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24.パーツ足りてる?

感想の返答が追いついていない……しばし待たれよ!です。

 ソーネ社は現在洋士からの情報を元に、改造にあたっての構造を検討・試作中とのことで、まだ実際に僕が呼ばれるタイミングではないらしい。


 と言うわけで僕はひとまず洋士にコクーンのセットアップ――僕の家のコクーンからのアカウント引き継ぎ――をしてもらって、イベント後のシヴェリー(王都)に再び降り立った。


 一日半ぶり位のログインだから、今日はやることがいっぱい。まずギルドに行って今回の王都クエストの評価結果と、骸骨さん(相棒)が何故他のアンデッドと共に亡骸にならなかったのかついて調べてもらわないといけない。


 それにヴィオラの件もある。当初の予定では王都クエストまでと言う期限付きでパーティを組んでいた。だから今後どうするのか、話し合わないといけない。


 といっても、どっちにせよあと一週間程で篠原さんとの約束の日。そうなればまた仕事を再開するから、ある程度ゲームが出来る時間は減ることになる。その辺りも鑑みてどうするか決めないと。


 とりあえず、まずはギルドの方に結果を聞きに行くとしよう。前回話したとき、相棒についても聞いてみたけれど、ダニエルさんの方でも原因が分からないらしく、「調べておきます」と言っていた。あれからゲーム内では五日も経っていることになるし、そろそろなにか分かったかもしれない。


 念の為全身持っていくとするか……エリュウの涙亭でジョンさんの食事を堪能したあと、僕は自室から相棒の身体を担ぎ上げてそっと裏口から店を出た。さすがに正面玄関からこの格好で出て行くのは店の評判にかかわるからね!


「お邪魔しまーす」と声を出してギルドの入り口をくぐる。もう冒険者ギルドの一員な訳だし、お邪魔しますはおかしい気もするんだけれど、他に良い挨拶が思い付かなくてずっとこのままだったりする。まあ無言で入ってくる人も多いし、僕もそうすれば良いんだろうけどなんとなく、ね。


「あっ蓮華さん! お待ちしてました!」とギルドの受付職員の人。あれ、もしかして全然来なくて迷惑かけてた感じかな? 確かにゲーム内五日は……ちょっと間が開きすぎだったかも。


「すみません。ちょっと所用でしばらく来られなくて……」


「あ、良いんです良いんです、約束していた訳でもないので。ただちょっと、例のスケルトンについて一つの可能性が浮上してきたので、とある人に来て貰ってたんです。なので蓮華さんがいつ来るのかなーと……。あ、詳しくはマスターから聞いてください。丁度上に居るので」


 と、いつものようにギルドの上の階へと通される。今更なんだけど、僕このギルドに出入りしてから結構立つけど一階で依頼を受けるより二階に居る時間の方が長い気がする……これは普通じゃないのでは?


 そして当たり前のようにそれを受け入れて、案内されなくても二階のどの部屋なのか分かっている自分も怖い……。


「失礼します」


 いつもの応接間の扉をノックして入室。ダニエルさんと……見知らぬ女性。どうやら来客中みたい。この部屋じゃ駄目だったのかな?


「ああ、丁度良かったです蓮華くん。実は先日相談いただいたスケルトンの件について、一つ可能性を思い付きまして。こちらはテイマーのアリオナさん。うちのギルド所属の冒険者です。丁度貴方の件を相談していたんです」


「あ、えーと、蓮華です。アリオナさん、よろしくお願いします。ところで、テイマーとはなんですか?」聞き慣れない言葉に僕は首を傾げた。


「初めまして。先日の活躍は色々と聞いたわ。よろしくね、蓮華くん。


 それで、テイマーと言うのは、一言で言えば、動物とか魔獣とかをテイム……懐かせて使役する人達の総称よ。


 ギルドマスターは、貴方のスケルトンが既に例のご令嬢の支配配下に居なかったから他のスケルトンと同様に昇天しなかったと考えている。つまり、貴方がテイム……そのスケルトンを使役しているんじゃないかと睨んでいるの。


 だから本当にテイムされているのか確認する為に私が呼ばれたって訳。


 もし良かったら貴方のスケルトン、私にも見せてくれないかしら?」


 つまり、現実世界で人間がペットを飼うのと同様に、ここでも動物と親しくなることが出来る、と。かつ、その中でも一緒に戦ったりする人をテイマーと言うってことかな。違いと言えば、その範囲が犬や猫に留まらず、魔獣とか、現実に存在しない生き物にも及ぶってこと? さすがファンタジー世界。確かにそれならスケルトンをテイムしててもおかしくはないのか。


