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59.逆に楽しくなってきちゃって

いろいろなご意見があったので、貴族と同等の権利を有すると言う後半部分の記載に関して、誤解を招かないように記載を変更しました。


×貴族と同等の権利があってどんな振る舞いをしても許される

○貴族から嫌がらせとかされた際、「僕みたいな高ランク冒険者をいじめても良いと思っているのか!? 他国に移籍するぞ!?」と言う切り札があるので、国としても貴族よりも冒険者の保護を優先する可能性がある


です。ギルドは治外法権なので、国の貴族ともめ事を起こした際に冒険者に非がなければ基本的に守って貰えます。が、ギルドのルールに縛られるので、悪い行いをすれば即行ギルドから除名されます。

好き放題は出来ないよ、と言う感じです。

 王都に急いで帰還することはやめ、ひとまずはアインの治療に専念することに。


 便宜的に神聖魔法と呼ぶけれど、これは何か強い願いを条件に発動すると言っていた……。今の状況であれば、素直に「アインの骨から毒が消えて、元に戻りますように」と願いながら頑張ればいける気がする。


 だけど……具体的にどう魔法を使えば良いのだろう。火魔法なら、燃やすイメージを浮かべれば発動出来る訳だけど、神聖魔法はイメージがぼんやりとし過ぎている。


 森では光魔法的なイメージでいけたから、とりあえず光で覆うイメージでどうにかしてみようか? いや、でもアインは一応種別としてはアンデッドなんだよね。


 そう言えば、小説の中では「ダークヒール」なるものが存在していたりしたな……響き的に、アンデッドにはそっちのイメージの方が良いのかな?


「よし、じゃあとりあえず闇でアインを覆うイメージでやってみようと思う」


『おお』

『アンデッドだからダークヒール的なイメージか』

『確かに森でのことを考えると、光をイメージしたらアイン君が無事では済まなそう』

『ちゃんと考えてたw』


「アイン、装備を外してそこに立ってて貰える? うん、ありがとう。えーと……全身を闇で包む……繭みたいな感じかな? 闇の祝福-神威-!」


『思ったよりかっこ良い名前が出て来て笑った』

『前々から決めてた訳じゃないのにすぐこれが出て来る辺り厨二病の素質ある』

『闇の祝福だけで良いのに神威をつけるあたり……』

『なんか強そう、今後アインくんが怪我したときにもヒールにつかえそうじゃん!』


 僕が叫んだあとすぐ、アインの姿が真っ黒い繭のような何かで覆われた。まさしくイメージ通りなんだけど、これ全部脳波の読み取りだけで実現出来てるの? 凄すぎでは? それとも直前の呟きから判断してるのだろうか。


「……包んでみたは良いけれど、このあとどうすれば良いのだろう。破れば……良いのかな。アインの身体から無事に毒が抜けてるのかも分からないのだけど」


『絵面がシュールだなあ』

『闇色の霧?みたいなので覆うイメージかなって思ったら全然違った』

『繭から出て来る=羽化する、身体を作り直して生まれ変わるイメージか? まっさらな身体になるから毒も消えるだろうと。だから神威? それならアインくんの方から出て来そうだけど』


「あ、じゃあなんかそんな感じで! よし、アイン、無事に新しい身体になったら?出て来て欲しいな」


『本人そこまで深く考えていなかった件』

『お、おう……俺の解説はなんだったのか』

『www』


 僕の声に反応したのか、それとも良い感じに羽化が完了したのか。内側から真っ黒の繭が破壊され、真っ白な元の見慣れたアインの腕が現れた。


「おお、真っ白に戻ってる!」


『羽化したアイン』

『骨密度がまた増してたりして』

『あったな、骨密度www』


 白いってことは毒はもうないのだろう。この状態であれば、誰に迷惑をかけるでもなく王都へと戻ることが出来る。思ったより時間がかからず良かった。


 喜びもつかの間、全身を繭の外へと現したアインは、腕以外はまだらに紫の状態のまま。どうやら上手く治療が出来なかったみたい。


『うわあ……』

『中途半端なのは魔法の熟練度の問題なんかな』

『消費する魔力が足りなかったとか?』

『羽化ではなく解毒だな』


「うーん、確かに羽化ではないね。まあそう言うつもりでイメージしてなかったし失敗してもおかしくないか。イメージ不足が原因だとは思うけれど……熟練度とか使用する魔力が不足していた可能性も否めないかな? 少なくとも腕は真っ白な状態に戻ったし何度かやってれば戻るよね!」


