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252.地下四階

「……配信を切ろうか」


≪残念……だけどそれが良いと思う≫

≪動画だけは撮っといてほしい!!事が終わった後に公開してもらえないだろうか≫

≪まあなんならもっと前から配信切るべきだったまである≫


「そんな無理しなくても良いのよ?」


「いや、僕も本格的に情報集めしたいし……ヴィオラみたいに機転を利かせて映すものと映さないものの取捨選択とか出来ないからさ。それなら最初から配信止めて集中した方が良いと思って。だって時間との闘いでしょ?」


「まあ……そうね」


「という訳で皆、一旦配信は切るけど動画の撮影は続けておくので……レッドコアを発見したあとにでも投稿しようと思います!」


 そう宣言して僕はシステムメニューから配信の終了を選択し、続けて動画の撮影を開始した。念の為ヴィオラに配信がきちんと終了している事を確認してもらってから資料の読み込みを再開する。


 といっても、既にレッドコアの座標についてはヴィオラが突き止めている。あと必要な情報というと、レッドコアの入り口の見つけ方やどのような場所なのか、といった詳細情報だろうか。


「さすがサーバ室と言うだけあってたくさんの情報が集まってるけど……、どれもこれもこの研究所の情報ね」


「うん。ホワイトスポットについてはこの研究所が中心となって調査してたみたいだから情報は豊富だけど、レッドコアの情報も、グリーンベースの情報も、ほとんどがこことの共同研究についてだね。各研究所内の見取り図とか研究内容とか、そういう情報は全然見つからない」


「……もしかしたらそういう情報はもっと下にあるのかもしれないわね」


「そっか、まだ下があったんだっけ……。どこまで続いてるのか気になるし、探索はほどほどに一旦最下層まで降りてみる?」


「そうしましょう」


 広げていた資料を元の場所へ戻し、僕達はサーバ室を後にした。地下一階には他に「バックアップ室」、「特殊暗号解析室」と書かれた部屋がある事だけを確認し、そのままフロア中央付近の階段から下へと降りていく。地下二階には「神体研究室」と「禁術研究室」、地下三階には「不死研究室」という、不穏な響きの研究室ばかりが並んでいた。そして地下四階。


「……ここが最下層みたいだね?」


 元来た階段以外に長く伸びた通路のどこにも下層への移動手段がない事を確認し、僕達はようやく一息ついたのだった。


「『マスター制御室』っていう部屋があるところを見ると、ここが一番重要な場所でしょうし……」


「『各拠点情報室』なる部屋もあるし、隠し通路の類いもこれ以上はないと見て良さそうだね」


 万が一敵対陣営の神から攻撃を受けても、水中施設内の、更に地下空間となれば被害を免れる可能性は十分ある。ここに全ての記録を残しておけばいつか復興出来ると踏んでいたのかもしれない。今まで観てきた記憶やダンジョンの状況を察するに、それは叶わぬ願いだったようだけれど。


 気を取り直して『各拠点情報室』を覗いてみると、そこには予想通り各拠点——それも東西南北四拠点以外の中小拠点の情報も含めてだ——が揃っていた。結局もっとも信頼出来るのはアナログ媒体だと考えたのか、この部屋には機械らしい機械もなく、ただひたすら紙書類が所狭しと並んでいた。


「……データになっていないと探すのが大変そうね」


「機械になれてる人はそうだよねえ……今までヴィオラに頼りっきりだったし、ここからは僕に任せて!」


 そう言う僕にヴィオラは「機械に頼りすぎも良くないわよね……」と呟いてからこくりと頷いた。


 紆余曲折を経て、見つけた資料を元にまとめた情報は以下の通り。環境適応スーツがあるとはいえ、入念な準備をして行かなければ辿り着いた途端に死に戻りもありそうな、危険な場所だという事が窺えた。


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■レッドコア研究所の位置データ

・研究所はフェイクのマグマの滝の裏側に入り口があり、生体認証による入場制限が設けられている

・ただし生体認証の故障など、有事の際に利用出来る非常口も山の裏側に存在する


■研究所内について

・訪問者には必要に応じたセキュリティレベルのIDカードを付与

・付与されたレベル以上の部屋へは出入りが出来ない

・研究成果である半人工生命体がガーディアンとして常駐

・研究所内の至る所にマグマだまりが存在する


■具体的な研究内容

・主にマグマに関する研究

特に

1.熱を利用した半永久的エネルギー資源の生産

2.防御施設/シールドの構築

3.マグマ周辺原種の遺伝子操作による半人工生命体の育成

4.極限環境に対応する特殊装備の開発

5.マグマフィッシュの調理法


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「マグマかあ……この水中研究所が半分無事である事を考えればそこも大丈夫だと思うけど……」


「途中で崩壊、なんて事になったら洒落にならないわよね。それにこの半人工生命体のガーディアンっていうのが厄介そう。要はマグマと戦うようなものって事でしょ?」


「うーん……環境適応スーツの耐熱って、マグマに対してどこまで有効なのかな……」


 スーツの説明文には『溶岩煮えたぎる灼熱の地でも、吹雪荒れ狂う極寒の地でも対応可能な優れもの』と書かれていたけれど、一体どこまで信用して良いのやら。ダメージを受ける度に耐久度が減って破損します、ではとてもじゃないけれど安心して戦う事が出来ない。


「……ダンジョン発見称号だけ手に入れたら、挑まないで色々準備した方が良さそうね。釣り道具も新調する必要がありそうだし……」


「あ、マグマフィッシュ食べるつもりなんだ……」


 道理で、他にも色々研究内容はあったはずなのにあえてマグマフィッシュの調理法を列挙したはずだ。さすがヴィオラさん、ぶれない食欲である。


「んんっ、スーツだけじゃ無理となったらホワイトブレイズキャッスルとかでそれっぽい装備を探してみましょうか。……この情報も気になるしね」


 下手な咳払いと共にヴィオラが差し出してきたのはホワイトスポットに関する調査報告書だった。見れば地下一階で見つけた情報よりも更に詳細な内容が記載されている。


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▼月●日 北方調査報告書【機密情報につき地下四階にのみ保管】


■山頂の調査記録

以前よりもドラゴン達の警戒が強まっている。

我々を警戒しての事かと思ったが、城塞都市内部から観測しても同様。

また、山頂のエネルギー数値が微増。ドラゴンの変化と無関係とは思えない。

地元民の話によれば最近城塞都市と山脈、とくにドラゴンの住まう山頂が共鳴をしているという。

「共鳴」の具体的な内容については不明。

山脈から切り出した材料と共鳴しているのか、或いは材料に欠けられた神の力と共鳴しているのか。

後者であればドラゴンが守っているものは神に関連するとの見解も出来るが、残念ながら我々がその答えを得る事は難しいだろう。


戦況悪化により本日付で全研究所の放棄及び封鎖宣言が為されたとの通達があった為、現時点をもって北方調査隊を解散し、本報告書の作成も終了とする。

その為精査をしていない情報も含む事に留意されたし。


追伸

他では味わえない目にも鮮やかな食事を気に入り北方調査隊に志願したが、数日前に故郷が焼け落ちたとの報告があって以来、あの素朴な料理が頭から離れない。この報告書を読んでいる者にもしまだ帰る場所があるのなら、どうか後悔しない選択をしてほしい。元気で。


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やっと水中研究所の回終わりました。長かった……。

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