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248.なんか変

 もしかしたら十階「所長室フロア」に機密事項があるかもしれない。そう期待して向かってみたけれど、真っ先に発見した部屋が応接室や来客用ラウンジだった事でその可能性はないだろうと判断。外部の人間が出入りするフロアに機密事項があるとは思えないもんね。


 それでも一通りフロアを確認すると、所長直轄研究室や秘書室、文献調査室と資料保管室などから各研究室の進捗報告資料や施設運営に関する報告書などは発見出来た。


 ただしこれも詳細に書かれてはおらず簡易的な報告に留めてあった。トップへの報告はそんなものなのかもしれない。


 最後に辿り着いたのが所長室。部屋全体を見回したところでなんとなく小さな違和感を覚え、既に研究棟Aへと向いていた意識が急速に引き戻されていくのを感じた。


「……どうかした?」


「ん? うん……なんか変だなって」


 見るからに高級感が漂う机や椅子。そこに違和感はない。本棚、観葉植物、カーテン、書類トレイ、ペン立て……。経年劣化や埃のせいで色あせてはいるものの、どれもしっかりとした作りになっていて、おかしいところはなにもない。


 埃の積もり具合が他の部屋と違っている、という訳でもない。


「……あ、分かった。どれも全て対になってるのに、写真だけ浮いてるんだ」


 たったそれだけ。ただの偶然かもしれない。だけど部屋の丁度中間に鏡を置いてるんじゃないかと錯覚するほど見事に左右対称に物が置かれているのだ。執務机の上の書類トレイやペン立てすらも左右対称というのは少々異常じゃないだろうか?


 その法則に従うのなら、写真も左右の壁に同数飾られているはず。ところが右の壁にだけ三枚の写真がかけられているのだから、違和感以外のなにものでもない。


 壁にかけられた写真立てを一枚ずつ手に取る。後ろの壁に隠し金庫……はない。では写真の方だろうか。


 そう考え、写真立てを裏返す。他二枚は留め金が硬く、後ろの板を外す事に苦戦したのに対し最後の一枚だけはあっけなく留め金が外れた。何度も開けている証拠だろう。


「……なんだろうこれ、カード?」


「ビンゴよ、蓮華くん! きっとそれが鍵だわ!」


≪おおおおお≫

≪すげえチームワーク!≫


 そう言ってヴィオラが指差した先は執務机だった。既に開かれた左右三つずつの引き出しの他に、中央に一つ引き出しがついている。


「目を凝らさないと分からないけど、持ち手の近くの塗装の色がちょっと違うのが分かる? 多分それがカードリーダーだと思うの。今手に入れたカードをかざしてみてくれない?」


「これを近付ければ良いんだね? ……あ、開いた!」


「……メモ、かしら?」


「五、三、九、七、七、二、十、四、一、二……? なんの番号だろう」


「なにかの暗証番号よね、きっと。鍵のかかった引き出しに入れてるって事は重要な情報が保管されてるはず……。でもこの部屋に金庫らしきものは見当たらないし、どこで使うのかしら」


「うーん……他のフロアにも金庫っぽいものはなかったよねえ? それじゃあ……研究棟Aにあるとか?」


「そうね……その可能性もあるわね。行ってみましょうか」


≪謎が謎を呼ぶ≫

≪確かにこっちの棟にはそれっぽいものはない、か……?≫

≪所長室ちらっと覗いてスルーした俺にはなにも言う資格がない≫

≪↑どんまいwww≫




 九階で復旧させたエレベーターに乗り込み、「一」を押そうとしたその瞬間。「ちょっと待って!」と止めたのはヴィオラだった。


「ねえ、さっきの番号試してみない?」


≪SOREDA!!≫

≪エレベーターは盲点だわ≫

≪ヴィオラたん天才過ぎる≫


「えっ? ……あ、そっか。金庫に固執してたけど必ずしもそうとは限らないのか……」


「なるべく間隔を開けずに押してみて。あんまり遅いと五階に降りちゃうかもしれないから」


 ヴィオラの言葉に頷き、五から順番にエレベーターのボタンを押していく。


「……四、一、二! どうだ!?」


 十個の数字を押し終わった直後、エレベーターが静かに下降する感覚が身体へと伝わってきた。このまま二階で止まるのか、それとも別のフロアへと辿り着くのか。上部に表示された階数を確認してみるものの、一向に十階から変わる気配がない。


「あれ? エレベーターは動いてる……よね。ディスプレイが壊れてる……?」


「外から気付かれないようにあえて十階のままになってるのかも……。二階へ向かってるにしては時間がかかりすぎよね?」


「確かに。なんだかもっと下に向かってる感じがするね……」

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