『イメージが曖昧だったの認めたw』

『お、脳筋思考』

『そうそう、何度もやってれば全身解毒出来るw』


「腕だけが綺麗に白くなったなら、熟練度不足と言うよりは中の状態の問題じゃないかしら? 腕は一番繭に近い。繭の中の、解毒する為の魔力か何かの濃度に差があるのではないかしら」


「なるほど。そうか、繭で覆ってて中のことが見えないから、イメージが疎かになっていたかも。解毒させる為の力の流れが繭の中で均一になるように意識しないといけないのか」


『ヴィオラ先生!』

『確かに、魔力とか熟練度が不足してるなら全身まだらになりそう。腕だけ綺麗に白く戻るって不自然だな』

『着眼点が違うぜ……』


「褒めても何も出ないわよ!」


 彼女の配信の方でも同様のコメントが来ているのか、照れたようにヴィオラが叫ぶ。いや、ヴィオラの指摘がなかったら、僕は脳筋思考で何度も同じことをした筈。結果として、何度やっても腕部分ばかり解毒が優先されて、全身が白く戻る迄は相当の数をこなす必要があっただろう。


 やっぱりエルフは魔法に対する考え方が身についているのかなあ。いや、僕の頭が固すぎるだけかな。


「それじゃあ今度は内部のことを意識してもう一度……いや、そもそも羽化じゃないんだから繭である必要はないのか? 闇の祝福-神威-!」


『何回聞いても厨二病』

『いやいや、アンデッド用のヒール的魔法と考えたら妥当な名前』

『神威は絶対要らんw』


「いやいや、最初はイメージ補強の為に声に出した方が良いって言う師匠の言葉に恥ずかしいなあ、とか思いながら従っていた訳ですよ。でも最近はほら、逆に楽しくなってきちゃって」


 いや、慣れると必殺技?みたいな感じでちょっと興奮するんだよね、あれ。ゲーム内だし良いか!となってしまって。なんて視聴者さんのコメントに対して回答をしつつ、アインの解毒?を見守る。今度は、視聴者の誰かがコメント欄に書いてくれたように、闇色の霧のようなものでアインの全身を覆うイメージ。これなら霧そのものに解毒や回復の効果を持たせてしまえば目視出来るから、台風のようにアインの周囲で渦状に回転しているイメージが保ちやすい。


 そろそろかな?と言うころ、アインが霧の中から登場。実態があるわけではないので、破壊する必要もないし、こちらの方がアイン的にも楽かもしれない。結果はと言うと、腕は先程同様白い色。その後に覗いた身体は——。


「良い感じに全身が白くなっている!」


『おめでとう!』

『二回目で成功させてる』

『一度名付けた魔法ってイメージが固定されるわけじゃないんだな』


「確かに。一度使った名前の魔法を全然違うイメージで上書き出来るってどう言う理論なんだろう」


『名前は実は重要ではなくて、都度脳内でイメージしているものが発動するだけ?』

『とりあえずなんか叫んでおけば良いってこと? そもそも無詠唱は無理なんかな』

『イメージ補強の為に声に出した方が良いってことは無詠唱でも出来なくはないのでは』

『その分威力は落ちそう』


「さて……思ったよりすんなりアインを元に戻せたし、あとは王都を目指すだけなのだけど。気が重いなー。見知らぬ人に睨まれたり文句言われたりするかもしれないんだよね?」


『黒髪黒目だからねえ』

『知り合いはそんなことないだろうけど』

『まあ蓮華さんは冒険者だし被害は少ない筈』

『帰ったらすぐランクアップ試験受けた方が良いんじゃない』


「ランクアップ試験……あったなそう言えば」


『忘れてるwww』

『おい』

『こっちは必死になっていると言うのに』


「ランク上がったらなんか変わる? 受けられる依頼の数は増えるのだろうけど」


『嫌がらせも減るんじゃないかな』

『ランク別に貴族と同等の権利が与えられるらしいよ』


「貴族と同等の権利……、ダニエルさんが何かそれらしいことを言っていたような」


「『同等の権利』というと語弊があるかもしれないけど。要は貴族からの理不尽な要求に対してもやられっぱなしじゃなくて専守防衛が認められやすい、国側がこちらを優先して保護してくれる権利ってことよ。上から順にAランクが公爵、Bランクが侯爵、Cランクが伯爵、Dランクが子爵、Eランクが男爵。