 ひとまず僕は背中に背負っていたスケルトンの身体と、腰に差していた腕を外してアリオナさんの前に差し出した。確かに理論上はあり得るかもしれないけれど、テイムなんてものをした覚えが全くないから、それはそれで謎が深まりそうだけれど。


「うんうん、じゃあ失礼して。おお、本当に動いてるんだねー、頭が無い状態なのに再生もしていない。


 小耳に挟んだ話だと、貴方と意思の疎通が取れていて、腕の使用についてもスケルトン本人が許可をしてくれているって聞いたんだけど。どうやって意思の疎通を取っているの?」


「どう、と言われても……普通に僕がこの子になにかを聞いたら、腕でジェスチャーをしてくれるんです。最初に聞いたのは武器が壊れたから腕を代わりにしていいか、と。


 あとはアンデッドが消えた際は、一緒に喜んでました。凄く」


「ず、随分感情表現が豊かなアンデッドなのね……珍しいわ。そもそも私はアンデッドをテイムした人なんて聞いたことはないけれど。でも、話を聞いていると間違いないと思うわ。


 この子の身体からも……貴方との契約らしい気配を感じる。でもテイマーの存在も知らずにどうやってテイミング契約を行ったのかしら? なにか心当たりはある?」


「いえ、微塵も。正直どのタイミングでテイミング契約?がされたのかも良く分からないですし。意思の疎通が出来ていたことを考ると、森でこの子を生け捕りにしたときだとは思いますが、神聖魔法もどきで頭を消し飛ばしたこと位しか……」


「え、えぐい戦い方するのね。神聖魔法で浄化するならともかく頭を吹き飛ばすって……」


 アリオナさんにちょっと引かれてしまった。だって物理攻撃が全然通じないし、魔法も使えない状態でこっちもいっぱいいっぱいだったんですよあのときは……。


「……うん、とりあえず私の判断としてはこのスケルトンは蓮華くんとテイミング契約状態にある。


 ただ、契約方法が通常と違うみたいだからそこがどう影響するのかが分からない。


 それから本来、スケルトンは頭が自己再生する筈なのに、何日経っても再生しないのが貴方の命令待ちなのか、特殊な契約状態による支障なのかも分からないわね。


 悪いけれど、ちょっとこの子の身体の拘束を解いて、腕を元通りにつけて貰える? その上で頭の再生を命じてみて」


「分かりました。じゃあ……ええと、これをこうして、こう……? んん? 違うかな? ……ごめん相棒、自分で元に戻ることって出来る……?」


 合点承知之助!とばかりに右腕でサムズアップして、自分で勝手に組み上がっていく骸骨さん(相棒)。おお、そこのパーツはそうくっつくのか、うん、まさに生命の神秘。と言うか今更だけど、全パーツ揃ってる? 大丈夫? 足りなかったら森まで探しに行くから言うんだよ……?


「大丈夫? パーツ足りてる? うんうん、良かった。じゃあえっと、頭って元通りに戻せたりする?」


 それも大丈夫!とばかりに両腕でサムズアップを作って、なんか集中しているような相棒。おお、なんか徐々に空中から欠片が集まって頭が出来上がっている……凄い、粉々に砕かれたりしたときだけじゃなくて、無に帰した場合でもこうやって再生出来るのか。もはやなんでもありだな、骸骨さん。


「元の状態には戻るのね。それに貴方の言うことも問題なく聞いてる。特に契約に支障があるようには見えない……。


 うーん、あのね、本来のテイミング契約って、自分の血と相手の血を触れ合わせた状態で、テイムする相手に名前をつけるの。だから相手が同意していない状態じゃテイム出来ないし、そもそもスケルトンみたいに血がない子とテイミング契約出来てるのが不思議なのよね。


 でも貴方とその子は特に変なところがないから、あとは名前さえつけてあげればひとまずは様子見……ってところかな。分からないことがあったり、なにかあったら必ず私に知らせて。分かる範囲でどうにかするから。


