40.凄く気持ち悪いな
一時間の休憩の間はリビングに居たけれど、ついぞ洋士は様子を聞いて来なかった。普段の洋士ならば、「怪しまれなかっただろうな」とか「ちゃんとまともに話せたのか?」とか確認してきそうなものなのに。
あいつ、まだ何か隠しごとしてるんじゃなかろうな……。あ、実はヴィオラの配信を見ていたり? 確か、外部からもアクセス出来るって言ってたよね。うん、最初からヴィオラについてやたらしつこかったのも、配信を見てエルフだと気付いていたと考えれば辻褄があうなあ。
まあ何にせよ、ヴィオラとは普通に話せるようになったし、魔法陣なんていう報告対象も発見した。ここから先は気楽に探索が出来そうだなあ。
「お待たせヴィオラ、アイン」
「私もちょうど今ログインしたところよ。……ひとまず配信を始めちゃうわね?」
視聴者の皆さん――の方向は分からないのでとりあえず配信の挨拶をしているヴィオラに向かって――手を振って、僕も挨拶をする。視聴者に対する説明を聞く限り、現時点ではマップ踏破率が四十%らしい。うん、概ね六時間で二十%のペースみたい。完全踏破迄にはあと十八時間といったところか。
「最奥地には辿り着いた訳だから、あとはマップの右側に向かって歩いて行けば良いんだね?」
「ええ、そうしましょう。中央付近や右側の奥地にも何かがあるかもしれないし」
そう言って目を輝かせるヴィオラ。いやあ、僕的にはさっきの魔法陣だけでお腹いっぱいなんだけどなあ。さすがゲーム配信者、イベントへの熱量が凄いです。
黙々と、視聴者と会話をしつつ、右側の奥地を目指してひたすら突き進む。ただまっすぐ歩くだけとはいえ、足下が悪い道となると意外と労力を使うし、なかなか思うように進まない。そうして通常よりも遅い速度で歩いていたのがかえって良かったのか。
その一歩を踏み出した瞬間、僕は全身に違和感を感じた。
「何だろう……凄く気持ち悪いな」
ヴィオラの方を見ると、「え?」と言う表情をしている。どうやら彼女は特に何も感じないようだ。
僕は何も言わず、一歩後ろに下がった。途端に不快感がきれいさっぱり消え去る。やはり、ここが境目のようだ。
地面をじっと見つめてみても、特に怪しい点は何もない。僕の気のせいなのだろうか?
一通り地面や近くの木を調べてみても、何も見つからないのだからこれ以上はどうしようもない。
「うーん……どう考えてもここを境界に何かがあると思うんだけどなあ……」
何かあると断言できない状態で時間をかけるのもどうかと思い、気を取り直して前進再開。念の為、ヴィオラにはマップを注視して貰うことにした。
「ねえ、私たち、まっすぐ歩いているつもりなのに全然違う方向に向かっているみたい」
「どういうこと?」
「うーん……ちゃんと今迄と同じように右奥……、つまり西の方角へ進んでいるつもりなのに、実際には森の入り口の方、北の方角に向かって歩いているのよね。方向感覚がおかしくなっているみたい」
「やっぱりさっきの境界をくぐった辺りから異変が起きてるってことか……西の方向に何かがあるのは確実だろうなあ。マップと睨めっこしながら進行方向を微調整すれば、西に進めるか、試してみよう」
どうやらヴィオラの予想が当たっていたみたい。これだけの規模の森に、イベントごとが魔法陣だけなんてことはなかったか……。
「あ、ずれた。九時の方向が正しい方角よ。……またずれたみたい。はあ、大体十歩も歩けば絶対にずれるわね」
頻繁に方角感覚がずれるせいで、なかなか思うように進めない。六時間で二十%のペースが、ここにきて目に見えて踏破効率が落ちてきていた。
「方向感覚を麻痺させる大元の原因さえ分かれば、取り除いた方が手っ取り早そうだけど、何が原因かも皆目見当もつかないしなあ……」
「ひとまず地道に行くしかなさそうね。もしかしたら隠したい何かがある場所に解除方法も存在しているかもしれないし……」
先程からヴィオラはマップを常に見ていて足下はほとんど見ていない筈なのに、見事な足さばきで木の根や土の盛り上がりなどを避けている。ゲーム内とは言え、エルフだから森との親和性が高いのだろうか?なんて、どうでも良い会話を続けながらも考えている僕。
不幸中の幸いと言えば良いのか、境界は動物にも影響しているのか、くぐって以降は全く動物と遭遇をしていない。僕らとしても、しつこく追いかけてくる好戦的な生物と遭遇しないのは大いに助かった。もしも遭遇していれば、狩る訳にもいかないので、逃げる為にがむしゃらに進んでしまい、更なる時間ロスになっていただろう。
「野生動物にも影響するってことは、彼らから身を守る為にこの仕掛けがあるのかな?」
「妖精なんかが居てもおかしくなさそうな雰囲気ではあるわよね。掌サイズで小さいイメージがあるから、動物にはひとくちで食べられそうだし」
「確かに、妖精だったらこういう仕掛けとか作れそうなイメージはあるね」
「妖精と仮定すると、蓮華くんだけが違和感を感じたのも、魔法熟練度が高いからかもしれないわね。……さて、そろそろ六時間ね。十五……想定よりは進めたかしら。ひとまず中央近辺は抜け出せたし、次はいよいよ右奥ね」
「自衛の為だけにしては、随分と範囲も大掛かりな仕掛けだよね、誰にも近付かれたくない感じがひしひしと伝わってくるというか。右奥に何があるんだろうなあ……」
今度は三十分後に集合することを約束しログアウト。野営道具を設置して横になってきたので、ログインしたタイミングで睡眠バフが有効化するだろう。
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【個スレ】名前も呼べないあの人2【UIどこぉ】
名前を呼びたくても呼べない、あの人に関する話題です。
名前は判明しましたが、諸々の事情で名前が呼べない為、タイトル継続しました。
万が一本人にばれたら困るからね!!!
