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42.それは困りましたね

 ここは一体どこだろう? 木の幹に触れた瞬間、何かに――多分木の幹だと思っていたもの――に吸い込まれたところまでは覚えている。


「ヴィオラ? アイン?」


 二人に呼びかけてみても、返答はない。


 改めてあたりを見渡してみると、どうも先程迄居た森とは雰囲気が少し異なるように見える。相変わらず木々がうっそうと茂っている辺りは変わらないけれど、そこら中から敵意をひしひしと感じるのである。


「もしかして、あの木が彼らの住居の入り口だったのかなあ」


 不法侵入をしたのであれば、敵意をむき出しにされて当然だよね。


「あの、突然お邪魔してすみません。ここはどこでしょうか?」


 故意に来た訳ではないと理解してもらえれば和解の道もあるだろうかと、一縷の望みをかけて一応声をかけてみたけれど、予想通り誰も答える者は居ない。


「うーん、困った。ここで待っていたら二人が来るのか、僕だけがここに来ることが出来るのか……分からないことにはなあ。とりあえず情報収集の為に動くのが正解、かなあ」


 もう少し待つ、という選択肢もあるにはあるけれど。そもそも境界については僕だけが反応した。ここにも、二人が来られるという確信は持てない。待つことは時間の無駄だろう。


「ええと、今からあちこち見て回りますが、元の場所に戻る為の手がかりを探すだけで敵意はありませんので、出来れば見逃してもらえると助かります」


 念の為そう宣言してから僕は前方に向かって歩き出した。ちなみに後ろは完全に行き止まり。


 しばらく進んだところで、僕は違和感を感じ始めた。


「うーん……この木、さっき通ったところにあった木に形がそっくりな気がするけど……もしかしてまた方向感覚を狂わされてたりするのかなあ。マップが見られない以上、ヴィオラが居ない限り確かめようがないんだけど。とりあえず、ちょっと目印を付けて様子を見てみるか……」


 木の幹に脇差ですっと横一文字の切れ込みを入れる。これで次にこの木に似た木を見つけても判断が出来るね。


 再び歩みを進めようと木の横を通り過ぎたそのとき、背後に尋常ではない殺気が膨れ上がった。


 振り向いている暇はないと判断し、僕は勘で左ステップ。直後、凄まじい風圧と共に元いた位置に太い枝が斜め後方から叩き付けられた。これ、下手したら一撃で致命傷なのでは……?


「木の妖精さん、かな? 体を傷つけたから怒らせちゃったかな……ごめんなさい!」


 謝って許されるとは思わなかったけれど、念の為謝罪。当然のごとくスルーされ、更なる追撃が襲ってきた。


「ですよね、体を傷つけられて許せる人は居ないか……。うーん、僕が悪いし、戦うのは気が引けるのだけれど……。徐々に近付いて来る気配が複数、囲まれたら厄介かもなあ」


 近付いてくる気配が敵対的ではないことを祈りながら、何度か攻撃を回避しつつ様子見。しばらくして姿を現したのは、目の前に居る木の妖精さんにそっくりな方々で、僕を視認した瞬間に殺気が膨れ上がった。やっぱり仲間が傷つけられてるのを見たら、怒り爆発しちゃうかあ。


「うん、じゃあもう言い訳はしません! 僕は自分の為に貴方達の命を奪います!」


 まずは目の前に居る木の腕?らしき枝を抜刀がてら一閃。どすん、と大きな音を立てて太い枝が地面に落下した。怒り狂った本体からの猛攻を回避しつつ、落ちた枝を暫く観察。良かった、根付いて新たな木の妖精になる、なんてことはないみたい。


 とは言っても、元は木であって、人間ではない。枝を一本切り落としたところで、新たな枝が腕代わりになるだけ。個体数は増えずとも、やりにくい相手であることには変わりはない。


「図体が大きい分、移動速度が遅いのが救いかなっと! その分枝を使った攻撃速度はかなり速いけれど」


 独り言を言いながら、新たに攻撃を仕掛けてきた枝をすかさず叩き切る。


「骸骨さんと言い、木の妖精?さんと言い、どうしてこうも刀と相性が悪い相手ばかりなんだろうなあ……いっそ燃やしてみる……? いやあ、でもここに敵がどれだけ居るのか分からないもんなあ、魔力が足りるかどうか……」


 僕の勘では、この空間では休憩をしても魔力が自然に回復しない気がする。この辺りに漂っている魔力は自然のものではなく、誰かの魔力?が漏れ出ているだけ、と言った感じがするのだ。


 先日師匠に、「人の体内にある魔力など、既に所有者がいる魔力は自然に吸収出来ない」と教わった。つまり、「同じ空間に魔術師が何人居ようが、互いの魔力を自然に奪うことはない」。けれど一方で、「故意に取り込み、自分の魔力に馴染ませることは出来る」とも言っていた。


