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62.疾風迅雷

戦闘描写……無理……orz

でも……自分の中では過去一自信があるので……お手柔らかに笑

 約束の時間にギルドに顔を出すと、ギルドカウンターの後ろの通路から直結している訓練場へと通された。まさかギルド内にこんなところがあったとは。てっきりどこか屋外へ移動するのだと思っていた僕は、一瞬呆気にとられたあと、物珍しさから訓練場内をぐるっと見渡した。練習用なのか、木製の各種武器が壁一面に立てかけられている。随分本格的なようだ。


 訓練場は上から見学出来る作りのようで、見渡す限り人で埋まっている。なんだかやりにくいと感じるのは僕だけだろうか。


「それでは試験を始めます。今回の対戦相手は近接武器使いが最も苦手とする遠距離武器の使い手。とは言え蓮華さんは魔法も使えますし、余り苦戦しないかもしれませんね」


「怪我をした場合・させた場合はどうなりますか?」


「試験官はAランクですし、ポーション類完備の上、神聖魔法が使えるベテラン冒険者の準備も万全です。部位切断迄でしたら対応可能ですので安心してください」


 なるほど、峰打ちを狙わずとも良いみたい。Aランクなら僕が真剣に戦っても軽くいなしてくれるだろうし安心だな。


「蓮華さんはテイマーでもありますので、そちらのスケルトンとの共闘も問題ありません。試験の終了はどちらかが戦闘不能もしくは審判である私の判断で声かけいたします。それでは、準備は良いですか?」


「はい、大丈夫です」


「お手柔らかに頼むよ。遠距離の利点もスケルトンくんと君の魔法に潰されそうだし、まるで勝てるビジョンが見えてこない」


 と試験官の男性。いやいや、謙遜しすぎでしょう、同じ遠距離のヴィオラと戦っても僕は勝てる気がしないんだから。


「それでは試験開始!」


 審判の開始合図と共に、僕目がけて矢を放つ試験官。けれどそれはアインの盾によって見事に弾かれた。まあ確かにこれだけ大きな盾なら大抵の矢はブロック出来るだろう。けれど、相手はAランク冒険者。当然アインの弱点もすぐに見破る筈。


 アインとの連携と言うのは、実はちょっと難しい。先日のヤテカルのような知能が低いモンスター相手であればアインがヘイトを集めている間に簡単に背後に回れるけれど、人間相手ではそうはいかない。最初から僕を狙い撃ちにしてくるだろうから、いかにしてアインが間に割って入るかが課題となってくる。けれど、僕の方も主力武器は太刀だから、どうしても相手に近付くにはアインに守られてばかりではいられない。結果として僕と相手の一騎打ちの様相になってしまい、アインは盾としての役目を全う出来なくなってしまう訳だ。


 アインと本気で連携を取るのであれば、僕は太刀ではなくて魔法で応戦すべき。でも動きの素早い弓術士相手に魔法を当てることは、とてもじゃないけれど無理。僕の命中力の低さは目を見張るものがあるからね!


 それにあの試験官は、多分純粋な弓術士ではない筈。あれだけの素早さは、恐らく魔法も併用している。それが身体強化に特化しているのか、そのうち攻撃手段として魔法も使ってくるのかが分からない現状、むやみに突っ込むのは悪手だと思う。


 「遠距離武器の使い手」とは言っていたけれど、遠距離攻撃しか行わないとは言っていない。近付いた瞬間に魔法に切り替えて迎撃される可能性は十分にある。


 さて、どうしたものかな? 先程から僕が動かないから、試験官は様子見の為に矢を何度か射てきている。僕がその場に留まっているからアインも動かずに済んでいるけれど、僕が動けばアインの弱点である足の遅さにはすぐに気付いてしまうよね。


 悪手と考えたけれど、それは動きを視認された場合。とりあえず、まだ向こうが僕の速度を知らない今の内に、可能な限り早い速度で近付いてみようか。


 ——金剛止水流早駆術、疾風迅雷!


