49.お金の力ってやっぱり凄い
投稿設定ミスったようです(20時の予約し忘れてその場で投稿した……
本日20時の投稿はありません。。。
考えてみれば改造を急ぐも何も、脳波データの取得と言うタスクは僕待ちだった。森に遠出している最中にNPC卒業したり、またNPCに戻ったりを繰り返してしまっては修理と誤魔化すのが難しいと思って保留にしていたんだった。すっかり忘れていたよ。でも、配信の件がなくとも最近インベントリが使えず不便を感じていたので、コクーンの改造を早く完了させたいというのは事実だったりもする。
そんな僕の思いの丈を素直に語ったところ、小林さんから思わぬ回答が。
「そう言うことでしたら、本日脳波データを確認して問題がなければ暫くはこちらの筐体をお使いいただければと。弊社に来るのが不便でしたら、水原様のご自宅迄お持ち帰りいただいても大丈夫ですし。システム面……BARのプログラムに関しては、遠隔で修正を行う事も可能ですから。既にご購入いただいている筐体へ改造を行う件につきましても、試作機をお持ち帰りいただく際にこちらでお預かりさせていただければと思いますが」
な、なんて素晴らしい……これが俗に言う神対応と言うものでしょうか。凄い、ソーネ社の為ならいくらでも課金出来る!
「え、え、本当にそれで良いんでしょうか? って言うか洋士も大丈夫? 搬入と搬出でばたばたすると思うけれど」
「お前だって不便だろうから早いに越したことはないだろう。さすがに車に入れては持って帰れないから、今日の今日で持ち帰るのであればトラックが必要だが……」
洋士はそう言いながらちらりと小林さんに視線を移す。
「弊社にもトラックはあります。運転手も誰かしらは待機していますから、お帰りの際に同行させましょう」と心得たとばかりに頷く小林さん。本当に至れり尽くせりでどうしようって言うレベル。まさかこれは洋士からの巨額投資に対する優遇措置……!? お金の力ってやっぱり凄い。
「何か阿呆なことを考えてそうだが、良いのか? あの女とまた朝に待ち合わせてるんだろう。ちゃっちゃと脳波データを取ってこい」
言い方には引っ掛かりを感じるものの、洋士の言うとおりだと思い僕と小林さんは試作品コクーンの前へと移動。前回同様、小林さんが色々と説明をしてくれつつ、今回は脳波データの計測器具も用意してくれていた。
「今回は弊社テスト用アカウントを用意しましたので、飲み物をお飲みになったあとそのままログインしていただき、念の為プレイヤー特有の操作が出来るか確認していただいてもよろしいでしょうか? 脳波などのデータ計測はその間にこちらで確認いたします。プログラムを少し修正したので、BARの入り口がログアウト、BARの内部、カーテンで仕切られた扉に進めばGoWにログインが可能となっています」
「分かりました。その、プレイヤー特有の操作と言うのはシステムメニューやインベントリを開くといった操作のことでしょうか?」
「はい。システムメニューは右掌を右から左へさっと動かしていただくと起動します。インベントリに関しては同様に右掌を下から上へ動かしていただければ開く筈です。ログアウトはシステムメニューの一番右下にありますから、そちらを指で選択する形で戻って来てください。それと、大変申し訳ないのですが、摂取後二十分以内にログアウトした場合の問題は解決していませんので、BARもしくはGoW内にて二十分以上経過してからこちらに戻って来てください」
親切な小林さんの説明に僕はしっかりと頷き、いざ仮想現実の世界へ。今日のデータ次第となると、ちょっとどきどきするなあ、頑張れ僕の身体。
ひとまずBARで前回同様のココアを頼み、しっかりと飲み干す。今回は特大一リットルサイズ。おお、改めて出されると凄い量だなあ。
気合で飲みきったあとは小林さんに言われたとおり、カーテンで仕切られた扉へと進む。すると、視界が暗転し、見慣れたGoWの接続確認画面が表示された。
徐々に視界が明るくなり、現れた風景は懐かしきオルカの町並。いつもプレイしているサーバとは違うのか、NPCは居れどもプレイヤーと思しき人は一人も居ない。これならゆっくり検証が出来そうだ。
まずはシステムメニューの表示から。確か右の掌を右から左に素速く動かす。
「お、おおお……! これがシステムメニューとやらか!! えっとどれどれ? 『キャラクター』『インベントリ』『クラン』『フレンド』『メール』『オークション』『ショップ』『配信』『設定』『ログアウト』か。色々あるなあ。気にはなるけれど、まずはインベントリを最初に教わった方法で開いてみたいから……この画面はどうやって閉じるんだろう」
そう言えば閉じ方は聞いていなかったな。安易に考えるなら、開いたときとは逆に左から右へと掌を移動することだけど……。
「あ、出来た。なるほど、開いたときとは逆の操作をすれば良いのか。と言うことはインベントリも……?」
空中で、右の掌を下から上へとさっと動かす。すると説明通り、インベントリが表示された。
「こ、これがインベントリ……! これさえあれば僕も重たいリュックを背負う必要もないってことか。でもこれ、僕に使いこなせるかな? 要は戦闘中にポーションとかを出すのもこの操作をするってことだよね? 咄嗟に出来るかなあ。それに右の掌で操作となると、太刀を一旦左手へ持ち替えないといけないってことだよね……」