 今の状況は後者の方法でなければ無理だと本能で察しているけれど、残念ながら僕はまだその方法を教わっていない。人の魔力を奪うこと、自分の魔力と馴染ませてから体内に取り込むこと。この二つはとても危険で、失敗すれば命に関わる為、初心者には教えられないらしい。


「当面はエリュウの肉を食べて回復出来るとしても、微々たる量……この木の妖精を倒したところで、食べられるとも思えない。やっぱり魔力はなるべく温存しておきたいな」


「あらあら? 待っていても一向に来ないと思ったら、こんなところで油を売っていたの? 命令一つ遂行出来ないなんて本当に役に立たないわね、ツリーマンは」


 突然響いた声に、僕は即座に辺りを確認した。ツリーマンと呼ばれた木の妖精の後ろに、すらりとした体型の耳がとがった見目麗しい女性が浮いている。服らしい服は着ておらず、蔓を体に巻き付けてドレスのように着こなしている。声が聞こえる迄、全くと言って良い程気配を一切感じなかった。どうやら見た目に反して厄介な誰かが来たようだ。この時点で僕の中の警戒順位は、声の主が圧倒的一位になった。


「失礼ですが、貴方は?」


 声が聞こえてなおも攻撃を止めないツリーマンの攻撃をかわしながら、僕は女性に問いかけた。命令と言っていた辺り、彼女がツリーマンの主なのだろうか? それにしても、主の声も無視する辺りツリーマンとやらはあまり知能が高くないのかもしれない。


「やだ、ちょっと近くで見たらもの凄くイケメンじゃない! 迎えに来て良かったわ。私はドライアド。木の精霊よ。貴方に私の恋人になる栄誉をあげるわ。勿論拒否なんてしないわよね? まあ、拒否権なんてないけどぉ」


「それは困りましたね。いきなり見知らぬ人と恋人になるような付き合いを好まないのですが……」


「大丈夫、私は貴方を知ってるから! 貴方が最初に森に足を踏み入れたときから、ずっと見ていたもの。むやみやたらと木を傷つけないし、変なのが湧いたのも、なんとかしてくれたでしょう? 今だって、森が正常な状態に戻っているか調査に来ているのよね? これだけ森を気にかけてくれているんだもの、私の恋人になる運命だとしか思えないじゃない」


「それは一方的な貴方の考え方ですよね? 僕は貴方とは初対面ですし、強制的にものごとを決める方は余り好きではないのですが……あ、一つお聞きしたいのですが、僕がここに来たのは貴方の仕業なのでしょうか?」


「んー、それはちょっと違うかなあ。貴方が私たちの結界に気づいた上でどんどんこっちに向かってきた感じ。しかも貴方は私たちの住処の入り口迄見つけて入ってきたからぁ、これってやっぱり運命だと思って。ツリーマンにお迎えを頼んだのに、全然戻ってこないから確認しに来たら、貴方と戦ってるんだもの、ほんっとうに役立たず。あ、でも貴方の強さが改めて分かったから、そこは良くやったって感じ?」


 自分の部下を役立たずと冷たく言い捨てたり、語尾にハートが付きそうなくらい甘ったるい話し方をしてくる辺り、もの凄く苦手なタイプだなあ。頼まれてもお近づきになりたくない。


「となると、僕の連れがここに来ていないのは偶然でしょうか?」


「あー、あのぱっとしない女と白骨死体? まあ正しい入り口が分かってないだけだとは思うけどぉ、森の秩序を乱した元凶と、貴方に馴れ馴れしくしてた女だもの。もし来ても殺すわよ?」


「そうですか。やっぱり貴方とは相容れないようです。僕は二人の元へと帰らなければならないので、申し訳ありませんがここを通させていただきますね。あ、ちなみに見ていただければ分かりますが、私は貴方の言うような人格者ではありませんよ? 貴方の部下のツリーマンを傷つけてしまったことで、今の状況を生み出してしまったので……」


「別にツリーマンは私の愛する森の一部じゃないしぃ、気にはしないけど。でも、私の提案を断るのは許せないからぁ、――恋人にならないならあんたもここで死ねっ!」


 ドライアドの腕部分を覆い隠していた蔓が、殺意を滲ませたかけ声に合わせ、鞭のように鋭く飛んできた。僕はそれを太刀で切り裂きつつ、最後に一言だけ付け加えた。


「おっと……余計なお世話だとは思いますが、振られたからって逆上する方はモテないと思いますよ?」


 怒らせることを分かっていて、それでも煽るような発言を止められなかった。だって、身勝手な言い分に続いて仲間を殺すと宣言されたら、誰だって腹の一つや二つ、立つってものだよね?


