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火吹きトカゲ?


「火吹きトカゲ?」

 わたしが聞き返すと、レイくんは頷いた。

「そう。口から火を吹く。」

「え!?」

「火なんて吹かれたら、ここ一帯火事になるぞ!」

 アキラくんも焦っている。この景色がなくなってしまうなんて…。

「そんなの絶対だめだよ!」

「うん。」

「だな!」

 どんどんこちらに近づいてきている。

「…狙われている?」

 レイくんがポツリと呟く。

「たしかに、迷わずこっちに来てるよな?」

 アキラくんも同意する。トカゲの様子を注意深く3人で観察していると、トカゲの口がカパッと開いた。口の中に火が集まってくる。

「火を吹こうとしてる!」

 アキラくんの声に、レイくんがすぐに杖をトカゲに向けた。杖の先から風の刃がトカゲに向かって放たれる。トカゲがよろけて、火は霧散した。

「よしっ!」

 アキラくんはガッツポーズをする。レイくんは険しい顔のままだ。

「…硬い。魔法が通らない。」

「たしかに。レイの魔法を受けても傷一つついてないな。」

「うん。…ほんとにトカゲ?」

「トカゲ以外だとしたら…形的にはドラゴンとか。」

「小さ過ぎるけど。」

 2人は会話しながらも油断なく周りを見渡している。わたしは2人の会話を聞いているだけだった。まだ全然魔法のコントロールが出来ないから、足手まといだ。せめて邪魔にならないようにしないと。

「そこだ!」

 アキラくんの構えた杖の先から雷撃が迸り、レイくんもそれに合わせて風の魔法を放つ。

「ギュ!」

 2人の攻撃を受けたトカゲから、苦しそうな鳴き声が聞こえた。途端、レイくんとアキラくんは顔を見合わせた。

「この鳴き声は…。」

「やっぱりドラゴンなのか!?」

「ミニドラゴン…?」

 2人で深刻そうな顔をしている。わたしでもドラゴンについては少し耳にしたことがあった。強靭な肉体を持ち、鋭い牙と爪が生えていて、そしてドラゴンの吹く火は当たったもの全てを燃え尽くすと。見つけたら絶対に近づいてはならない生物だと。でももう100年近くその存在は見られていないのではなかったか。レイくんはしばらく考える素ぶりをしていたが、アキラくんに目線を向けた。

「…時間稼ぎを頼める?」

「やってやるぜ!!」

「牙と爪に気をつけて。火も吹かせちゃダメだ。」

「分かってる!なるべく距離取る!」

 レイくんは大きい魔法を使おうと呪文を唱え始めている。アキラくんはその1歩前に出てトカゲと対峙した。しかし…。

「ビクともしないな。」

 アキラくんは手数で勝負することにしたのか、いくつも魔法を放つが、ミニドラゴンには効いていないようだった。レイくんが魔法を準備していることに気付くと、そちらに向かっていった。アキラくんの魔法で止められそうもない。

「くそっ!レイ!!!」

 アキラくんの声で、レイくんは唱えている途中だったはずだが、その魔法を放った。ミニドラゴンの体に傷を付け、血がはねる。

「…何が起きたの??」

「レイは唱え終わってない魔法でも途中で発動させることが出来る。威力は少し落ちるけど。なかなか出来る芸当じゃない。…天才だよ。」

 アキラくんが教えてくれた。その間にも、ミニドラゴンは怒った様子で近付いて来る。

「くっ!」

 アキラくんも魔法で応戦しているが、押されている。レイくんの魔法を唱え切る時間を稼ぐのは難しそうだ。それでも少しずつミニドラゴンにダメージを与えられてはいるが、アキラくんとレイくんの消耗の方が激しそうだ。…とうとうアキラくんは地面に膝をつき、レイくんも肩で息をしている。ミニドラゴンが口を開け、火が集まって来る。

「マユ、走って。」

 レイくんは前を見たまま、わたしに告げる。

「…え?」

「早く!!」

 レイくんのこんな大きい声初めて聞いた。アキラくんも叫んでいる。

「ここから早く離れろ!!!」

 それでもわたしの身体は動かなかった。2人を置いて、ここから離れるなんて…。怖くなって身体が強張る。

「マユ!!」

レイくんがわたしの名前を呼んだ。

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