 それじゃ、私の方はもう用済みかしら? この後行くところがあるのよ」


「助かったよアリオナさん。私はちょっと蓮華くんと話があるから、先に帰って貰って大丈夫だよ」


 ダニエルさんがそう言うと、手をひらひらと振ってアリオナさんは部屋を出ていった。


 先日のアンデッド殲滅戦の評価だと思うとどきどきしちゃうなあ。悪いこと言われないと良いんだけど。


「あ、別にそんなガチガチに緊張しなくて大丈夫ですよ。真摯に依頼に取り組んでくださった方は基本的に一定の基準以下の評価になることはありませんから。


 で、評価の前に……実は現地で全員の分の討伐数や依頼に取り組む態度などなど、確認は終わっていたんです。では何故貴方がた隊長格に対して別途会話の場を設けたのか。


 それはですね、要するに隊長としてどれだけ自分の隊員を見ていたのかを見ていました。すみません。


 評価の為とは言え、騙すような形で聞き取り調査を行ったので、ひとまずこれだけは謝っておきます。


 さて。蓮華くんの評価ですが、今回の依頼、戦闘部隊での貢献度と言う意味ではぶっち切りのトップです。


 その他、今回の異変の背景について独自で調査を行い、事前に色々考慮して下さっていたことと、実際にペトラ・マカチュ子爵令嬢が現れたときの対応・分隊員への指示出しなどなど。


 その辺りを考慮すると総合評価はS……最高ランクです。ただ、中央の部隊長であるヘルムート・マカチュ子爵の命令無視、及び子爵令嬢を故意に子爵へと引き合わせたことを加味すると……どうしましょうか」


「ど、どうしましょうかとは……?」


「うーん、実は私としても評価を決めあぐねていると言いますか。


 貴方の命令無視については他の分隊長などからも話は聞いていますし、命令の内容が内容だけに罰するのもおかしいとは思っているのです。


 ただ、今後もこうして命令無視をする方が出て来ると規律が乱れかねないと言うのもあるので少々困っています。


 それから、子爵令嬢が何をしたがっているのかを分かった上でわざと見逃した件についてもですね。結果として子爵は亡くなってしまいましたし、こちらについても……とは言え、子爵の周りの方からの証言によると相当令嬢に対してひどい仕打ちを行っていましたし、自業自得と言えば自業自得です。あくまで親子喧嘩の一環ですからね。


 子爵を実際に殺めたのは令嬢ですから、罰するとしたら令嬢ですが、彼女は元々既にこの世に居ませんし……。


 で、正直貴方を罰して欲しいと一番言いそうな子爵がもう居ないですし、そもそも冒険者ギルドが治外法権ですから、例え子爵がご存命で抗議があったとしても命令内容の方が問題だったと言うこともあり、私としては別に今回の件についてはお咎め無しで良いとは思っています」


「なるほど。でもわざわざその話を僕にすると言うことは何かあると言うことですね?」


「まあ、強いて言えば貴方に貸しを作っておきたいだけです。


 この先ギルド側から無茶な頼みを貴方にするかもしれません。そのときに、今回のことを思い出していただければなー、と。で、いかがでしょうか?」


 なるほど、今回の評価としてはSにするけど、色々考慮した上で見逃してやる訳だから何かあった時に借りを返せよ、と言うことですね。やはり組織のトップ、交渉ごとが上手いなあ。


「分かりました。どんな無理難題を突きつけられるか今からどきどきしますが、まあそれはそのときと言うことで。今回の評価に関しては、ダニエルさんの言うとおりで大丈夫です」


「そうですか。では今回の報酬に関してですが、もろもろ込みで二金でどうでしょうか?」


「二、二金ですか……!?」僕は思わず聞き返してしまった。


 オルカから王都迄の五十日で護衛費用一金、プラスに食事は依頼人持ちだった。と考えると一日……どころか四時間で二金と言うのはとんでもない額なのでは? 日本円換算で二十万円ですよ。


「S評価は最低ラインでも一金五十銀なんです。評価にプラスして、今回で言えば殲滅したアンデッドの数によって金額が上乗せされています。蓮華さんは魔術師と言うこともあってかなり高めですね。他の方の殲滅補助のエンチャントも考慮されていますし」


「そ、そうなんですね……あまりの金額の高さに驚いてしまいました」


「いえいえ、これからも似たような報酬額の依頼が増えますよ、多分。なにせ今回でランクDへの昇格試験が受けられるようになりましたから」


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2024年4月20日2巻発売!

吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

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― 新着の感想 ―
[一言] 分隊を引き要らせて、ゾンビやスケルトンを大量に倒し、アンデッドの湧き?を納めるために大活躍したのに、罪を無理矢理積み上げて、貸し? 駄目なギルマスだね~ 無理矢理魔法を覚えさせ…
[良い点] スケさん。テイムされてたの巻! 名前は【相棒】! とりあえず仲間なままで良かった♪ [一言] 〉感想の返答が追いついていない……しばし待たれよ!です。 すいません。楽しすぎてつい感想書い…
[一言] 本来のテイムが血と血が必要だった でも例外として 元の体が吸血鬼で尚且つ、魔力を含んでる そこで魔力が相手の顔に受け皿として魔力が混じり合った結果 偶然が必然になりテイムしてしまったので?…
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