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【個スレ】名前も呼べないあの人2【UIどこぉ】


 名前を呼びたくても呼べない、あの人に関する話題です。

 名前は判明しましたが、諸々の事情で名前が呼べない為、タイトル継続しました。

 万が一本人にばれたら困るからね!!!

 ※運営側も確認してあげてください。何だかおかしいです。


259【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

すごく気持ち悪いそうです


260【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

彼の感覚はどうなっているのだろうか


261【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

魔法熟練度高ければ分かるとかじゃない?

さすがに野生の勘とかではないだろ……多分


262【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

魔法陣で終わりかと思ったけど、ヴィオラちゃんの予想が当たってた感じか。


263【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

なにがあるんだろねー、妖精の里的な?


264【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

そろそろダンジョン的なものがあってもおかしくない気はするけど


270【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

こんなマップ凝視しないといけないダンジョンとか辛すぎるんだがwww


281【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

カラオケ行ったこと無いとかもはや絶滅危惧種。。。


282【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

予想してたとは言え、この人本当にどんな生活してんのw


283【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

敦盛……これは歌なのか?


284【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

まあ幸若舞だから……どちらかと言うと舞?


285【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

あれずっと能だと思ってたわ。


286【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

友人が信長のことだと思ったやつ挙手ノ


287【闇の魔術を防衛する一般視聴者】


288【闇の魔術を防衛する一般視聴者】


289【闇の魔術を防衛する一般視聴者】


290【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

挙げ方に個性出さなくて良いんだよ ノシ


301【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

小説を手引き書扱いしてるのやっぱ笑うわ


302【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

いやーでも小説読んで興味持ったものとか俺は結構あるぞ。気持ちは分かる。


311【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

お家柄ねえ……いや、どこの旧家だよ


312【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

良いとこのお坊ちゃんか?

こんだけ長い時間仕事もせずにGoWやってる辺りお坊ちゃん説納得できるけど。


313【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

旧家なのか、ヤのつくおうちの方なのか……。


314【闇の魔術を防衛する一般視聴者】

信長とお友達だったんならタイムトラベラーか不老不死のどっちかだよ……。


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【個スレ】ヴィオラ【神弓】


 超絶弓使いのヴィオラさんの個スレです。

 荒し、暴言・動画の無断転載は禁止です。

 ※運営側も時々確認しています。発言には気を付けましょう。


481【神速で放たれる一般矢】

ずっと思ってたんだけどさあ……森に入ってからの配信、ヴィオラちゃんテンション高めだよね。


482【神速で放たれる一般矢】

>>481 それは俺も思っていたけどあえて触れていなかったのに!!!


483【神速で放たれる一般矢】

普段からソロ活動してたから、誰かと行動するのが楽しいんだろ。

>>481 >>482 そこに他意は無い。無いんだ、良いか?


484【神速で放たれる一般矢】

俺たちがどんなにそう思い込もうとしてもなあ……配信のコメントの方は割とペア推し勢多いから質問が悪乗りしがち。


485【神速で放たれる一般矢】

くそおおおおお!!!!


491【神速で放たれる一般矢】

カラオケ行った事無い人ってマジで居るんだな


492【神速で放たれる一般矢】

それよかヴィオラちゃんがアニオタなの親近感湧くんだけどどどど


493【神速で放たれる一般矢】

でも十八番があるわけじゃ無いんだな。一回歌ったら満足する感じかな。

そんだけ頻繁にカラオケ行くって案外リア充なのでは??


494【神速で放たれる一般矢】

リア充がアニソン歌うかー?


495【神速で放たれる一般矢】

>>494 いや、絶賛放送中のアニメならリア充だって乗れるだろうし良い選択なのでは?


496【神速で放たれる一般矢】

リア充は爆発しろと言いたいがヴィオラちゃんが爆発したら困る……くっ


502【神速で放たれる一般矢】

ヴィオラちゃん……リアルアマゾネスじゃないか……。


503【神速で放たれる一般矢】

キャラメイクがリアルな西洋っぽいって思ってたけど、もしかして自分の顔ベースだったりするんだろうか。


504【神速で放たれる一般矢】

このサーバでゲームしてる段階で日本在住確定だし、もし本当に顔ベースなら身バレ気をつけないとだよ、ヴィオラちゃん……


505【神速で放たれる一般矢】

配信者は顔ベースでキャラ作ったらあかんって!!!


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吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

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― 新着の感想 ―
[一言] しかし、顔は弄って無くて、バレた(笑)
[一言] 自分の顔ベースの人 ヴィオラ:すでに吸血鬼コンビに身バレ  蓮華 :引きこもり覆面作家に身バレがあると?     つ お い
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