 昨日、ヴィオラと別れた後に師匠(シモン)に身体強化の方法を軽く学んでおいて良かった。防御や攻撃向きの身体強化はまだ実戦に用いるのは無理だけれど、移動速度を向上させる為の身体強化に関してはだいぶ様になっている気がする。本来であれば処理が追いつかずに苦労する筈の視覚と脳の認識が、吸血鬼特有の感覚のお陰ですんなり処理出来ているからだと思う。


 突然視界から消えた僕に、試験官は慌てたように周りを見渡していたが、それも一瞬。すぐに自分の周りをぐるりと囲むように炎の壁を出現させ、僕の接近を阻む方向に切り替えたようだ。けれど残念。僕はもう壁の内側、試験官の眼前迄迫っている。


 ううん、即死じゃなきゃ良いんだよね。これだけ接近してしまえば、まともな反撃を喰らって僕がやられる可能性もあるので、正直手加減は難しい。


 ——金剛止水流抜刀術、構太刀(かまいたち)


 二撃一対の技を放つも、手応えはなかった。視認出来ない相手の、しかも抜刀術と言う速さに特化した攻撃をこの距離で防御出来るとはやはりAランク冒険者と言うのは強いらしい。


「いやあ、まさか魔法を発動させる前に既に懐に潜り込まれていたとはね。参った参った」


「僕の方こそ、直前迄視認されていなかったのに、まさかこうもやすやすと受け止められるとは思っていませんでしたよ」


 お互いの刃をがっつり突き合わせた状態で、僕達はにこやかに会話をする。僕の抜刀術の風圧を感じた瞬間に懐から取り出した短剣で受け止めるとは、遠距離武器の使い手とは何なのかと問いたい程だ。


 西洋短剣相手にいつまでも日本刀で力比べをしていては若干不利なので、後ろへ飛び退き、そのまま背面から炎の壁に突っ込む。試験官もまさか着の身着のまま炎の中に突っ込むとは思っていなかったのだろう、僕に追撃もせずにそのまま呆けている。


 その一瞬の隙を、見逃す程僕は若くない。抜刀術を行った直後に短剣で抑えられたので、僕の右手は未だに左下から右上へと逆袈裟切りを行う姿勢のまま。このまま、炎の壁の外側から、右上へと刀を切り上げ……。


鎌鼬(かまいたち)!」


 太刀による風圧をより鋭く、早く、遠くへ届くようにイメージした風魔法。太刀筋と言う物理的なガイドがある分、命中力に劣る僕の魔法でも確実に相手目がけて放てる筈だ。


 恐らく、試験官は向こう側の炎の壁を打ち消して逃げる筈。でも忘れてはいないだろうか。僕は一人で戦ってはいないのですよ。


「うわ!」


 さすがにそう何度も事前の準備なしの炎の壁に突っ込むことは出来ない——いくら金属糸が編み込んであろうと、布は燃えそうで怖い——ので、手早く全身を水魔法でずぶ濡れにしてから突っ込む。炎の壁を避けて回り込めば、折角アインが作ってくれた隙も台無しになってしまうだろう。


 予想通り、向こうへと逃げ込んだ試験官をアインが槍で迎撃していたようだ。試験官の脇腹からは血が溢れている。その様子に僕は、こちらに背を向けている試験官の、左脇腹——アインが槍で突いた箇所——に容赦なく追撃を叩き込む。試験と言えど、Aランク冒険者に手加減なんてものはいたしません。