 私達の今のランクだと、男爵から嫌がらせを受けた際に多少やり返しても許される権利を有していることになるわね。それから規格外としてSランクがあるらしいけれど……もはや強すぎて一国の王族・皇族レベル、つまり国家単位での圧力にも武力で抵抗が出来るみたい。全世界で数人だけだそうよ」


「Sは現実味がないから良いとして。ひとまずDランクに上がったら子爵レベルに対抗出来るのか。ところでDに上がったからって嫌がらせの内容が変わったりするの?」


『男爵位は教会の信者も多いんやで』

『金で爵位を買った奴らな。教会に寄付してた奴らだから、実質男爵位は教会の信者衆だらけ』

『子爵以上は王家からの叙爵だから、割とちゃんとした貴族ばっか』

『トラブル避けるならDランクはあった方が良い』


「ギルドは治外法権だから、シヴェフ王国の貴族から嫌がらせ行為をされたとして、貴族側が悪いと証明さえ出来ればギルドが矢面に立って守ってくれる。シヴェフ王国側も、高ランク冒険者に他国へ逃げられるとあらゆる面で困るから、嫌がらせ行為をした貴族に圧力をかけたり処罰したりしてくれるわ」


「ランクが高くなれば高くなる程『僕に嫌がらせしたら他国に移籍するぞ!? 良いのか!?』って脅し文句が言えるようになるわけか。帰ったらすぐに試験を受けてみるよ。僕のせいで一緒に居るヴィオラに迷惑をかけるわけにもいかないしね。落ちたら恥ずかしいけど」


『蓮華くんが落ちるなら俺等一生到達しないから大丈夫』

『実際Cランク以上の実力は余裕であるでしょ。ただ最初から高ランクスタートさせられないってだけで』

『ランク上がると実力だけじゃなく信用度も関係ありそう』

『ギルドの看板背負ってるしな』


「まあランク高いとねー、そのギルドの顔みたいになるから性格とか礼儀作法もかかわってくるだろうし。Cランクで伯爵に対抗出来るってことはそれなりに作法も重要になるだろうし、実力だけで上がれるのはDランク迄なのかなあ」


『確かに』

『伯爵はなあ』

『小説によっては王族の婚約者も伯爵から出てるし、高位のイメージがある』


「嫌がらせだけじゃなく、教会と事を構える可能性を考えてもDランクに上がってからの方が良さそうね。教会が与えられる爵位がせいぜい男爵なら、国側も子爵レベルの冒険者を優先してくれるでしょうし」


「そもそも何で教会が男爵位を自由に渡せるのだろう? 男爵も立派な貴族だよね。王族以外がどうこう出来るのっておかしくない?」


「そうね……、この世界は現実と違ってちゃんと遺体にしかるべき処置を施さなければアンデッドとして蘇る可能性がある。と考えると、正直宗教が力を持つのも納得が行くわね。特に王族となれば死後に自分がアンデッドとして蘇ることを人一倍恐れるでしょうし。国教となれば尚更権力は集中するでしょう」


「爵位を渡せるだけの権力がある、かあ。これは結構思ったより厄介な相手かもしれないねえ。一宗教を相手すると言うよりも、下手したら小国の王族レベル?」


「もし今回の件が大ごとになって王族迄出て来る事態に発展したとしたら、教会側の肩を持たれると更に厄介ね。自分達の今後を考えて、Dランク冒険者よりも教会を優先する可能性は大いにあるわ」


「だとしたら、まずは教会に本当に浄化や祈りの力があるのか、これを確認するのが最優先かな」


『力がなければ王族も教会を恐れる必要はなさそう』

『むしろ権力を持ちすぎたことを疎ましく思っていたとしたら、これを機に排除しようとするかも?』

『上手くいけばこっちの味方になる可能性も十分にあるな』

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― 新着の感想 ―
イルミュ王国の王族が全員アンデット化してましたよね。 国によって神が違うなら教会の在り方もそれぞれの国で違うんでしょうが、この世界の教会ボロボロですね〜
[気になる点] 59まえがき >冒険者に火がなければ 火→非 >速攻ギルドから除名されます。 速攻→即行 だと思います。
[気になる点] 分かりやすいのは良いし、あくまでゲーム的説明って意味合いが強いんだと思うけど、 > ランク別に貴族と同等の権利 とかはゲーム内世界的にそんな認識はしてないやろなって…… もしそのまんま…
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