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246.捨てる神あれば……?

 方針を決めた僕達は、九階を目指しつつ各フロアを探索していく事にした。


 まず三階「素材研究フロア」では再び材料分析室に戻って色とりどりの素材を手に入れようとしたけれど、触れた途端に崩れ去ってしまい諦めるしかなかった。さすがにあれだけの材料が手に入ってしまうとゲームバランスを壊す事になるからかもしれない。それでも鑑定スキルで入手先と効果のおおよそは理解出来たので、今後の冒険には役立ちそう。


 続く四階「装備開発フロア」では、三つのアイテムを入手出来た。


 「姿勢安定化ユニット」と「重力制御装置」の二つは鑑定をした結果、装着者の姿勢を補整したり装備の重さを状況に応じて変換したりと、戦闘に便利な補正系アイテムだった。だけど僕とヴィオラの場合これらを使うとかえって戦い辛くなり、威力や効率が落ちると判断。早々にオークションへ出品する事に決めた。


 残る一つは「軌道予測眼鏡」という、相手の動きから攻撃や回避の軌道を分析して可視化する眼鏡だった。これも少し迷ったものの、人間と違ってファンタジー特有のモンスター関連は経験則や筋肉の動きから軌道を予測するのが難しい為、残しておく事に。


 五階「武器システム開発フロア」では今回最大の目的である、装備に適した新素材を入手。


 「フェニックスアロイ」という名の合金で、耐久度が高い上に自己修復機能がついている優れものだ。これで武器や防具を作れば、修理に出さずとも時間経過と共に耐久度が回復していくという寸法。ここのところ戦った相手の戦闘力を考えれば心強い性能だけど問題は、所謂(いわゆる)ロストテクノロジーという事。加工できる技術者が見つかるかどうか……。


 そしてもう一つ——、


 ヴィオラが意気消沈している事だ。彼女の武器は弓矢。この合金で矢を作るのは勿体ないし、弓は木材が基本。金属糸にして布防具に仕立てるという手はあるけど布と混ぜる以上、自己修復の効果が半減してしまう。結局、刀を使う僕が譲ってもらう形になってしまったのだ。


 失意を胸に探索を続けるものの、六階「動力研究フロア」と七階「戦術研究フロア」では特に目ぼしいアイテムはなく——研究内容自体は魅力的だけど、持ち運びできるアイテムとして入手出来るものはなにもなかった——、ヴィオラの落胆っぷりにますます拍車がかかったところで八階「特殊開発フロア」へ。


 そこでは「装備修復触媒」という、文字通り装備を完全に修復してくれる液体を入手。五階で手に入れたフェニックスアロイと効果が少し被ってはいるものの、あちらは回復に時間がかかる以上、連戦になると耐久度は減る一方。それに比べてこの液体は装備耐久度を瞬時に回復出来るのがメリットだ。ただし使用後に装備の最大耐久値が減るという仕様上、慎重に使う必要がある。


 引き続き各々で辺りを物色していると、突然ヴィオラが叫び声を上げた。慌てて振り向けば「実験中、触るな!」と書かれた鉢植えに抱きつき、頬ずりまでしているではないか。


「……お目当てのものが見つかったんだね……?」


 あまりの奇行っぷりにちょっと訝しむ声音になってしまったけれど、ヴィオラは一切気にした様子もなく「よくぞ聞いてくれたわ!」とまくし立ててきた。


「説明に『実験に失敗し、込める魔力によって弾性が変化するようになった木』って書いてあるんだけどね!? むしろ私が求めていたのはこれよ! 状況に応じて自分で弾性を調整出来るなんて、弓術士にとってこれ以上ない素材だわ」


「おめでとう! あー、だけど視聴者さん曰く、それを扱えるのは多分ヴィオラだけみたいだよ。毎回違う弓を使ってるようなものだから、普通の弓術士は絶対に使いこなせないって。正直僕もそう思う……」


≪苗木にとってはまさに『捨てる神あれば拾う神あり』だな≫

≪弓に加工される事考えたら、むしろ『捨てる神だけで結構』って心境じゃ≫

≪『こんな植木鉢誰が欲しがるんだよ』って鼻で笑ったプレイヤー居たよなwww≫

≪鼻で笑ったプレイヤーよ、見てるか? ここに居るぞ、物好きが……!≫


 武器以外ならまだ使い道があるかもしれないけど、家具にせよ建築にせよ、鉢植え一つでは到底量が足りない。鼻で笑ったというプレイヤーもそう考えたのだろう。それは決して間違いではないと思う。……ただちょっと、ヴィオラが規格外だっただけで。


 八階では他に目ぼしいものは見つからず、ご機嫌なヴィオラとそのまま九階へ。「コアシステムフロア」なので研究室はなく、制御室やデータ管理室といった設備関係が集中しているようだ。


 事前に話し合った通り、まずは制御室でエレベーターが起動出来ないかを確認。それなりに苦労するかと思ったけど、直感的で扱いやすいインターフェースで問題なく起動が出来た。……というのはヴィオラの談。


「異常を検知して停止していたみたいよ。多分神の襲撃の時に止まったんじゃないかしら? もしくはインクシアが暴れる度に止まるのか」


「なるほど……中に人が居る状態で事故が起きたら困るもんね」


「さて、このフロアでの目的は達成したけど……ついでにデータ管理室も覗いていくわよね? なにか新しい情報が見つかるかもしれないし」


「うん、レッドコア関連の資料があるかもしれないしね」

昨日投稿出来ませんでした!!!

おかしい!!!

一日中執筆してたのに!!!

なんで!!!!!!!!

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