便利そうに見えて実は不便? まあ良いか、それはあとでじっくり考えよう。ひとまず後で調べる為に、今は全部の項目を確認して分からない部分を洗い出しておきたい。
インベントリは四角い枠が何個も表示されており、その内のいくつかに防具とたくさんの武器が表示されているので、これがアイテムを格納する枠組みなのだろうと判断。その横にある数字とアイコンが多分、ゲーム内通貨だと思う。大体見方は分かったので、上から下に掌を移動し、インベントリを終了、再びシステムメニューを表示する。
まずは『キャラクター』……なるほど、これは現在着ている装備や熟練度が確認出来る部分か。ソーネ社のテスト用アカウントって言っていたけれど、熟練度を見るにこれは僕の値が反映されているような……? うん、今後配信をするとしても、熟練度に関しては絶対に見せないようにしておこう。
『インベントリ』はさっき確認したから良いとして、次は『クラン』。なんだろうな、これ?メンバー一覧なんてタブがあったりするけれど、パーティやギルドとはまた別のグループ的なものだろうか。
『フレンド』。これはまあ確認しなくとも、おおよそのところは分かる。一番最初にフレンド登録するのは間違いなくヴィオラだろうなあ。
『メール』『オークション』に関してもそのものずばり、プレイヤー同士で連絡をとったり売買をする機能。今迄ガンライズさんやヴィオラにはオークションで代理購入して貰ったりとお世話になりました。
『ショップ』。これは『オークション』とは違って、ソーネ社からの課金要素のショップ、みたい? 装備の上から着られるアバターなるものがあったりする。なるほど、装備の見た目がださくても、アバターでごまかせる訳か……、凄い! つまり、僕がソーネ社へ感謝の意を伝えるならば、このメニューから購入すれば良いってことですね。
いよいよ『配信』。さてさて、どんな設定があるのかな? まず、自動配信のオンオフ。それから音声コメントのオンオフ、許可リスト、不許可リスト。同じくコメントのオンオフに、許可リスト、不許可リスト。それに手動配信開始ボタン。おっと、配信だけじゃなくて、動画の録画なんてボタンもある。なるほど、リアルタイムじゃなくて全て撮り終わってから投稿するパターンも出来る訳か……。その他、アーカイブのオンオフ。うん、何となく分かるけれど、細かい項目の意味についてはじっくり調べないと駄目そうだ。
で、最後に『設定』。ゲーム全般の設定みたい。グラフィック設定や、音量設定など。
一通り確認し終わったタイミングで、丁度二十分が経過していたことに気がついたので、『ログアウト』項目を選択してログアウト。自分の意思でログアウト出来るって改めて便利だね!
「おかえりなさい! いかがでしたか?」と笑顔で小林さん。まあ、自分でログアウトが出来ている段階で答えは出ているようなものだもんね。
「はい、システムメニューもインベントリも、その他の項目についても全て確認が出来ました」
「それは良かったです。では脳波などのデータ測定結果ですが……その前に、ご気分の方は大丈夫ですか?」
心配そうに覗き込んでくる小林さん。おっと、気分は大丈夫だけど、また目がおかしいのかな? 自分では見られないのがなあ。コクーンの方をそっと向き、瞳の状態を確認。あ、やっぱり色が変わってるっぽいな。そっと手をかざして元に戻す。うん、これで大丈夫そう。
「気分は大丈夫です」と、今度は話す速度を小林さんと同じ程度に調整しながら慎重に答える。さっきの質問では意識しなかったけれど、返答も通じていたみたいだし、ちゃんと適切な速度で話せていたのかな? ちょっと心配。
小林さんからの質問に答えながら、聴覚を微調整。まだ周囲の音を意識せずに、でも異変は聞き逃さないようにするって言うのはなかなか難しい。意識しておかないと、周囲の音を全部雑音と認識して勝手に閉め出しちゃうんだよね。洋士に忠告されたし早いところ慣れないと。
「では脳波・心音・静脈のデータですが……おめでとうございます、成人男性の平均値を若干上回りました!」
「おお……! ついに! ではこれからは僕もプレイヤーデビューが出来ると言うことでしょうか」
「はい、その想定です。とは言ってもぶっつけ本番で無理でした、では困りますから、今この場でこのコクーン筐体に蓮華様のアカウント情報を紐付けてしまい、一旦ログインして貰えればと。無事にプレイヤー扱いになっていればご自分でログアウトが出来ますし、無理そうであればこちらで強制ログアウトを実施いたしますので」
小林さんの提案に僕は頷き、早速筐体へアカウント情報の紐付けをお願いした。勿論僕はやり方を知らない。前回は洋士にやってもらったし、自宅で初回起動したときにはアカウント情報を紐付けるなんて作業はなかったから。このままではさすがにまずいので、帰ったら洋士に教えて貰おうと思います。
筐体の準備が整ったのでいざ出発。お、ログインした先はちゃんとダンジョンのヤテカル部屋みたい。と言うことはインスタンスダンジョンはある程度の時間は維持されるってことか。早速システムメニューを呼び出す動作を実施し……出来る! と言うよりも、ログインした時点で今までとは若干視界が違う! 自分のHPやMPバーが表示されているところとか。こ、これが憧れのプレイヤー目線の世界……。うん、思ったよりも大きな変化がなくてちょっと安心。
さくっとログアウトボタンを選択し、ログアウト完了。ついに自分のアカウントでも自分の意思でログアウトが出来ました! やったよ皆!