 僕の攻撃の気配に気づき、試験官はこちらを振り向こうとするものの、アインの攻撃も止まる気配はない。


 僕とアイン、どちらかの攻撃は確実に当たる。そうなれば左脇腹は致命傷を負うことになり、続行は不可能だろう。


「そこまで!」


 僕と同じ結論に至ったのか、審判の鋭い声が訓練場内に響いた。


「救護班はすぐさま治療を始めて下さい」


 審判は控えていた神聖魔法の使い手やポーションを持った人々に命じてから、僕に向き直った。


「おめでとうございます、蓮華さん。貴方はDランクに昇格しました。実力だけであればAランクに匹敵するでしょう。ですが、ギルドの規則上、残念ながらCランク以上には一定数以上の依頼達成と礼儀作法が必要となっていますので……」


「分かりました。こんなにすぐにDランクに上がれるとも思っていませんでしたし、十分です」


「いやあ……本当に強い。正直、仮にもAランクを名乗っているし、こんなに無様に負けるつもりはなかったんだけど、参ったな。まさか炎の壁が出来る前に接近されているとも思わなかったし、何の準備もなく炎に突っ込むなんて。それに何より、こっちが失念していたとはいえ、声による指示もなしにテイミング対象と意思の疎通を図り、待ち伏せありきの作戦を立てていたとは……判断力の速さ、そして相手の傷口を狙う冷酷さ。全てにおいて合格点だ。まして君は魔法らしい魔法を使わなかったしな」


 横になって治療を受けながらも僕を評価してくれる試験官。しかし褒められているのだろうか、これは?


「褒められている、で良いんですよね?」


「ははは、勿論。ランクが高くなれば高くなる程、人相手の依頼なんかも舞い込むようになる。例えば、暗殺者からの護衛・反撃依頼とか。そんなとき、君と依頼人を守れるのは君の判断力の高さと速さ、そして如何に冷静に考え、どこまで冷酷になれるかだ。油断はおろか、敵に同情をしていれば足元をすくわれるからな。高ランクになればなるほど、実力は元より、そう言った点が重要視される。君の戦い方は、人を殺した経験がある人のそれだったよ」


 確かに人を殺した経験はある。それもかなりの数を。思い返せば、初陣のときなんかは周りの状況を見て吐いて吐いて吐きまくって、暫く使い物にならなかった記憶がある。そう言った心の脆さを、戦っている最中だけは心の奥底にしまっておかなければ、物言わぬ骸になるのは自分の方だ。心の制御は間違いなく必要だろう。


 ヴィオラは大丈夫だろうか? 僕の勝手な想像だけれど、彼女は人を殺した経験があるのだろうか。


 ふとそんなことを思ったけれど、何百年も生きていれば、ある程度の経験はありそうだ。少なくとも、人型に近いゾンビに対して動揺している様子は全く見えなかったし、きっと大丈夫だろう。


 それにしても今回はアインが大活躍だった。もしアインが居なければ、鎌鼬(かまいたち)をしたところで試験官に逃げられ、まだまだ試合は長引いていた筈だ。実質二対一だからこそすんなり勝てただけ。


 万が一アインと離ればなれになったときを想定して、もう少し腕を上げないと駄目だな。特に魔法の発動速度。もう少し早く発動出来れば、水を被ってから背後の炎に飛び込むことも出来た筈。防具が焼けてなければ良いんだけど……あとで脱いで確認しないとな。


 ギルドに戻って、Dランクへと更新されたギルドカードを受け取ったあと、今度はヴィオラの戦いを見学する為、僕は再び訓練場へと戻ったのだった。

あああああ1分過ぎたああああ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分で締め切りを決めて、それを守っていこうとするスタイル…尊敬します(`・ω・´)ゞ [気になる点] 戦闘描写で、動きを頭の中でトレースしながら読んでいるのですが、少し疑問が湧いたので書か…
[一言] 「君の戦い方は、人を殺した経験がある人のそれだったよ」 剣習ってるって言ってるし、元々殺すための技術だしとか、師匠とは殺す気で戦わないと全く歯が立たないから自然と身についたとか、言っとけばそ…
[一言] 1分 されど1分 1分?(・・)? モンスター討伐は免除されたから、筆記試験かと思ったら実技だった……………ww 教養は?教養
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