※運営側も確認してあげてください。何だかおかしいです。
67【闇の魔術を防衛する一般視聴者】
いよいよペンダントの修理完了か!
70【闇の魔術を防衛する一般視聴者】
おっちゃんと元子爵夫人の繋がりに驚けば良いのか、元子爵夫人が冒険者だったことに驚けば良いのか。
71【闇の魔術を防衛する一般視聴者】
どっちにも驚いた上で運命の残酷さを嘆いておけば良いんだよ。
この感じからするともう亡くなってるんだろうし、理由は分からないけど、生きてたら令嬢の人生も違ってたのかなって思うとちょっと可哀想だなって思えてきたわ。
72【闇の魔術を防衛する一般視聴者】
おっちゃんも同情してるしな。
無理心中の話が出た当初はきっと「あの母にしてどうしてこんな子が……」とか思ってたんだろうけど、この間のイベントでことの顛末が王都中に広がったから、「子爵にひどい仕打ちを受けていたなんて……どうにか助けてやれなかっただろうか」とか思ったんだろうし。
ペンダントの豪華さ具合から色々心中が透けて見えるよな。
80【闇の魔術を防衛する一般視聴者】
できあがった状態のペンダント鑑定して欲しかったなあ……ステ上昇とかついてるのか気になる(´・ω・`)
103【闇の魔術を防衛する一般視聴者】
前々から気になってたんだけど、同居人って彼女じゃないよね()
104【闇の魔術を防衛する一般視聴者】
おっと、ガチ恋勢終了のお知らせか……?
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【個スレ】ヴィオラ【神弓】
超絶弓使いのヴィオラさんの個スレです。
荒し、暴言・動画の無断転載は禁止です。
※運営側も時々確認しています。発言には気を付けましょう。
403【神速で放たれる一般矢】
相変わらず本人は配信してることに気付いていないけれど、ヴィオラちゃんの配信経由で蓮華くんが配信デビュー(笑)視聴者の質問に返答出来てるってやばくない??
404【神速で放たれる一般矢】
本来は当たり前のことがようやく出来る様になった蓮華氏……w
ヴィオラちゃんGJ。
405【神速で放たれる一般矢】
「彼女居ますか?」草。これ絶対蓮華くんのガチ恋勢やん、同居人が誰なのか気になってるだろwww
居ないという返答に安心するでもなく噓と決め付けるコメント多数……。
「恋人にするならヴィオラちゃんなんてどうですか?」を読み上げるヴィオラちゃんが可愛い。
406【神速で放たれる一般矢】
「恋人にするならヴィオラちゃんなんてどうですか?」はペア推し勢だよな。
407【神速で放たれる一般矢】
私にも選ぶ権利はあるし→言いたいことは分かる
私に恋人が居ない前提なのは何故なの!?→何言ってるか分からない
408【神速で放たれる一般矢】
これだけのログイン頻度で恋人居る可能性があると思う方が……
409【神速で放たれる一般矢】
わんちゃんあるのは恋人もGoW廃プレイヤー説
410【神速で放たれる一般矢】
>>409 だとしても蓮華くんの配信にいっつもヴィオラちゃん居るんよ……
他 の 誰 か と 付 き 合 っ て る と 誰 が 思 う の か
411【神速で放たれる一般矢】
二人付き合ってるけど照れ隠しで内緒にしてると言う妄想でニヨニヨしてる俺氏
412【神速で放たれる一般矢】
俺等が思ってることを蓮華くんが代弁してくれたけど、完全にブーメランで草
ヴィオラちゃんからも突っ込まれてるやんけ……
スレチかもしれんが、同居人が彼女だったとしてもさ……あのログイン頻度なら破局まっしぐらだよ
413【神速で放たれる一般矢】
>>412 大丈夫、二人で行動してる限りどうしたってお互いの話題に触れざるを得ない。
417【神速で放たれる一般矢】
森で騒ぎまくって次々に野生動物襲ってくるの笑ってるwww
動物よけの香りに勝る騒音