンは平民出身の聖女だった。聖女になることが出来るのは貴族だけで、平民が聖女に選ばれるなんて異例の事態だった。


 そしてヘレンは美しかった。金髪碧目に聖女服を纏う姿はまるで女神の様で、平民も、貴族も、王族すら魅了し、何度も告白された。


 当然、それが気に食わない人間もいた。貴族の女達から日々虐めを受けていた。


 殴る蹴るは当たり前、陰口なんて日常茶飯事で、バケツで水を掛けられた跡を必死に掃除し、終わった頃に再び現れて雑巾の水を飲まされたこともあった。


 服が無かったこともあったし、祈りの途中にゴミを投げられたこともあった。一番酷かったのは…崖から突き落とされたことか。


 そこそこ高い崖で背中を押され、そのまま落下した。なんとか木で衝撃を吸収したけど、それでも右足と左腕は骨折していた。切り傷も無数に付いていた。


 それでも、虐めがバレることは無かった。聖女だから、治癒魔法で傷を治せる。治さないでおこうか迷ったこともあったが、痛くて我慢できなかった。


 崖から突き落とされてからは傷の出来る虐めは無くなった。流石にやばいと気づいたのか…変わりに物を捨てられたり、根も葉もない噂を流された。聖女ヘレンは新人を虐めている。聖女ヘレンは男と遊び耽っている。聖女ヘレンは人を殺したことがある。


 そんな噂を信じたのか、面倒事に関わりたくなかったのか、私に話かける人は居なくなった。


 そんな現状を耐えて、耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて

 耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて




 結果が追放だ。



 既に街から離れ、森を歩いている。


 結局誰も助けてくれなかった。他の聖女と呼ばれる人達も、聖人と呼ばれる偉い人達も、見習いも雑用も街の住民も皆…誰一人私の為に動くことは無かった。

 初めはあんなに告白してきた癖に。


 私の親は早くに亡くなったから、頼れる人は居なかった。ずっと一人で、孤独で…


 そして最後、冤罪で追放された。私から人を、環境を奪った奴らは…私が故郷に居る権利まで奪った。


 残った物は何もない。物は全て処分されてるだろう。人からの冷たい視線が突き刺さる。男達からの下衆な視線も、私の無駄にデカい胸に寄せられている。


 いや、残った物はあった。私が助けたせいで一緒に追放された人族の女の子。年齢は目算12歳くらいか。



「ねぇ君、私はヘレンって言うの。貴方のお名前は何て言うのかな?」


「ヘレン…お姉ちゃん?えっと…シャーロット…」


「シャーロットかぁ…いい名前だねぇ。じゃあシャルって呼んでいい?」


「! うんっ!良いよ!」



 こんなに可愛い子を差別するなんて…


 ダリア人が魔族に似ていると揶揄される理由には、頭にツノの様なコブがあり、魔力を多く持っているということが挙げられる。


 魔族はほとんどの場合、ツノと羽を持っている。また魔法に長けており、魔法での攻撃は殆どに耐性を持っている。物理で倒さない限り、大規模な魔法を撃ち返されて終わりだ。


 そんな魔族に効くのが私達聖女の魔法。聖魔法と呼ばれる特有の魔法は、魔法耐性を無視して身体に届き、精神から破壊《浄化》する。


 試しにシャルに掛けてみたが、苦しむ様子はなかった。だからシャルは魔族じゃなくて、ダリア人だとすぐに分かる…はずなのだが、それを知った上で追放されたと言うことは、多分裁判官は買収されていたのだろう。


 ………さて、ここまで冷静に話しているが、私は今とても憤っている。私が何をしたと言うのか。真面目に聖女として頑張って、いじめにも耐えて、両親が死んだことすら悲しむ暇も無かったのに…追放。


 そしてシャル。この子も私と同じ、何もしていないのに差別され、迫害され、虐められた。きっと辛かっただろう。苦しかっただろう。まだ子供と言える年齢で、大人達から罵声を浴びせられるのはどれだけ苦痛だっただろう。


 それでも、私へのこれまでの仕打ちで無駄に鍛えられた精神のせいで、涙一つ出てこない。シャルの為に涙を流したいのに、身体がそれを拒否する。自分を殴ってやりたい気分だ。



「ヘレンお姉ちゃん?」


「ん、ごめんね。ちょっと考えてた。」


「…ごめんなさい。」



 シャルが話しかけてきた、と思ったら、なぜか謝られた。なんで謝るんだろう。君が追放されたのは私のせいなのに。



「なんで謝るの?私が全部悪いんだから、君が謝ることなんて何もないよ。」


「…でも、すぐ謝らないと怒られるから…」


「─ッ!!」



 嗚呼、本当にこの世界は嫌になる。こんな小さな女の子が他人の顔色を伺ってビクビクして生きて、すぐに謝らないと怒る?どこまで人間を舐め腐っているのだろう。



 ──シャルは、私が守ろう。



 そう決意した。これ以上シャルに絶望させたくない。シャルの障害になるならなんだって破壊する。その為だけに私の命は使う。



『やほ。遂に決めたんだ。やっぱりこっちを選ぶなら最初から選んでおけば良かったんだよ〜』



 頭の中に声が響く。…そうだ、私には昔から助けてくれる、味方が居たんだ。



(…うん。ごめんね神様、結構待たせて。貴方はいつも私のこと気にかけてくれてたのに…)



 この声の主は神様。無償の愛を司る神様で、人間界ではアガペーって呼ばれてる。


 そもそもこの世界には8種類の、愛を司る神様を信仰する宗教があって───ってのは、まぁ難しい話になるから、今のところは割愛しておく。


 私は生まれつき、神様の声が聴こえた。いっぱい話して、仲良くなって…聖魔法もフルパワーで使えるくらい強くしてくれた。


 そして私がいつも虐められているとき、言ってくれた。



『さっさと殺して次に行こう?…いいかいヘレン、《《死は救済》》なんだよ。どれだけ下賤な人間が祈ったところで、神様は誰も見てない。そろそろ目障りなんだよね、僕の愛しいヘレンを虐めるこの世界が。』


「そうだね、私もそろそろ限界だよ。毎日毎日人の嫌な部分ばかり見て、それでもなんとか好きになろうとした。でも無理だった。私が期待するだけ、奴らはつけあがり、侮辱し、虐めてくる。」


「お姉ちゃん?」


「シャル。貴方は手伝ってくれる?」


「お姉ちゃんがやることならなんでも手伝うよ!」


「それが人を殺すことでも?」


「…?人を殺すのは普通でしょ?だって村は焼かれて、全員死んだし。」



 ──はは、どこまでバカにすれば気が済むんだ。…もう容赦はしない。



『そろそろ始めようか。』





「『《《人族を終わらせる死の救済をっ!!》》』」





 かくして、聖女を筆頭とする世界を滅亡に導く組織が結成された。


 組織名は〈希望〉〈あなたの死を望む〉

 を花言葉に持つ【スノードロップ】


 そして聖女の元に集う狂人達を中心に、世界は震撼し、激動の時代を迎えることとなる。





どうも、ゆーれいです!


カクヨムで連載している作品を後追いで投稿していきます!と言っても今はぜんぜん書いてないんですけどね!


初心者なので拙い文章ですが、ぜひぜひ読んで行って下さい!


それではまた

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