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244.研究棟B

 シオンの発言を頼りに「倉庫」と書かれた扉へと近付くと幸いな事に半透明の障壁はなく、それどころか人一人通れるほどの隙間が開いていた。扉の前の壊れた機械から察するに、本来は厳重に出入りを管理していたのだろう。


 身体をねじ込むように扉をくぐると、少し先に「研究棟A」「研究棟B」と書かれた2つの見取り図が視界に飛び込んできた。


 見れば二棟の研究棟全域の見取り図のようだ。


 研究棟Aは主に医療や防御システムを、研究棟Bは主に素材や武器防具などの装備を研究していたらしい。


 現在地は研究棟Bの一階を示しており「運が良ければ装備の改良に使えそうなアイテムが見つかるかも!」と隣でヴィオラがはしゃいでいる。


「さて、と……。どう、シオン? なにか分かりそう?」


 ——うーん……、多分上から懐かしい臭いを感じるかな。


「上階か。……ちなみにアインはなにか感じる?」


「ううん、全然。あちこちに魔法とは違うけど魔法に似たような技術が使われてるな、ってくらい」


「そっか……。それはそれで興味はあるけど、まずはシオンが言う「懐かしい臭い」を探してみようか」


 目の前にあるエレベーターは残念ながら無反応。見取り図によれば階段は最奥の一箇所のみなので、ここも長丁場になる覚悟をした方が良さそうだ。


 プライベート空間を漁るのも忍びないので、研究者達の居住スペースとレクリエーション空間が主な一階はサクッと通り抜け、次の階へ。


 続く二階「基礎開発フロア」には、データ解析室や会議室、図書室などが並んでいたものの、シオンに確認したところ首を横に振ったので、ここも軽く見て回る程度で早々に上階へ。


 ——ここだよ! この階から懐かしい臭いがする!


 とシオンが叫んだのは、三階「素材研究フロア」に着いた直後だった。


「……今更だけど怖くなってきたな」


 まさかこんなところに生物が居るとは思わないけど、正直、アイシクルピークと言えば危険な魔獣のイメージしかない。いやでも、シオンが怯えてないところを見るとそんなに気にしなくても大丈夫……かな?


「なにをぐずぐずしてるの蓮華くん。『素材研究』フロアなんだからそんなに心配する事ないわよ」


「あ、そうか。素材……、そうだよね」


「そうよ、ほら、装備に使えそうな新素材もあるかもしれないし!」


 スキップでもしそうな勢いでずんずんと進んでいくヴィオラ。まあ確かに、最初の頃と違って今は懐に余裕がある上にゲームに関する知識も増えた。ここ最近戦った相手の戦闘力を考えると、装備を見直すべき時がきたのかもしれない。


 ヴィオラの後を追って「材料分析室」に入ると、古今東西ありとあらゆる場所から集めてきました!と言わんばかりの材料の山、山、山。見た事もない鮮やかな色の布や革、果ては鉱石まである。経年劣化が著しい建物の中、これほどの状態を保っているなんて一体どんな素材なのだろうか。


「まさか……懐かしい臭いって、この山の中じゃない……よね?」


 恐る恐るシオンの方を見ると、シオンは少しだけ首を傾げてからふるふると首を横に振った。気のせいか最近、仕草が段々アインに似てきたような。


「良かった……、さすがにこの山の中って言われたらどうしようかと思ったよ」


 ——ううん、違う。もうちょっと先、だと思う。


「場所がハッキリしたなら、先にそっちに行きましょうか」


「うん、そうだね」


 材料分析室を出て、その先にいくつも並んだ「開発ラボ」の扉も素通りし「強度試験場」へさしかかったところでシオンが激しく反応した。


 ——ここ!! この中から懐かしい臭いがする!!!


 頷いて中へ入ると、まず真っ先に目に飛び込んできたのは大きくえぐれた壁。他にも、床のあちらこちらにガラス片や金属片が散らばっていて、他の部屋とは比べものにならないほど荒れ果てていた。


「随分荒れてる……」


「研究所を放棄する時に、試験を停止し忘れちゃったのかしら?」


「ああ、そういう事か……」


 一見してほとんどのものが原形を留めていない。シオンの言う「懐かしい臭い」の正体が分からずに戸惑っていると、突然シオンに髪の毛をぐいぐいと引っ張られ、左奥へ進むように指示をされた。


 奥なんてある?と不思議に思いながら指示通りに歩を進めると、すぐに本棚へとぶち当たった。と、今度は本棚と本棚の間の壁へと僕を誘導するではないか。


「え? 本棚に隠し扉があるとかじゃなくて、本当にこっち!? どう見ても壁……」


 シオンがあまりにも強く主張するので恐る恐る手の平を伸ばすと、驚いた事になんの抵抗もなく手の平がすり抜けてしまったではないか!


 意を決して一歩踏み出すとなんとも言えない感覚が全身を突き抜け、次の瞬間、目の前には先ほどとは全然違う景色が広がっていた。

この度、『吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。』が「次にくるライトノベル大賞2024」にノミネートされました!!!!!

大賞選出の為の投票が本日より開始されましたので、書籍版を読んでる方が居ましたら是非投票の方よろしくお願いいたします。ノミネートNo.36になります!選択式なので、お手すきの時に是非……!

https://static.kadokawa.co.jp/promo/tsugirano/


まだ読んでないよー!という方もこの機会に読んでいただけると幸いです。

素敵な挿絵が世界観を補強してくださっておりますゆえ……!

ちなみに、漫画の方も絶賛連載中となります。

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2024年4月20日2巻発売!

吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2巻

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