Side:???編1
一章の????編(ヴィオラ)とは別人です。?の数で表してみました。
「うーん、まさか会う前に半分に減っちゃうとはねー……、まあこれはこれで面白い結果だから良いけど。なるほどねえ、彼らにとってエルフの血は、保証される衣食住よりも魅力的なのか。これは意識を改めないといけないなあ……。それにしても、そうなると日本の吸血鬼の忍耐力がますます気になるね! 一体なにをどうしたらエルフと一緒に生活が出来るんだろう」
「ふん……大方、弱みでも握っているのだろう。隣に置いておけば小腹が空いた時に困る事もない。血を主食とするとは……気味の悪い連中だ」
ネットニュースやテレビ報道を確認しながら呟く僕に、いつの間にやってきたのか律儀に返答をする彼。口にこそ出してないけど、正直気味の悪さで言うなら彼の方が上回ってると思うんだよね、僕は。そもそもその根拠も曖昧だし。
「んー? でも君の目当ての彼は血が苦手なんじゃないかい? むしろ嬉々として人間の食べ物を口にしているよね。その理論で行くと彼は気味が悪くないって事にならないかな」
「小童、お前は誰の味方だ?」
「別にぃ? 僕は誰の味方でもないよ。知ってるでしょう、僕の興味は吸血鬼とエルフの生態だけ。日本の吸血鬼はちょっと特殊みたいだから、より正確な情報の為に海外から呼び寄せただけで……、君とも利害が一致したから協力しただけだって、分かってるよね?」
「……ふん、これだから人外は」
二言目にはこれだ。いつも流してはいるけれど、決して気分が良いものでもない。人間がどれだけ偉いんだって話だし、そもそもそのなりで人間のつもりでいる事が驚きだ。それとも彼なりのジョークなんだろうか?
「前々から思ってたんだけどね……、僕も大概狂ってる自覚はあるけど君のそれは特に酷いよ。人外だとか化け物だとか色々言ってるけどさ、鏡見た事ないの? 見た目だけで言えば君が一番化け物だよ! どこの世の中に自分を人間だって言い張る骸骨が居るのさ? 君だってそのなりで人前に出られないから僕に協力を求めたんだよね? だったらもう少し殊勝にしててくれないと、僕だって怒る時は怒るよ?」
痛いところをついたら、あっけなく退散しちゃった。ジョークでもなんでもなく、本気で言ってたみたい。うーん、彼は打たれ弱いね! それなのに執念深い。あの執念深さ、もっと別のところに利用すれば本人が望む名声とやらも手に入っただろうに……、馬鹿だねえ。
それにしてもどうしようかな。折角呼び寄せたっていうのに半分は壊れちゃったし……もう半分も強制退去か刑務所行きだよねえ。んー、せっかく研究が捗ると思ったのに残念だなあ。でも少し分かったよ。吸血鬼っていうのは思ったより短絡的だって事が。父さんと母さんの出会いは奇跡なんだろうね。じゃなきゃ僕が生まれる前に母さんは父さんのお腹の足しになって終わってただろうし。
父さんと母さん。或いは先日移住してきたエルフと吸血鬼集団。彼らと、僕が呼び寄せた子達の間にはどんな違いがあるんだろう。どうして食料と仲良く出来るんだろう。人間だって牛や豚と友達にはなれないだろうに。
「あーあ、早く知りたいなー」